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甘い海  作者: 砂糖 蜜姫
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プロローグ

その日はなぜか、うきうきするような不思議な気分だった。何が楽しみなんだっけ?今日は飲み会でもない、明日休みでもない。ただなんかあるって言えば、人事異動で坂本さんが戻ってくるって言ってたな・・・。

会社の人事異動のことなんて私にはどうでも良いことだった。いつものように私の仕事の相方を連れて、営業へ出る。

「椿~、今日どこでランチする?」

「そーねぇー、今日は奮発してホテルのランチでも食べない?」椿は私の1つ上だけど、私の後輩だ。いつもバッグにはハンカチ、ティッシュを欠かさないし、ファスナーの無い彼女のバッグの上には中身が見えないように更にハンカチをひいている。とてもきちんとした人。キチンとさんだ。

私は、とてもじゃないけどそんな面倒なことできない。バッグの中で携帯が鳴っても見つけた頃にはコールはなり終わっている。それくらいかばんの中は整理されていない。全然気にならないし、気にしない~気にしない~。


今日のランチは和牛ハンバーグだ。ナイフでハンバーグを切るとジュワッと肉汁が出てくる。

「わぁ~やっぱホテルのランチは違うねぇ~。和牛だし、うんおいしい。こんなとこにディナーに来て、もっと高いもの食べて~、男に払ってもらう!イイ案だと思わない?」ハンバーグをほおばりながら私はそんな案を笑いながら話す。

「いいね!舞ちゃんはどの男に連れてきてもらうのよ?」

「そうだなぁ~、彼氏はお金持ってないし、教師してるメガネクンがいいかなぁ~。それとも・・・」

私には大学時代から付き合っている秋雄という彼氏がいる。

「彼氏はお金が無いのねぇ~、当てにしてないところが舞らしいわ。」と椿は笑っている。椿はいつも聞き役だ。私は8割型しゃべっている。

秋雄とは付き合いが長いせいか、私たちの付き合いは野放しというか自由な付き合いだ。私は自由に男と2人でご飯に行ったり、遊んだり、キャンプをしたり自由にしていた。もちろん秋雄も同じくそうしていただろう。しかしなんだかんだ言ってもお互いに毎日電話して、週1回は会ってデートする、といった普通のカップルである。付き合いも長いし二人が結婚する時までお互いに自由にしておこう、という暗黙の了解のようなものがあった。


夕方、事務所に戻ると見慣れぬ人が私の隣の席に座っていた。

「おおーー!!坂本さん、お久しぶりです!お疲れ様です!」と私は満面の笑みでご挨拶。椿は初めて会ったので会釈して名前だけ告げて挨拶した。

「お疲れ様ですー。僕のこと覚えてくれてたんですね?」

「はい。私が入社した時少しお会いしただけでしたけど覚えてますよ。」と席に着き隣の坂本さんとしばしおしゃべりをしていた。坂本さんは私の2つ年上で背も高く、筋肉質な体つきをしていた。その日は暑かったのでカッターシャツを腕まくりして仕事をしていた。


腕太いっ!手のひらでかっ!なんだあの筋肉は。

筋肉フェチの私の目は釘付けになった。坂本さんは元ハンドボールの選手だったが、肩の故障で引退し、うちに入社したらしかった。初めて会った頃は、図体の大きな無愛想な人、というイメージしかなかった坂本さんだったが、大阪営業所で鍛えられたのか感じの良いお兄さんって感じだった。

改めて全身を見ると、どこもかしこも鍛え抜かれたままの体つきに、ほのかに香る私の大好きなポロスポの香水で更に得点アップである。


「筋肉すごいですね!ちょっと触らせてください!」とあつかましい私は触らせてもらい、自分だけでは気まずいので椿にも触ってもらい、二人で黄色い声を上げる。

「わーーーすごぉ~い!かたぁ~い!」坂本さんは困ったような照れたような顔をして笑っていた。


坂本さんはおもしろいお兄さん的な人でいつも私たちを笑わせていた。いつしか私は外出して事務所に戻った時の楽しみが坂本さんと話すこと、になっていたのかもしれない。飲みに行ったらもっとおもしろそう、そんな軽い気持ちと、偶然にも私の出張と坂本さんの出張が重なった。

「10日福岡出張ですか。夜ご飯か飲みでもいきません?一人で食べるのも寂しいし。」と声をかけたのは私だった。私は物怖じせず周りのことは何も考えずに思いついたらすぐ口に出してしまう。

椿は一瞬意味深な目で私を見たがまたパソコンに目を向けて仕事を続けた。

坂本さんは笑顔で「いいですよ。店は僕が決めとくんで楽しみにしててください。」と私たちは連絡先を交換した。


帰りの電車で携帯が鳴る。ばたばたと探すがやっぱりバッグの中がぐちゃぐちゃで見つからない。

あった!なんだ。 メールか。

坂本さんからだった。

即効メールしてくるとは律儀な人だ。出張までまだ日にちあるのに。と思いながらメールを返し家に帰った。こうしてクールを装っている私が、実は10日を他の男とご飯に行くより楽しみにしているのにちょっとむかついた。

何を楽しみにしてるんだ私。あんなに簡単に飲みをOKしてくれるとは思わなかった。遊びなれてるんだろうな。今までハンドボール選手でちやほやされてたんだろうし。ファンクラブとかあったりして・・・。と考えながら家に着いた。





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