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銀の皇太子と漆黒の聖女と  作者: 枢氷みをか
第二章 ユーリシア編 第三部 有備無患 

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ユルン=フォーレンスの夢・三編

 朝食を終えてダリウスが真っ先に始めた事は、手頃な大きさの木を探す事だった。


 うっそうと木々が茂っているので、森に入らなくても木には困らない。

 使えそうな木をあらかた集め終わったダリウスは、家から少し離れた所でその木材と大工道具を広げ始めたところで、怪訝そうに小首を傾げるユルンに気が付いた。


「…今からユルングル様の椅子をお作りするのですよ」

(……!)

「今ある椅子では大きすぎてユルングル様には具合がお悪いでしょう。ですから_____」


 そこまで言ったところで、ユルンが盛大に不満げな表情を取っている事に気づく。

 その理由も、ダリウスはすぐに察しがついた。


「…この話し方は、それほどお気に召しませんか?」


 困ったように問うたその言葉に、ユルンは大きく頷く。


 大好きな兄がこの話し方をすると、まるで他人になったようで寂しさがひどく疼くのだ。

 父も母もなく、今この場にいるのは兄だったダリウスだけだ。そのダリウスにすら他人行儀な態度を取られたら、本当に一人きりになったような気になって仕方がない。

 特にダリウスが本当の兄ではないという事をもう知ってしまった。その態度でしか、二人を兄弟たらしめるものがないのだ。


 そんなユルンの心中を悟ったのだろう。ダリウスは諦めたように小さく嘆息を漏らす。


「……仕方がない。ユルン、今日一日だけだよ。私が兄でいるのは、今日で最後だ」


 一瞬、目を見張ったが、期限付きであったことにすぐさま肩を落とす。目に見えて気落ちするユルンに困惑めいた笑みを落として、ダリウスは俯くユルンの両頬を持ち上げ自分に目線を向けさせた。


「…聞きなさい、ユルン。お前にはまだ話していなかったね。…確かに私たちは兄弟ではなかったが、血の繋がりはちゃんとあるんだよ」

(……?)


 兄の言う意味が判らず、ユルンは小首を傾げる。


「言っただろう?ユルンのお父上である皇王シーファス様と私の母リアーナは兄妹だ。つまり私たちは従兄弟いとこにあたる」

(……いとこ…?)

「そう。だから例え私が臣下に戻ったとしても、私とユルンが家族であることは決して変わらない。覚えていなさい、ユルン」


 少し考えるように間を開けてから、ユルンはまだ完全には納得していない顔で、それでも不承不承と頷く。


「…いい子だ」


 微笑みながらユルンの頭を軽く撫でると、ダリウスは仕切り直すように息を一つ落として再び地面に並べた材木を視界に入れた。


「…さて、作るとしようか」


**


 今日一日かかるだろうと思われたユルンの椅子作りは、思いのほか早く昼過ぎには仕上がり、食卓の納まるべき場所へと納まる事になった。


 その景色を、ダリウスは感嘆と共に眺める。


「……大したものだ」


 それはもちろん自分に向けたものではない。

 これほど早く仕上がったのは、ユルンが椅子の設計図を作ってくれたからだった。


 小さなユルンが座っても食卓に置かれた食事を苦も無く食べられる高さにするため座を高くし、その分高くなった椅子に一人で座れるよう階段も二段つけられている。これならダリウスの手を借りなくてもユルン一人で座ることができるだろう。


(…よく考えられている)


 もちろん採寸や細かな部分はダリウスが補った。それでも木材をどう切り出してどう組み立てればいいのかは全てユルンの設計図通りだ。極力、釘を使わず木材自体に切り込みを入れて互いにはめ込むやり方には、さすがのダリウスも脱帽した。これなら上から重みがかかればかかるほど強度が増すだろう。

 これほど複雑な設計を、5歳の子供が考えたとは到底思えない。


 ユルンはそういう天才的な才能が時折見え隠れする子供だった。

 普段はいたって普通の子供なのに、何かをする時には誰も思いつかないような画期的なやり方をさらりと提案する。それに何度驚かされたか知れない。


 彼は確かに体は弱かったが、その頭脳はその負の要因を補って余りあるほど優秀だった。

 それは、あの賢君と謳われた皇王シーファスの血を継いでいるからだろうか。


(…うわあ……ダリウス兄さま、すごい……!)


 出来上がった椅子を眺めながらなぜか感嘆して恍惚な瞳をこちらに向けるユルンに、ダリウスは苦笑を落とす。


「……ユルン、凄いのは私ではなくお前だよ…」

(……?…ダリウス兄さまが作ったのに……?)


 バツが悪そうにそう返答したものの、どうも意を得ずユルンは首を傾げている。それに再び苦笑を返して、ダリウスはユルンを視界に留めた。


 屋敷を出てから、すっかり表情が乏しくなったユルン。

 この家で二人きりになったおかげか、まだ笑顔は見えないものの、その表情は少し柔らかくなった。


(このまま笑ってくれるようになればいいが……)


 一抹の不安を振り払うように笑顔を作って、ダリウスはユルンの頭を優しく撫でる。


 そうしておもむろに立ち上がったダリウスは、手持無沙汰になった現状に軽く思案した。

 本来なら、椅子作りは今日一日かかる予定だった。それが半日で終わって、現状する事がない。今日着いたばかりの家に、これと言ってやらなければならない家事と言う家事もなかった。仮にも第一皇子が住むのだ。隅から隅まで綺麗にされて渡された家に、やらなければならない事など現状一つもない。


 なら、今からする事は一つだろうか。


「……ユルン、少しこの森を探検してみようか?」

(……!)


 兄の提案に、ユルンは盛大に首を縦に振ったのは言うまでもないだろう。

 ダリウスを促すように手を引っ張るユルンに連れられて、二人は森に足を踏み入れた。


「ユルン、あまり遠くまでは行かないよ。ここは迷いの森だからね」

(…迷いの森……?)

「深い森という事だ。…道が整備されていないからずっと獣道ばかりが続く。…どこまで歩いても景色が変わらないだろう?」


 兄の言葉に、ユルンは頷く。


「だから迷いやすい。地元の人間も足を踏み入れないようだ。…迷いやすいという事もあるが、どうも魔獣が住み着いたという噂まであるから___っと…!」


 足を滑らせて転びそうになるユルンの体を、ダリウスはすかさず支える。


「大丈夫か、ユルン?…ここは滑りやすいから気を付けなさい」


 目を丸くしながら小さく頷いて、ユルンは先ほどのダリウスの口から出た単語を復唱した。


(……魔獣……?ここには魔獣が住んでるの……?)

「大丈夫だよ、ユルン。私と父上が散々探したが気配すらなかった。…禁足地のような場所にはそういう噂が付きものなのだろう。……それよりも、ほら。何か聞こえないかい?ユルン」


 少し怯えたような顔で見上げてくるので、ダリウスは安心させるために努めて笑顔でそう告げて、口元に人差し指を立てる仕草を見せる。そんなダリウスに促されて、そばだてたユルンの耳に聞こえてきたのは、さらさらと流れる水の音だった。


(……!川…!川の音だ…!)

「…ああ。川を探してみよう、ユルン」


 目を輝かせながら頷いて、ユルンは一人先に進む。

 その背中を見送りながら、ダリウスは嬉しそうに森を駆け回るユルンに目を細めた。


 この先に川が流れている事を、もちろんダリウスは事前に知っていた。

 ダリウスが浸かっても膝まではない浅い川で、場所も家からさほど離れてはいない。これからこの川が、自分たちの生活用水になる。


 わざと遠回りして時間をかけたのは、ユルンにとって小さな冒険を演出するためだ。川がある、と教えるよりも、こうやって自分で川を見つけさせる方が楽しいだろう。


(…あった……!!ダリウス兄さま、あったよ!!)

「見つけたか?ユルン」


 少し離れた所で手を大きく振って見つけた事を主張するユルンに歩み寄り川を確認すると、ダリウスは少し誇らしげなユルンの頭を大きく撫でる。


「…よくやった、ユルン。どこで水を確保しようか困っていたところだ。…これで水には困らないな。ありがとう、ユルン」


 その言葉にユルンは軽く目を見張った後、小さく微笑んだ。

 病弱な自分が役に立てたことが嬉しかったのだろうか。ようやく帰って来たユルンの小さな笑顔に、ダリウスもまた胸を撫で下ろして笑顔を返した。


 その笑顔に、水しぶきが一つ。


「………やったな?ユルン」


 そのまま川で二人、水をかけあって遊んだ事は言うまでもないだろう。


**


 結局びしょ濡れになった二人はそのまま家について先に湯浴みをし、夕食を摂って寝る時間となった。

 このまま眠って朝になれば、もうダリウスは兄ではない。今日がずっと続けばいいのに、と思うのに、時間は止まってはくれないのだ。


 少し寂しそうに目線を落としているユルンを見止めて、ダリウスは声をかける。


「……今日は、兄さんと一緒に寝ようか」

(……!)


 恍惚と目を輝かせて、ユルンは何度も頷く。

 そのまま二人でユルンの部屋に入って、同じベッドに横になった。


 この温もりを感じていられるのは今日で最後。

 明日からは、兄弟ではなく主と臣下になる。そう思うと胸が締め付けられるほど切なく、たまらずユルンはダリウスの胸にしがみついた。


「…ユルンはいくつになっても赤ちゃんだな」


 甘えん坊の自分を、兄は時折こうやって揶揄した。いつもはその揶揄に頬を膨らませて眉根を寄せたが、今日はそれすらも愛おしい。


「…ユルン、明日から私は、お前の臣下に徹する。約束通り、お前の兄でいるのは今日で最後だ。…だけど忘れないで欲しい。私はたった一時でもユルンの兄になれて幸せだった。お前が私の弟であったことは、私の人生で一番の誇りだ。…この先何年経とうとも、ユルンは私の誇りだよ____」


 その優しい兄の言葉を最後に、二人は兄弟としての袂を分かつ事になったのだった。



 そうして翌朝、臣下として初めての朝を迎えたダリウスは、早速自分の行いを後悔する事になる。


(………やってしまった…)


 今はもう、冬に差し掛かろうと言う時期だ。

 こんな時期に川遊びなどすれば、間違いなく病弱なユルンは体を壊すだろう。そんなことなど判り切っていただろうに___。


(ついユルンの___いや、ユルングル様の喜ばれるお顔を優先してしまった……)


 自嘲にも似た嘆息を漏らしながら、ベッドの上で高熱に苦しむ己の主を視界に入れる。


 思えば川遊びをした直後、ユルンの体はかなり冷えていた。だからこそすぐに湯浴みをさせて体を温めさせたのだが、それで大丈夫だと思った自分の考えが甘かったのだろう。それほど、ユルンの体は弱いのだ。

 それをすっかり失念してしまった。


 翌朝、ユルンの体がひどく熱い事に気がついて目が覚めたダリウスは、慌てて熱冷ましの薬をユルンに飲ませた。自分ができることは、もうそれしかない。あとはただひたすら、冷水に浸したタオルを彼の額に載せてやるだけ。それしかできることがないのが、ダリウスはひどくもどかしかった。


 本来であれば、ダリウスに多少なりとも医学の知識を備える予定だった。

 病弱なユルンには絶対的に必要な知識だ。だが、それは叶わなかった。時間があまりに短すぎたのだ。


 ダリウスはすぐにぬるくなってしまうタオルをもう一度冷水に浸して、ユルンの額に載せた後、軽く頬に触れる。


(…熱いな……薬が一向に効かない……)


 ユルンにとって熱冷ましの薬は気休め程度だ。

 今まで何度も高熱に苦しんだユルンを見てきたが、薬が効いて熱が下がった事は一度もなかった。

 それでも飲ませるのは、これ以上熱が上がってほしくなかったからだ。薬を飲ませると、下がる事はなくてもそれ以上、上がる事はなかった。それが薬の効力なのかは確かめる術がなかったが、実際に熱は上がらなくなるので必ず飲ませるようになった。


 それでも、やはり高熱には変わらない。

 神官か医師を呼ぼうかとも思ったが、この辺りの地理に詳しいわけではないので、どこにいるかも判らず、かと言ってこんな状態のユルンを一人残して探しに行く事もはばかられたので、結局断念する事になった。


 本当に神官の治療が必要なほどの大病を患った時は、こちらが呼ばなくとも神官の方がこちらに出向いてくる、と父から聞いたのはつい昨日の事。教皇が事前に予見をして神官を派遣してくれるらしいが、どうして教皇がここまでユルンの事を気にかけてくれるのか、ダリウスにはひどく不思議だった。


 これは、教会と国の癒着に当たらないのだろうか。


 教会は決して、国の大事に口を出したりはしない。

 それは教皇が予見する、しないに関わらずだ。

 病人を治療する行為自体に違法性はないので、例え第一皇子でもユルンの治療を行う事に問題はないのだろう。


 だが、暗殺を阻止する、という事は違う。

 これは国の大事だ。本来、教皇が予見したとしても口を出してはならないはずなのだ。だからこそ 約二十年前に起こったラジアート帝国の皇族粛清の折には、教皇は予見していたにも関わらず一切の口出しをしなかった。


 なのに、ユルンの暗殺に関してはことさら警戒しているようだった。

 父の口ぶりでは、すでに皇王と教皇の間でユルンの暗殺阻止に協力すると言う密約まで交わされているのだろう。

 未来を予見すると言われる教皇からの庇護を貰えるのは、これ以上ないくらい頼もしい話だが、それと同じくらい重い命運がこの小さなユルンの肩に背負わされているような気になって、ダリウスはひどく複雑な気分になった。


 まるで鬱々とした気分を吐き出すように長いため息を一つ落としたところで、ユルンの手を握っている自分の手に握り返してくる反応があって、ダリウスは弾かれるようにユルンの顔に目を向けた。


「…!ユルングル様……!!!」

(………ダリウス兄さま……)

「……大丈夫ですか?…水を…飲まれますか…?」


 不安げなダリウスの表情に恍惚とした目をゆっくりと向けながら、ユルンは小さく頷く。

 ダリウスはその小さな肩を抱えて水差しをユルンの口に運ぶと、こくこくと喉を通るその音に小さく安堵した。


「……申し訳ございません、ユルングル様。…私がご無理をさせてしまったようです……」


 眉根を寄せてひどく不安げな表情を見せるダリウスを、ユルンは高熱で朦朧とする意識の中、視界に留める。

 ダリウスは兄であった頃も、こうやって寝込むとひどく心配そうに顔を覗き込んでいた。口調と態度は変わっても、兄であった頃と変わらず心配してくれる事が嬉しく、心配をかけてしまったことが申し訳ない。


 ユルンはダリウスの心配を払拭するように恍惚とした顔に笑顔をたたえると、そのまま再び瞳を閉じて深い眠りに着いた。


 ユルンは一度高熱を出すと、どれほど短くても五日は寝込む。そしてその間は、こうやって一日のほとんどを眠りに費やして食事を摂る事もままならない。


 ユルンの葬儀は六日後。

 それまでにはユルンの症状は治まってくれるだろうか。

 例え治まったとしても、病み上がりのユルンを一人ここに残して行かなければならない事実が、ダリウスの胸に重くのしかかった。


**


 それから五日後、明日に葬儀を控えた前日の夕方になって、ようやくユルンの熱が下がって少し食事が摂れるようになった。明日の早朝には、屋敷に向かうためにもう家を出なければならない。


「……熱いのでお気を付けください」


 熱い粥をダリウスが冷まして口に運んでくれることが、ことさら嬉しいのか、ユルンは小さく笑ってされるがままになっている。


 ユルンが食べられるのは、まだほんの二、三口だけの粥と、柔らかい果物、それからアイスだけだ。それ以外はまだ胃が受け付けない。

 ただでさえ屋敷を出てから食が細くなっていたのに、熱でさらに食べる事が出来なくなった。小さかった体はさらに小さく細くなって、その姿は痛々しいほどだ。


 ダリウスには、それに加えてもう一つ、気がかりな事があった。

 暗殺未遂が起こってからこっち、ユルンは未だに一言も発していない。


 あれからもう十一日経っている。

 『当分の間』と神官は言ったが、それが一体いつまでなのかが判らず、それがかえってダリウスを不安にさせた。


 これが本当に喉を痛めた所為ならまだいい。

 だが、精神的なものなら____?

 そうなれば、ユルンの声が戻るのはいつになるか判らない。このまま一生、という事もあり得る。教皇が教えてくれるのはユルンの生命に危機が訪れた時だけ。声が出なくても生きていけるのだから、それをわざわざ伝えてはくれないだろう。


(……明日、シスカ様に来ていただけないかご相談しよう……)


 皇宮医のシスカは、ユルンが2歳になるまで共にフォーレンス家の領地で暮らした。

 最初のユルンの暗殺を阻止したのも、そして今回ユルンの葬儀を行う協力をしてくれたのもシスカだと父から聞いている。そのシスカならば、きっと二つ返事で来てくれるだろう。


「……!」


 急に押し黙ったまま、険しい表情を見せるダリウスを不安に思ったのだろう。

 ユルンはたまらずダリウスの袖を軽く引っ張って、こちらを向くように訴える。その遠慮がちな甘え方がいじらしく、ダリウスはくすりと笑みを落とした。


「申し訳ございません、考え事をしておりました。……まだお食べになれそうですか?」


 その質問には、小さくかぶりを振る。

 結局口にしたのはたったの三口。お椀一杯分にすら届かないその量にダリウスは嘆息しながら、ユルンに横になるよう促した。


「……何度か申し上げましたが、私は明日の早朝、一度屋敷に戻ります。お食事は___」


 そこまで言ったところで、ユルンはまたかぶりを振った。

 その意を取りかねて、ダリウスは一瞬、逡巡する。


 これは一人になるのが嫌だという意味だろうか。それとも食事はいらない、という意味だろうか。

 あるいはその両方とも考えられるが、ダリウスはわずかに思案したのち、再び口を開いた。


「…お食事を召し上がらないおつもりですか……?」


 遠慮がちに問われたその言葉に、ユルンは頷く。


「…ユルングル様、食欲がない事は存じ上げておりますが、何か少しでもお口にいたしませんと体がもちませんよ…?せめて果物とアイスをご用意しておきますので、それだけでも召し上がってください」


 少し考えたように間を開けてから不承不承と頷くユルンに、ダリウスは安堵のため息を落とす。


 本当は、一人でこの家に残されることに不安を感じているのだろう。

 それはダリウスの手を握る手に小さく力を込めている様子で、すぐに理解した。それでも自分を困らすまいと必死に我慢してくれているのだ。その健気な心遣いが見て取れて、ダリウスはたまらなく愛おしくなる。


 そうして不安を押し隠して笑顔を見せる主の頬を小さく撫でて、ダリウスも微笑む。


「…夕方には必ず帰ります。それまでは決して家からお出にならずに、ゆっくりとお休みになっていてくださいね」


**


 ユルンが目覚めたのは、もう日も高くなった頃だった。

 早朝に出ると言っていたから、もう家を出てしまったのだろう。いつもはダリウスが家事をする音が聞こえるはずの家の中がしんと静まり返って、ダリウスがいない事を否が応でも痛感させてくる。


 ユルンはその寂しさを紛らわせるように軽く部屋を見渡すと、いつもはない小さな卓と、その上にアルミ製の食卓カバーが二つ、それから置手紙が置いてあった。


『ユルングル様


 おはようございます。

 よく眠っておりましたので、ご挨拶は控えさせていただきました。

 何も告げず家を出ましたこと、お許しください。


 朝食は部屋に運んでおります。

 スープも作っておりますので、お食べになれそうでしたら召し上がってください。

 昼食は食卓の方にございます。

 薬も忘れず、お飲みになってくださいね。

 夕方には帰りますので、夕食はご一緒いたしましょう。


                    ダリウス』


 簡素ではあったが、ダリウスらしい気配りが見える文面に、ユルンは小さく微笑みを落とす。


 食卓カバーを取ると、片方には冷気と共にアイスと果物が、もう片方は温かい湯気と共にスープが置いてあった。ユルンはそのどちらもを綺麗に平らげて、置いてあった薬を飲む。


 こうやって食事を摂って、また眠る事を二度繰り返せば、二度目に目覚めた時、もうダリウスは家に帰っているだろう。

 ユルンはそれを期待して、またベッドの中で瞼を閉じた。


**


「ユルンはどう?一人ぼっちになることを寂しがっていなかったかしら…?」


 そう寂しそうに問うてきたのは、母リアーナだ。

 ことさらユルンを可愛がっていた母が、誰よりも一番ユルンと離れたことを寂しく思っているだろう。

 それでも気丈に振る舞う母に、ダリウスは少し困った笑顔を落とす。


「…ここに来る時は、まだ眠っておられたのでそのまま出てきましたが、やはりお一人になるのはお寂しそうでした」


 息子のそのかしこまった口調に、母リアーナは小さく失笑する。


「私達の前ではユルンを皇子として扱わなくてもいいのよ?あの子は今も私達の息子で、貴方の弟なのだから」

「…いえ、私はユルングル様の臣下になると決めたのです。いつまでもあの方を弟と思っていては、決心が鈍ってしまいますから」


 その頑なな息子に、リアーナはたまらず呆れたようにため息を落とす。


「貴方は本当にお父様にそっくりね。特にその頑固なまでの生真面目さは、あの人そのものだわ」


 母のその言葉に苦笑を漏らしたところで、執事のレイアウトに呼ばれてリアーナと二人、葬儀が行われる教会に向かった。


 フォーレンス邸から教会までは、かなり近い。

 歩いてものの五分もかからず着ける距離で、二人は特に会話を交わすこともなく黙々と足を進ませる。

 仮にも息子と弟が亡くなった立場なのだ。この方が違和感がないだろう。


 教会に着いてレイアウトが扉を開けると、すでに列席者の相手をする父の姿が視界に入って、そちらへと足を向けた。


「父上」

「…来たか、ダリウス。体の調子はどうだ?」


 ダリウスはこの十二日間、最愛の弟を亡くして体調を崩したことになっている。

 葬儀がこれほど遅れたのは、ダリウスの体調が戻るのを待ってから執り行われた為というていを作っていたが、実際、本当に亡くしていれば体調を崩すどころではないだろう、とダリウスは心中で人知れずひとりごちながら、軽くこうべを垂れる。


「…悪くはありません。ご心配をおかけいたしました」

「…うむ。辛いだろうが、ユルンと最期のお別れをしてきなさい」


 『最期のお別れ』という言葉にダリウスは一瞬、息が止まりそうになって、わずかに目線を落とす。

 その息子のいつもとは違う様子に、デューイは怪訝そうに眉根を寄せた。


「…どうした、ダリウス?大丈夫か?」

「………はい」


 小さく答えてこうべを垂れたあと、ダリウスはユルンの棺が置かれている祭壇へと足を進ませる。

 その背中に、列席者から心配げな声が漏れた。


「…まだダリウス殿下は、お体の調子がよろしくないようですね」

「…親から見ても、とても仲の良い兄弟でしたので」


 列席者の言葉にそう返事を返して、デューイは祭壇に向かうダリウスの背中を不安とともに見つめていた。



(…芝居だと判っていても、嫌な言葉だ……)


 ダリウスは父の口から出た言葉にひどく嫌悪感を覚えて、思わず嘆息を漏らす。


 偽りの葬儀だと判ってはいても、些細なことに敏感に反応してしまうのは自分がまだ若いからだろうか。それともそれがユルンの事だからだろうか。

 どちらにせよ自分の未熟さによる事を理解して、ダリウスは情けなさと鬱々とした気分を吐き出すようにもう一度息を落とし、ユルンではない誰かが眠る棺に目を向ける。


 ユルンの棺は教会の奥、二、三段の短い階段を上がった祭壇に置かれていた。

 皇族ということもあって、その棺は過剰とも言えるほど華美な装飾が施されている。その棺の周りには弔いの花が所狭しと並べられ、列席者たちが早すぎる皇位継承権第三位の皇子の死を悼み、別れの挨拶をしに列をなしていた。


 この中の一体どれだけの人間が、本当にユルンの死を悼んでいるのだろうか。

 ここは魔力至上主義国家なのだ。おそらくここにいるほとんどの者が魔力至上主義者だろう。それはつまり、第一皇子が低魔力者であることを忌み嫌った連中だという事だ。

 その彼らが、低魔力者である皇位継承権第三位の皇子の死など気にするとは思えない。


 そして、この中の誰かが、ユルンの暗殺を仕組んだ黒幕かもしれないのだ。

 そう思うと、これがいかにも茶番のようでやるせない。


(…だが、茶番であってはいけない)


 これは、表向きは皇位継承権第三位の皇子の葬儀、そして暗殺の首謀者にとっては第一皇子の葬儀なのだ。決して茶番だと知られるわけにはいかない。


 重い面持ちで棺に向かうダリウスを見止めて、列席者たちはおもむろに威儀を正して皇位継承権第二位の皇子にこうべを垂れる。

 ダリウスは彼らに軽く手を上げて制し、礼を取る必要がないことを示唆すると、棺に歩み寄った。


(…別れの挨拶と言っても、一体何に______っ!?)


 人知れず嘆息を漏らしながら、だが近づくにつれ次第に露わになる棺の中の人物に、ダリウスはまるで心臓を鷲掴みされたような衝撃に襲われた。


「………ユ……ルン………?」


 息をすることも忘れたように、辛うじてそれだけを言葉にする。


 棺の周りと同じく、棺の中にも所狭しと花が並べられている。

 その中央で眠る人物は紛れもなく、朝あの家で別れたはずの最愛の弟だった。


(……なぜ……ここに………?)


 似た人物を連れてきたとか、扮装させたという次元の話ではない。

 赤ん坊の頃から今に至るまで、ずっと見てきたはずのユルンの姿がそこにあった。それも棺の中と言う、耐え難い光景と共に_____。


 唯一違うのは、その顔色だろう。

 血の気が全くないその土色は、死者でしか到底出せる色ではない。

 棺の中で眠る姿が、今朝見たはずのベッドで眠っているユルンの姿と重なって、さらに混乱を極めた。


(……夢を…見ているのだろうか……?)


 それとも、あの家で生きているユルンと共に暮らしている、という事自体が幻想なのだろうか。

 ユルンが死んだ現実を受け止められず、己の願望が作り出した、偽りのまやかし______。


 そう思うと、たまらず手足が震え出すのを感じた。

 鼓動がひどく波を打って耳にうるさい。


 ダリウスは震える手を辛うじて動かして、棺の中で眠るユルンの頬に躊躇いがちに触れる。

 その、あまりに冷たい感触。


(死_______!!?)


「……っ!!!!!!!」


 その瞬間、耐え難いほどの強烈な吐き気に襲われて、ダリウスはたまらず口元を抑えてその場に膝をつきうずくまった。


「ダリウス殿下……っ!!?」


 周りの列席者たちが泡を吹くように慌てふためく中、真っ先にダリウスに駆け寄ったのは、様子がおかしい事を怪訝に思って彼を注視していた皇宮医のシスカだった。


「ダリウス殿下……!大丈夫ですか…っ!?」


 背中をさすりながらそう問うてくれるシスカに大丈夫だと返事を返したかったが、口を開くと再び吐き気が襲ってきそうで、ダリウスは無言のまま小さく頷く。

 ぽろぽろと涙が止めどなく流れてくるのは、吐き気の所為だろうか。それとも、ユルンの死を認識したからだろうか。


「___!?ダリウス……!?」


 列席者たちのざわめきに異常を察したデューイが棺の前で青ざめた表情でうずくまる息子を見止めて、慌てて駆け寄りその傍らに膝をついた。


「…どうした、ダリウス?……大丈夫か?」

「…まだご気分が優れないご様子です。令弟れいてい殿下のご遺体を目の当たりにして気が動転されたのでしょう。よろしければ私がお屋敷までお送りいたしますが…」


 遠慮がちにそう提案したシスカの言葉に、デューイはやや思案したのち頷く。


「…申し訳ございません、シスカ様。息子をお願いいたします」


 その言葉に頷き返して、シスカはダリウスに立つよう促し、彼の体を支えながら教会を後にする。

 その痛々しいダリウスの姿に、列席者たちの同情を誘ったことは言うまでもないだろう。


 教会を出てからも顔面蒼白で口元を抑えながら小刻みに震えるダリウスを支えながら、シスカは屋敷に着いてすぐダリウスの様子に目を丸くした侍女長に水を持ってくるよう指示をして、応接室のソファに座らせた。


「……少しは落ち着かれましたか?」


 侍女長が水を持ってきて部屋を退出したことを確認すると、シスカは静かにダリウスに声をかける。まだ顔色は悪かったが、吐き気は治まったのか深呼吸に似た息を二、三度落としていた。


「……あれは……一体何なのですか………?」


 自分の目を疑うように、ダリウスはようやく呟くように言葉を落とす。


「……あんな……あれではまるで……まるでユルンそのものではありませんか……!!」


 棺の中で眠るユルンの姿を思い出して、再び気が動転したのか吐き出すように声を震わせる。もう自分がユルンの臣下になった事すら忘れたようだった。


「…落ち着いてください、ダリウス殿下。あれは偽物です」

「……!?…偽物……?あれが……ですか……?」


 あれはどう見てもユルンそのものだった。到底、偽物だとは思えない。

 ダリウスは意を得ず、怪訝そうにシスカの顔を覗う。


「…ラジアート帝国に伝わる『変化の宝珠』と言うものがあります。その者の容姿を任意の姿に変える事の出来る魔装具で、背格好の似た孤児の遺体にその『変化の宝珠』と同じ構造の魔装具を付け、ユルングル殿下のご遺体に見せかけたのです」

「………では……ユルンは……ユルングル様は亡くなってはおられないのですね……?」


 恐る恐る訊ねるダリウスに、シスカは大きく頷く。

 その返答に涙を流さんばかりに眉根を寄せて瞳を閉じるダリウスを見て取って、シスカは申し訳なさそうに目線を落とした。


「…申し訳ございません。ダリウス殿下にはさぞご不快だったことでしょう。…貴方がたは本当に仲睦まじいご兄弟でございましたから」


 ユルンが2歳を過ぎてシスカの手を離れた後も、何度か領地に様子を見に訪れていた。そのたびにユルンは兄を慕って後を追い、兄はそんな弟を慈しむように可愛がっていた。

 その兄に、弟のあのような姿を見せるのは酷だっただろう。

 だが______。


「…ですが、必要な事なのです。首謀者にユルングル殿下のご遺体が偽物だと、わずかでも疑いを持たれては意味がないのです。…どれほど私をなじっていただいても構いません。貴方にどれだけご不快な思いをさせようとも、ユルングル殿下をお助けするためならば、私は何でもいたします…!」

「……!」


 出会った頃に比べれば幼さが減った所為か、わずかに女性らしさがなくなって中性的な外見にはなったものの、それでもシスカの印象は変わらず、穏やかで物腰が柔らかく女性的だった。

 だが時折、こちらがはっとするほど強い表情を見せる時がある。思えば、こちらが圧倒されるほどの強い眼差しを見せる時は決まって、ユルンが絡んだことばかりだった。


 自分と同じように、ユルンに命を賭している者がいる。

 そう思うだけで、ダリウスはひどく心が落ち着くのが判った。


「…謝罪は必要ございません。私の気持ちなど取るに足らないこと。どうかユルングル様のことを第一にお考えください」

「…そうおっしゃっていただけて安心いたしました。……ご葬儀にお戻りになられますか?」


 その質問にはかぶりを振る。


「…いいえ。それよりも、シスカ様にご相談したい事がございます」


**


 二度目に目覚めた時、ユルンは期待していた状況とあまりに違って、怯えたように体を起こした。


 ずいぶんと眠っていたのだろう。もう外は完全に闇に包まれている。にもかかわらず家の中に人がいる気配が微塵も感じられなかった。

 しん、と静まり返っている事に不気味さを感じて、ユルンは恐る恐るベッドを下りて扉を開ける。軋む音がひどく大きく感じて、ユルンはさらに体を強張らせた。


(………ダリウス兄さま……?)


 夕方には帰ると言ったダリウスの姿は食卓にはない。

 今が何時なのかは判らなかったが、もしかしたらもう夜も更けて自室で休んでいるのかもしれない、と淡い期待を胸にダリウスの部屋を訪ねてみたが、やはりそこにもダリウスの姿が見えず不安だけが胸の内にふつふつと溢れていくのを感じた。


 ユルンは恐怖に突き動かされるように、ダリウスの姿を求めて家の中を隅々まで捜索する。だが、炊事場にも風呂場にも、外の食糧庫にすらその姿が見えず、ユルンは立ち尽くした。


(……どうして……?夕方には帰るって言ったはずなのに………)


 なのに、その姿はどこにもない。

 探せば探すほど、自分がたった一人この家に取り残されているという事実を突きつけられていくようで、ユルンはたまらず怖くなった。


 ダリウスは、本当に帰ってくるのだろうか。

 帰ってくるつもりがあったのだろうか。

 朝、自分を起こさずに出て行ったのは、置き去りにする予定の自分の顔を見ると後ろ髪を引かれる思いに駆られるからではないのか。

 元々ここに帰ってくるつもりはなく、いつも足手まといの病弱な自分をこの森に捨てたのではないのか____。


 そんな嫌な考えが頭に浮かんで、ユルンは強くかぶりを振った。


(違う…!ダリウス兄さまはそんな事しない……!!きっとこの森のどこかにいる……っ!)


 そう思うよりも早く、ユルンは駆け出して深い森の中に躊躇なく足を踏み入れた。


 無我夢中でダリウスの姿を求めて、一体どれだけ彷徨っただろうか。何度も転んで、何度も声にならない声で兄の名を呼んだが、それには返答もなく兄の姿もどこにもない。もうどこをどう歩いてきたのかも判らず、後ろを振り返っても、家を見る事は出来なかった。


 この広い森の中にただ一人取り残された事実に、ユルンは次第に不安と寂しさ、それと強い恐怖に支配されていった。

 時折聞こえる獣らしき鳴き声が、さらにユルンの恐怖心を煽る。

 この森には魔獣が住んでいると、ダリウスは言っていなかっただろうか。

 そしてそれよりも怖いのが、暗殺者の存在_____。この暗い森のどこからか、自分を狙って今まさに剣を振りかざしているような気になって、ユルンは恐怖で足がすくみ身じろぎ一つすることが出来なくなった。


(……ダリウス兄さま……っ!!)


 その場にうずくまって、ユルンは最愛の兄の名を呼ぶ。

 きっともう、これに返事が返ってくることも、兄の姿を見る事も出来ないのだ。

 そう思うと止めどなく涙があふれ、もう止める事も出来なくなった。


 すべての現実を否定するかのようにうずくまって、顔を膝にうずめるユルンのその小さな背中に声がかけられたのはそんな時だった。


(……迷子になったのか?)


 その声に弾かれるように顔を上げて、ユルンは怯えたように周りを見渡す。だが姿が見えず、ユルンはさらに恐怖で身を縮ませた。


(………誰……?)

(…ここだ)


 その言葉と同時に前方から草むらをかき分ける音が聞こえる。

 体を強張らせながらそちらに目を向けたユルンは、視界に入ったその姿にさらに目を丸くした。


(…………おお……かみ………?)


 銀色の毛並みを携えたその獣の姿は、狼と言うにはあまりに大きすぎた。

 四つん這いの状態でも、おそらくはダリウスを軽く超えるだろう。ふさふさの長い尻尾と大きくピンと立った耳は狐のような気もしたが、それでも一番近いと思える動物は狼だった。


 ユルンのその言葉に、その狼らしき獣は、またかと不満げにため息を落とす。


(…私は狼ではない。人間は皆、私を狼だと言うな)

(………魔獣……?)

(そう呼ぶ者もいるし、神獣だと言う者もいる。だが私が何者であるかは自分でも判らない)

(……判らないの…?)

(もう遥か昔からこの地に住んで、色々な名で呼ばれた。最初は自分が何者かを知っていたような気もするが、特に必要もないので忘れた。覚えているのは私の名がハクロウという事だけだ)


 ハクロウ、と小さく口の中で反芻する。


(…時に人の子よ。お主は私が怖くないのか?)


 そう訊ねて、ハクロウと名乗ったその獣はユルンの前でおもむろに座って長い尻尾をふわりと前足の上に置く。

 驚いている様子ではあるが、怖がることもなくむしろ恍惚とした目を向けてくるその子供に、ハクロウは興味津々という感じで鼻先を近付けた。


(……ううん、怖くない。とても……とても綺麗……)


 月明かりに照らされて銀の毛並みがキラキラと水面のように輝いている。

 その大きく狼のような顔はひどく穏やかで、金に輝く瞳は月のように静かでありながら温かな光を灯していた。

 そんな存在を、怖がる理由などない。


 たった一人で不安と恐怖に押し潰れそうだったユルンの心はこの銀色の獣に救われて、たまらずその大きな首元にしがみついた。



 

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