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銀の皇太子と漆黒の聖女と  作者: 枢氷みをか
第二章 ユーリシア編 第三部 有備無患 

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王の資質

「ユーリシア殿下はご公務の覚えがよろしいので、補佐官としてとても安心いたします」


 言って、フォーレンス伯はやんわりと笑みを落とす。


 皇王代行から六日目にしてようやく一通りの公務を終えたところで、ユーリシアはひとまず安堵したように人心地ついた。

 正直まだ覚えたとは言い難いが、公務の流れだけは理解できたはずだろう。あとはこれをフォーレンス伯の補佐なく出来れば一番理想だが、そう簡単な事ではない。

 この短い代行期間では、すべてを覚える事は難しいと悟って、ユーリシアは嘆息を漏らす。


「…まだまだ判らない事ばかりだ。国を治めるという事は、これほど難しいのだな」


 肩を落としてため息をくユーリシアを視界に入れて、フォーレンス伯は己の主と違って真面目な皇太子に小さく失笑する。それを怪訝そうに見返すユーリシアに、フォーレンス伯は軽く狼狽して威儀を正した。


「…申し訳ございません。陛下のお若い頃を思い出しておりました」

「…父の?」

「はい、皇位にお就きになったばかりの頃です」

「…父は確か、ずいぶん早くに皇位を継いだと聞いた」

「ええ、先代__つまりユーリシア殿下のご祖父に当たるお方ですが、先代皇王が早くに崩御なさいましたので、陛下は御年16で皇位をお継ぎになりました」


 その返答に、ユーリシアは感嘆を込めて、16、と口の中で小さく呟く。


「…私には16で皇位を継ぐなど考えられない。20でこの有様だ。きっと私ではどうにもならないだろうな」


 その言葉にフォーレンス伯は再び、今度は失笑ではなく朗笑ろうしょうする。


「おそらく当時の陛下がお聞きになったら、苦笑なさることでしょう」

「……?それはどういう…?」

「陛下が皇位をお継ぎになった当時、あの方はご公務を嫌って逃亡なさることがよくございました。そのたびに私などは陛下の尻拭いをさせられる羽目になるので、ほとほと困り果てた事を覚えております」

「……!?…あの、父が…?」


 ユーリシアはたまらず目を丸くする。

 ユーリシアの記憶にある父の姿は常に威厳に満ち溢れ、どれほどの難題が道を塞いでも涼しい顔で難なく乗り越えていく聡慧そうけいさがあった。

 その父が『公務を嫌がって逃亡』などと想像すらできず、ユーリシアは軽い混乱に陥る。


「あの方は確かに賢君ですが、気まぐれなところがございますから。特にお若い頃はそれが顕著でいらしたので、一日中ご公務に束縛されることに嫌気が差されたのでしょう。どれほど進言いたしましても、なかなかご公務を受け入れてはくださいませんでした」


 そこでユルングルの姿が父と重なる。

 あれほど性格が似ている事を思えば、公務に束縛されることを嫌悪する姿に奇妙なほど合点がいった。ユルングルがもし皇位に就けば、間違いなく父と同じく逃亡を企てるだろう、とユーリシアは心中で小さく失笑する。


「陛下がまともにご公務をこなせるようになられたのは、皇位をお継ぎになった三年後です。つまり御年19の頃、ユーリシア殿下とそう違いはございません。ですからもっと肩の荷を下ろして、そう肩肘を張らずともよろしいのですよ」


 穏やかに言って微笑を浮かべるフォーレンス伯を見やって、ユーリシアはようやく自分を気遣ってこの話をしてくれたのだと気付いた。


 フォーレンス伯はこの六日間、こうやって時折、張り過ぎた気をほぐすようにユーリシアの気を紛らわせてくれる。そのさりげない気遣いは、息子であるダリウスを彷彿とさせた。


(…本当によく似た親子だ)


 あのユルングルが、ことさらダリウスを信頼している理由がよく判る。そして父もまた、目の前の彼を心底信頼しているのだろう。

 ユーリシアは笑みを落としながら心中でひとりごちて、フォーレンス伯に視線を移した。


「ありがとう、叔父上。おかげでずいぶん気が楽になった」

「いえ、お心を軽く出来たのでしたら何よりです」


 謝意に応えたところで、フォーレンス伯はユーリシアの足元に落ちている物にふと気づく。


「ユーリシア殿下、何か落とされているようですが…」


 言って拾い上げたそのハンカチに、皇族の家紋である君子蘭とユーリシアのイニシャルの刺繍が施されているのが視界に入った。


「…おや、見事な刺繍ですね。ミルリミナ様からの贈り物ですか?」


 そのハンカチを手渡しながら何の疑いもなく告げるフォーレンス伯の言葉に、ユーリシアは軽く心に痛みが走ったのを自覚して、思わず少し寂し気な笑みを落とす。


「…いや、ユーリの落とし物だ」

「…?…落とし物、ですか?ユーリ殿からユーリシア殿下への贈り物ではなく…?」


 意を得ず、訝し気にフォーレンス伯は問う。

 その問いかけに笑う事も出来ず、ユーリシアは悄然とイニシャルが施された刺繍を小さく撫でた。


「……いや、おそらく私ではなくユルンに宛てた物だろう…。…拾ったはいいが、つい失念して渡しそびれてしまった…。もう時機を逸してしまって、どうしようか途方に暮れている……」


 とっさに嘘が口をついて出る。


 言いながら、なぜこれほど心が痛むのかどうしても判らなかった。

 ユーリがユルングルに対して親愛の情を抱いている事は承知している。それは兄か、あるいは友人に対する感情なのだろう。自分がユルングルに対して抱いているそれと全く同じものだ。


 同じものだと判るのに、なぜかそれを認めたくない自分が存在していた。その存在が、心痛と共にこのハンカチを返すことをひどく拒むのだ。


(…勝手なものだな)


 自分はユルングルに対してその感情を持っているのに、ユーリがその感情をユルングルに向ける事を容認したくないのだ。それはユーリに対する嫉妬なのか、あるいはユルングルに対する嫉妬なのかは自分でも判らなかった。今ではもうどちらも自分にとって大切な存在だ。どちらであっても不思議ではないが、どちらなのか判らないのが、またもどかしい。

 自分は他人の心の機微を察するのが苦手だとは思うが、何よりも難解なのは己の心だろう。


 結局どれだけ己の内実を彷徨っても答えが出てこないので、おかげでもうずっとこのハンカチを持ち続けている。

 いつでも返せるようにポケットに忍ばせてはいたが、おそらく返せる日が来ることはないのだろう。そう思って、もう何度も捨てようとさえ思ったが、ユルングルを想ってユーリが一針一針縫ったのだと思うと、そこまで非情になることもできなかった。

 今ではもうユーリに返すことはできなくても、いずれ心の整理をつけてユルングルに渡せる日が来ればと思っている。


(…渡せる日が来るのかもはなはだ疑問だが…)


 自嘲するようにひとりごちて、ユーリシアは嘆息を漏らす。


 ハンカチを手に持ったまま、憂いたように何も話さなくなったユーリシアを見止めて、フォーレンス伯は控えめに声をかけた。


「…ユーリシア殿下。本日の午後からのご公務は書類に目を通すだけとなっております。もしよろしければ___」


 そこまで告げたところで、執務室の扉を誰かが叩く音が部屋に響いた。

 二人は互いに視線を交わしていぶかし気に扉を視界に入れると、こちらが返事を返す暇もなく、相手が先に声をかける。


「失礼する」


 扉の向こう側から響くその声に、ユーリシアは聞き覚えがあった。

 一聴いっちょうすると優し気に聞こえるが、そうではない。これは彼の抑えきれない感情を無理やり抑えた結果、ひどく無感動な声になっただけなのだと、ユーリシアは承知していた。それが聞きようによっては優し気に聞こえるのだ。

 低く緩やかに話すその口調が、その演出を最大限に引き出している。これは相手の警戒心を解くために彼が意図して、そういう口調を作っているのだろう。


 何もかもが嘘で塗り固められた男__デリック=フェリシアーナ。

 ゆっくりと開かれた扉から現れた思った通りの男に、ユーリシアは一瞬体が強張ったのを感じた。


「…デリック伯父上。何か御用ですか?」


 問いかけながら、ユーリシアはおもむろに席を立つ。

 立場としては皇太子であるユーリシアの方が上だが、同じ皇族の、それも父より年上であるデリックに敬意を払わないわけにはいかない。


「いや、何。慣れない公務で可愛い従弟甥いとこおいが四苦八苦しているのだろうと思ってね。様子を見に来たのだ」


 光に当たると金のような輝きを放つ髪を小さく掻き上げ、彼はうそぶきながら柔和な笑顔をたたえている。その笑顔が、嫌に空々しい。ユルングルの命を狙っていたのが彼だと判った今その笑みがたまらなく嫌悪感を刺激して、ユーリシアはわずかに眉根を寄せた。


「…お心遣い感謝いたします。ですがフォーレンス伯が色々とご指導くださいますので、ご心配には及びません」


 いつになくそっけない態度にデリックは怪訝に思いながらも、そうか、と短く返答する。


「…そういえば先ほど陛下のお見舞いにと白宮に行ってきたのだが、陛下は誰にもお会いにならないと門前払いされてしまってね。ユーリシアから口を利いてもらえると助かるのだがな」

「…申し訳ございませんが、父とお会いすることはできません」

「なぜだ?」

「陛下はこちらにいらっしゃらないからです」


 そうすかさず答えたのはフォーレンス伯だった。

 デリックは割って入ったフォーレンス伯を思わずめつけるように一瞥した後、すぐさまいつもの涼し気な顔に戻る。


「…発言をお許しください、デリック殿下。シーファス陛下は慢性的な不眠が悪化いたしまして、ここ数日まともにお休みになってはいらっしゃらなかったのです。このままではお倒れになるだろう、と皇宮医代理の診断がございましたので、我が領地で十日ほど、御心とお体を休めていただいております」

「…なるほど。陛下はよほど貴殿の領地がお気に召したとみえる」


 何かあると皇王は、すぐにフォーレンス伯の領地に赴いた。

 一度目の懐妊で流産した皇妃が休養を取ったのも、そして生まれていないはずの第一皇子を匿っていたのも彼の領地だったと、デリックは記憶している。


「…我が領地は恐れ多くも亡き皇妃ファラリス様がお気に召されて、陛下と共に何度も訪れた場所。…ファラリス様との思い出が陛下の御心を落ち着かせてくれるのでしょう」


 皮肉を言ったつもりだったが、フォーレンス伯はさらりとそれをかわす。

 普段は無口な割に、口を開けば彼は雄弁だった。あの口が達者なシーファスの補佐官を長年務めているのだ。皇王同様、彼を言い負かすことは難しいだろう。


(…忌々しい存在だ)


 デリックは内心で舌打ちを落としながらも、それをおくびにも出さずにこりと微笑み返す。


「そうか、それは何よりだ。…それはそうとユーリシア。ならばあの賓客も彼の領地に行かせるべきではないのかね?」

「…!…なぜです?」

「彼らは他でもない陛下の賓客だ。招いた陛下が不在ならば白宮に滞在させる理由はないだろう」

「そういうわけにはまいりません。招いた父が不在ならば、なおのこと彼らをもてなすべきです。父が不在だからと追い出すような真似は承服いたしかねます」


 その言葉に、デリックは軽く顔を歪ませた。


「…もてなす?彼らを?冗談ではない…!ラジアート帝国の皇弟だからと大目に見てはいたが、彼は低魔力者だぞ!おまけにその従者にまで低魔力者がいる…!白宮を汚すつもりか…!その上、我が国の騎士団にまで口を出してきたのだ…!皇太子としてそれでいいのか、ユーリシア!!」


 それに関しては、痛いところを突かれたと、わずかにたじろぐ。

 本来であれば、いくら賓客とはいえ他国の騎士団にまで口を出していいものではない。明らかに出過ぎた行為で、非難されるべき事案だろう。

 だが、これを容認したのは一国の主たる皇王シーファスなのだ。ならばそれをたてに取るしかない。


「…我が国の騎士団は問題を多く抱えております。父は…陛下はそれを改善するべく新たに指導者を招いただけの事。貴方に非難されるいわれはない」

「……!」


 ぴしゃりと言われて、デリックは閉口する。

 皇王の意向だと言われれば、例え皇族であってもおいそれと非難するわけにはいかない。下手に口を挟めば逆賊と捉えられても仕方がないのだ。


「…それから、彼らの白宮での滞在についてですが、彼らは陛下の賓客であると同時に私の賓客でもある。デリック伯父上が今しがた低魔力者と罵った彼は私の友人です。彼らに対して侮蔑的発言を行うという事は、陛下や私を侮辱している事と同じこと亅


 言ってユーリシアは、緩やかに視線をデリックに向ける。


「…それとも、逆心がおありか?デリック伯父上」

「……!!」


 その自分に向けられた冷ややかな眼差しに、デリックはまるで背筋が凍るような感覚に襲われた。


 ユーリシアは特に怒りを表しているわけではない。

 それどころか彼の表情には、何の感情もなかった。表情だけではない。その抑揚のない緩やかな語り口にさえ、感情の色はなかった。侮蔑も、憎しみも、怒りさえなく、ただただ冷ややかで、どこまでも冷たく強い眼差しだけが返ってくる。


 それがことさら、デリックの中の恐怖心を煽った。


 これは、皇王が相手を威圧するときに好んで使う手だ。

 あえてその表情にも、そして口調にも一切の感情を載せず、ただ静かに抑揚なく、だが相手によく聞こえるようにゆっくりはっきりと言葉を落とす。ただそれだけで、相手は皇王の内心が読めず、それゆえに想像力を膨らまして勝手に狼狽し自身で恐怖心を煽るのだ。二心を抱く者ならば、効果覿面だろう。


 長年、皇王を見てきたデリックはそれを熟知してはいたが、それでもユーリシアのそれに対して自身の恐怖心を抑える事が出来なかった。それは自身が二心を抱く者であった事も大きいが、それだけではない。

 彼の氷のような銀の髪がなおさら彼の冷たさを増長させ、その冷たく冴えわたった瞳の奥に、何やら得体のしれない不気味なほど大きな何かを感じて、デリックの体の芯から恐怖と震えを呼び起こすのだ。


(…こんな若造に…!…この私が……!)


 自分よりも一回り以上若いユーリシアの威圧に、あろうことか恐怖を抱いてしまった。

 この凄みは年若い者に出せるものではない。

 ましてやあの皇王よりも上を行くなど、あり得るはずがないのだ。


 デリックはたまらず目を背けて、何とか口を開く。


「……逆心など…!あるはずがないだろう…!」


 何とかそれだけを伝えて、震える体を悟られぬよう必死に恐怖心を抑える。

 ユーリシアはそんなデリックを見て取ると、冷めた表情に小さく微笑を浮かべた。


「…それを聞いて安心いたしました。デリック伯父上には幼い頃とてもよくしていただいたのです。こんなことで貴方を失うのは忍びない。…貴方が魔力至上主義者だという事はよく存じ上げておりますが、以後、言葉を慎んでいただきますよう、よろしくお願いいたします」

「……承知した。…では、これで失礼する」


 冷や汗を浮かべた顔にいつもの薄ら笑いを浮かべると、デリックは早々に踵を返して部屋を後にする。

 扉を閉めた先で、デリックは閉まった執務室の扉を一瞥して、切歯扼腕せっしやくわんするように盛大に顔をしかめた。




「…はあ…何とかやり過ごせたか…」


 デリックが出て行った扉から視線を外して、ユーリシアは脱力するように椅子に盛大に体を預ける。

 その表情がいつもと変わらぬ年相応の朗らかなユーリシアに戻っている事に、フォーレンス伯はわずかに安堵した。


「…大したものです、ユーリシア殿下」

「…いや、私はただ父の真似をしただけだ」


 苦笑を浮かべて、フォーレンス伯の世辞に応える。

 その表情は先ほどまでの皇王を彷彿とさせる__いや、皇王さえも超える凄みを見せたユーリシアと本当に同一人物なのかと疑いたくなるほど、穏やかで柔らかい。


 まだ20と言う若さであれほどの凄みを出せる者は、そういないだろう。

 その上、彼はその自覚が全くないのだ。それどころか己を軽んじる所がある、とフォーレンス伯は思う。


(…陛下がこの方を次期皇王にとお考えなのが、よく判る…)


 先ほどの言は決して世辞などではない。

 この六日間、フォーレンス伯は補佐官としてユーリシアの王たる資質を何度も見てきた。

 公務の覚えもよく、人心を掴むのも早い。公務の間は常に、20という年齢を思わせぬほどの泰然自若な姿で威厳を見せ、時には先ほどのように百戦錬磨の猛者でさえ尻込みするような凄みを見せる。かと思えば、愛嬌のある姿を思わぬところで見せるので、その落差に人は簡単に魅了されるのだ。

 難を挙げるとすれば、なぜか劣等感を抱いて自分を凡人だと勘違いしている事だけだろうか。


(…本当に、末恐ろしい方だ)


 ユーリシアが皇位を継げば、どのような皇王になるのか。

 きっとシーファスは楽しみにしているに違いない、とフォーレンス伯は小さく笑みを落とす。


「そういえば先ほど何かを言いかけてはいなかっただろうか?叔父上」


 人心地ついたユーリシアは、ふと思い出したようにフォーレンス伯に声をかけた。

 ユーリシアの未来に思いを馳せていたフォーレンス伯はその言葉で我に返って、同じように思い出す。


「…!…ああ、そうでした。午後からの公務は書類に目を通すだけですので、よろしければお久しぶりにユーリ殿と過ごされてはいかがですか?」

「…!それは…嬉しいが、公務を疎かにするわけには…」

「今日中に目を通さなければならない書類はございません。急を要するものではありませんから、ご心配には及びませんよ」


 やんわりと告げるフォーレンス伯を、ユーリシアは視界に入れる。

 先ほどの自分の様子を怪訝に思って、気を使ってくれているのだろう。

 それが嬉しく、同時に申し訳ない。


 ユーリシアはやはり断ろうかと一瞬逡巡したものの、確かに皇王代行を始めてからあまりに忙しく、ユーリのみならずゼオン達の様子すら見に行く事が出来ていない現状が脳裏に浮かんで、困ったように嘆息を漏らした。


「…申し訳ない、叔父上。ではお言葉に甘えてもいいだろうか?」


 心底申し訳なさそうに、ユーリシアはおずおずと告げる。


 王の資質をその身に宿すこの青年は、こんな時でもやはり控えめで真面目な態度を崩さない。

 そんなユーリシアをフォーレンス伯は好ましく思いながら、あの陛下からよくこれほど素直な方がお生まれになったものだと、人知れず心中で失笑した。



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