告白
ある日、私は智ちゃんの車でいつものように送ってもらっていた。
家の近くの浜辺に車を停めて車の中で話をするのがいつの間にか日課になっていた。
智ちゃんの様子がいつもと違う。
でもいつものように私を抱きしめて甘いキスをすることに変わりは無かった。
唇から首筋に優しくキスして、
ゆっくりシャツのボタンを外してブラの中に手を入れる智ちゃん。
私も彼の胸に手を当てて厚い胸板を触る。
「もうっ!すぐ胸触るんだからぁ!」
「だって舞ちゃんの大好きなんだもん。舞ちゃんのだけだよ。」
と甘い声で囁いてくる。
何が私だけだ・・・。嫁にも同じことしてるくせに。
少し冷めてボタンをかける。
暗闇の中で波の音だけが聞こえてくる。
誰も居ない海。
車内にさっきの熱気が残る中、二人とも黙って窓越しに海を見ていた。
やっぱり様子が違う。なんでこんなに黙ってるんだろ・・・。
「舞ちゃん、オレと付き合って欲しい。」
「は?冗談でしょ!!妻子持ちが付き合って欲しい、じゃないよぉ~!」と笑い飛ばした。
「冗談じゃなくて本気だから。舞ちゃんの事本気で好きになってしまったんだ。」
「いやいや、私は男が沢山居るし一緒にいたらイライラするよ?やめといたがいいよ~」
彼が何を言おうとしているのか分からない。
妻子持ちが付き合うって何?
私に愛人になってくれってこと?不倫しましょうってこと?
そんなこと普通言うか?
窓の外を見る。海が波を作っては崩していく。
さっきと何も変わらない。
智ちゃんを黙って見つめた。
「舞ちゃんがどんなに男友達が多くても、遊ぶ男が多くても、彼氏が居てもいい。
今はそれで。でもこの先、オレが必ず舞ちゃんの中のトップになる。
そして下のヤツらはオレが蹴落とす。
オレは自分が決めたことは必ず実現する。今までそうしてきたから。」
今までここまで言い切る男はいなかったし、彼の熱い語りっぷりに感動した。
しかし、ふと我に返ると・・・。
自分も妻子持ちだから私にもいて良いって訳か。
ここまでよく言い切ったものだわ。さすがスポーツマンはまっすぐで熱いわね。
と本気で受け止めてはいなかった。
「オレ、嫁とは離婚するから。前からそのうち離婚しようとは思ってた。
オレ達夫婦は一緒に住んだ期間が1ヶ月くらいしかないし、会話も全然ない。
子供もなついてない。そんな家族でない感じなんだ。
舞ちゃんに出会ってオレは早く離婚して早く舞ちゃんと一緒になりたいって強く思ってる。」
離婚?結婚?
不倫問題から一気に結婚まで話が飛んだ・・・。焦りすぎでしょうよ。
家族間がうまく行っていないから私と遊んでる?
うまく行きだしたらそっちに戻る・・・?
「奥さんに見つかったら嫌だし。無理だよ。」
「舞ちゃんと一緒にいたいんだよ。この先もずっと。信じて、絶対オレが迎えに来る。」
そんな唐突な・・・。
「始めからこんなに男友達の多いモテル子だと知ってたらここまで好きにならなかっただろう。
でも、好きになってから全部舞ちゃんから聞かされた。
オレの気持ちはそれくらいのことでやっぱりやめた、なんて軽い気持ちで好きになったんじゃないんだよ。なんていわれてもオレは舞ちゃんが好きで仕方がないんだ。」
熱い、熱いプレゼン、いや愛の告白は続いた。
でもここまで熱く語る人なら少し信じてみてもいいかな、と思った。
「わかった。つきあお。」
その日から私たちはカップルになった。
生まれて初めて私は秋雄と智ちゃんという二人の彼氏、いわゆる「二股」をかけた。
今まで遊びは遊びと割り切っていたが正式に2名と付き合うのは初めてのことだ。
どうせ智ちゃんは私に飽きてすぐ嫁に戻っていくだろう。
私が深入りしなければ、引き止めなければ彼は自然と去っていく。
波と同じだ。押しては返す波・・・。
今は私が押されている。
人生初の二股に不倫。
ちょっと怖いけど、経験しておくのも悪くない。
そんな軽い気持ちで私は彼の告白にOKを出した。