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6 手がかり

 アタシは現在、寂れた町に来ている。


 あの後、森をくまなく探してみたけど、やっぱりサクセスはいなかったわ。


 シャナクは、生きていればこのテーゼという町に来ているはずと言っていたから、とりあえず来てみることにしたの。


 でも、「生きていれば」なんてふざけた事を言うもんだから、一発殴ってやったわ!



 サクセスは生きてる!

 絶対生きてる!

 アタシにはわかる!


 

 アタシは早速ギルドに行くと、受付の親父からサクセスの情報を聞いたの。


 それなのに、そのオッサンはアタシの話を聞こうともしないで、一方的に話してきたわ。



 アリエヘンで、勇者様のパーティを募集しているから、早く戻ってきて欲しい。



ですって。



 みんなして勇者、勇者って、本当になんなの?

 そんな事よりアタシの質問に答えなさいよ!



 アタシはムカついて、親父の首元に剣を突きつけてやったわ!


 そしたら、色々白状してくれた。



 本当かどうか疑わしいけど、サクセスはかなり強くなってるらしい。


 ダンジョンのボスモンスターを倒したとか……。


 あの弱いサクセスがそんなはずは無いから、多分たまたま強いパーティに入ったのね。



 だとしたら荷物持ちや雑用をやらされて、酷い目に遭ってると思うの。


 だから、早くサクセスを助けてあげたい。



 どうやらサクセスは、マーダ神殿に向かってるようだから、私も早速そこに行こうと思うわ。



「ねぇ、シャナク。どうすれば一番早くマーダ神殿に行けるかしら?」


「そうですね。ここから北西側にノルニーアという港町があります。そこから船に乗って20日もすれば、マーダ神殿の北側の町に着くでしょう。」


「えっ?」



 アタシは20日と聞いて、その長さに驚きの声をあげた。


 しかし、話にはまだ続きがある。



「更に、そこから馬車に乗って10日でマーダ神殿に到着するかと。ですから、急いでも一ヶ月はかかりますね。」


「一ヶ月……。また一ヶ月待たないといけないの!?」



 シャナクの言葉に、アタシは発狂しそうになった。



 その様子を見たシャナクは、咄嗟にガードを固めたが、どういう事か拳は飛んでこない。



 不思議に思い目を開けると……



 そこにはさっきまでの怖い勇者ではなく、とてもか弱そうな少女がいた。



「ゆ、勇者……様?」



 ビビアンは泣いていた……。


 それに戸惑うシャナク。



「シャナク……本当にそれが一番早いのね? そこまでいけば……絶対会えるのね?」



 ビビアンは懇願するような目で、泣きながらシャナクに尋ねた。


 その返答にシャナクは悩む。


 普通に考えて世の中に絶対はない。

 それに、この広い世界で人を一人見つけるというのは、決して簡単なことではなかった。



 しかしこの目の前にいる、儚くも悲しみに溢れた少女の前で、そんな事は言えるはずもないだろう。



 故にシャナクは拳を握りしめ、力強く言った。



「会えます! 必ず会えます! 私が必ずや見つけてみせましょう!」



 ビビアンがこれまで怖く見えていたのは、サクセスを思って焦っていたせいだった。


 愛する人を探しても探しても見つからない。


 その辛さは、胸が張り裂けるくらいの苦しみをビビアンに与え続けていた。



 それに気づいたシャナクは、誓う。



 この少女の為に、全力で力になろうと。



 そして、シャナクの答えを聞いたビビアンは



……泣きながら笑った。



「絶対だよ、シャナク」



 その笑顔は眩しいほど光に溢れており、



ーーそして美しかった。

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