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甘い海  作者: 砂糖 蜜姫
3/6

翌朝の現実

翌朝、起きると隣には智ちゃんがいた。無言で私を抱き寄せキスをする。

やはり、昨日の好きになった、という彼の言葉は夢ではなかったらしい。

私は先に起きて二日酔いの頭痛を我慢しながら一人大浴場へ行った。


湯船につかりぼーっと考える。

私はついに手を出してはいけない領域に手をつけてしまった。彼とはこの1回限りで終わりだろう。

2,3回続くかもしれないけどそれ以上のことはないだろう。

だって彼は妻子持ちだから・・・。


智ちゃんには奈美という4歳年上の嫁と理奈という2歳になる娘がいた。

彼がこっちに戻る前に転勤書類の手続きをしたのは私なので間違いない。

なんてことだ。

今まで遊んできた男は全て独身もしくはバツイチの独身男性のみだった。

よりによって家族構成まで知っている相手と一夜を共にするとはな・・・。


それにしても残念だった。彼に妻子がいることは分かって昨夜の行為を行ったのだが、

それよりも、『お兄さん的な坂本さん』が結婚していても他の女に手を出す男だったとは・・・。

会社ではとても良い人で皆に慕われていた。

綺麗好きでデスクからバッグまでいつも全てが整理整頓されている

『男版キチンとさん』だった。

そんな彼が簡単に私を抱いた。

手馴れた手つきでブラを外しキスをして、そして愛撫した。

男の目線から行けば彼が簡単だったのではなく、私が簡単な女だったのかもしれない。



「男って結婚してもこんなもんなのかしら・・・。一人に絞れないもんかねぇ。」

サウナであぐらをかいてぼやく。


不倫なんてトラブルが多そうなことはごめんだわ。あの性格と素敵な体は魅力的だけど我慢するかな。

社内恋愛も疲れるし、秋雄にも悪いし早めに手を引こう。

そうそう。不倫トラブルに時間を費やすほど舞は暇じゃないのよ。

慰謝料とかいわれちゃたまんないわ・・・。



そうして風呂を出て、部屋に戻った。

智ちゃんは出る準備をしていた。

「オレ、荷物あるしホテルに戻るよ。舞ちゃんと離れるの寂しいなぁ~。」

「うん。同じ会社なんだからすぐ会えるじゃん。」

智ちゃんは名残惜しそうに私にキスをして出て行った。


さてと、一人になった私は化粧やスーツに着替えお仕事モードに変身する。

やはり酒が残っている。

今日は一人だしアポイントとったとこ回ったら帰ろう。と仕事へ向かった。


仕事の途中、智ちゃんからメールが入り事務所から家まで送るから一緒に帰ろうとのことだった。

帰りは電車で寝ようと思っていたが、車で送ってもらったほうが楽だ、と思いOKした。


出張先から事務所へ帰り中に入ると智ちゃんは先に帰って来ていて

いつもの「坂本さん」の笑顔で私を迎えた。


仕事終わりの智ちゃんの車に乗ると呼び名も変わる。

「舞ちゃんお疲れ様。昨日遅くまで起きてたから眠かったでしょ?」

「はい。起きてたって言うより坂本さんが寝かせてくれませんでしたよ。」

と距離を置いてますよ風に敬語で話す。

「おい、昨日の舞ちゃんに戻ってよー。敬語なしだろー。」

へへっと、愛想笑いでごまかす。

疲れと智ちゃんへの少しの幻滅と不倫からは早く手を引こうとする思いが交じり合って

私はぼんやりと窓の外を見ていた。


「智ちゃんって結婚してるんですよね?」

「うん。そうだよ。」

「で、理奈ちゃんって子供もいましたよね?」

「うん。よく知ってるね。あ、書類か。」と少し顔を曇らせた。

言うべきか、言わぬべきか・・・。

でもどうせ手を引く相手なら言っても構わないか。

でもそのあと嫌な雰囲気になったら車内も社内でも困るわね・・・。


「なんで昨日私と一緒に寝たんですか?」

ストレートな質問に智ちゃんは一瞬表情を変えたが、すぐに

「好きになったんだもん。しょうがないじゃん。舞ちゃんを抱きたかったんだもん。」

あまりにも単純な答えで拍子抜けした。

「えぇっ?だって妻子持ちでしょ?そんな簡単に・・・。世の中で俗に言う不倫ですよ!」

「不倫なんて大袈裟な言葉使わないの。昨日だけじゃなくて今もずっと好きだから、

勢いとか一夜限りとかじゃないから。」


はぁ・・・。一夜限りで終わらせたほうが楽なんじゃないのかな。

男はこうやって自分に良いように昨夜の言い訳をする。

そして数日後には連絡が途絶えるか、冷たくなる、

嫁や子供と居る場所が本来の彼の巣なのだ。

私は一夜限りのもしくは、つまらない時のスパイス程度にしか思われてないんだろう。

まあいいや。考えても無駄。時間の問題だから。


私は智ちゃんに、自称「舞ちゃんファンクラブ」のメンズたちが沢山いて、

よくご飯に行ったり、遊んだり飲みに行ったり、買い物の相手になったりしていること、

コンパや飲み会では狙った男を逃さない技がある、などと自分の男関係を面白おかしく話をした。


こんな遊び人の私なんて幻滅するだろうし妻子持ちは相手しないだろう。たまにご飯に行ったり飲みに行く程度でいいや。智ちゃんってよくこんなことしてるんだろうな。お金あるし。




私はその程度しか考えてなかった。

智ちゃんはその後も会社帰りに何回も私をご飯に誘ったり、家まで送ったり

私が残業の日はカフェで時間をつぶしながら待っていたりした。


なんでこんなに頑張るんだろう。

彼なりにあの夜のことのお詫びでもしてるのかな。熱い人だ。





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