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15 ライブハット城

「見えてきたわね、あれがライブハット城なの?」


「はい、あちらに見えるのがこの大陸の要ともいえるライブハット城でございます。」


「へぇ~、大きいわね。」


「そうでございますな。それとあの国は、マーダ神殿と近い事もあり、屈強な戦士やハイレベルな魔導士等が多く滞在しているため、一番安全な国としても知られております。」



 アタシの質問にシャナクは淡々と説明する。


 どうやらシャナクはアタシと話す時に、余計な事を口にしないことを学んだようね。


 悪くないわ。


 現在、アタシたちの目の前には、大きなお城とそれを囲むように広がる城下町が見えている。


 三日前、魔王の軍勢に襲われたこの船は、アタシ達の活躍によって目立った損害等もなく、その後も順調に進んで行った。


 変わった事と言えば、あの戦闘の後、乗船していた者達から熱烈な歓迎を受けたことくらいだわ。


 アタシのところにも、むさいおっさんやキザったらしい貴族の青年達が気安く接してきた。


 他の男と一緒にいたらサクセスに勘違いされちゃうから、近づいてくる奴はとりあえず殴ることしたの。


 そしたら誰も近づかなくなったわ。


 そのおかげであの後もアタシは、サクセスと一緒に静かでゆったりとした船旅を楽しむことができた。



※注 一部ビビアンの妄想が入っています。



 シャナクはシャナクで何とか生き返ることができて、みんなに称賛されて浮かれていたわね。



「いやぁ、勇者様のお陰でなんか沢山感謝されてしまいましたよ。まぁ、私も久しぶりにあれだけのモンスターを殲滅してやりましたがな。あっはっは。」


等とドヤ顔で自慢してきたから、その顔を見る度に殴っておいたわ。


 そしたらあら不思議。


 シャナクはアタシの前で笑わなくなったのよ。


 おっさんのドヤ顔程うざいものはないから、いい気味ね。



 そしてやっと、この船旅も終わる。

 あの大陸に渡れば……

 やっとサクセスに会える!

 早く会いたいわ!



 そのだった。


 突然、船の汽笛が鳴り響く。


 それはまさに船着場に到着する際の合図であった。



 船着場に着くと、ビビアンは直ぐに船から降りる。


 しかし、シャナクは船員達に握手を求められたせいで、時間が掛かっていた。


 それにキレたビビアンは、剣を抜いて周囲の者を散らせる。



 恐ろしきや、今代の勇者様……。


 巷では既にプッツン勇者の称号を得ていた。



「それでは勇者様、先にお城へ挨拶に行きますか? それとも冒険者ギルドに?」


「はぁ? なんでアタシが城に行かなきゃならないのよ?」



 突如ビビアンから湧き上がる魔王のオーラ。

 


「い、いえ。行く必要はないかと。ただ、城の情報網があればサクセス殿や例の占い師の情報もあるかと思い、伺った次第です。」


 それを聞いて、ビビアンの魔王のオーラは消えていく。



 シャナク危機一髪!



「そう、ならいいわ。じゃあさっさと城に行きましょう。」



 ビビアンはシャナクの話を聞いて城に行くことを決めた。


 しかし、なんだか町が騒がしい。


 さっきから冒険者や城の兵士達がどんどん町の外に向かって歩いていた。



「何かあったのですかな? まぁ勇者様には関係ない事ですな。ささ、直ぐにお城に向かいましょう。」



 シャナクはそう言うと、急いで城を目指す。


 本当は何があったか知りたいところではあったが、それを口にすれば命はない。


 シャナクも大分ビビアンの扱いがわかってきたらしい。


 そして、ビビアン達はさっそくライブハットの城門の前に辿りつくと、そこで兵士に止められた。



「待たれよ、そこの者! ライブハット城に何用だ?」



 兵士達は横柄な態度でビビアンを止める。


 シャナクはそれを聞き、再び焦りはじめた。



 馬鹿野郎!

 自殺志願者か!

 相手を見て言え!


 

 そう叫びたいシャナクであったが、グッと堪える。



「無礼な! ここにおられるのが誰と心得る! 今代の勇者ビビアン様であらせられるぞ。そして私は勇者様の従者シャナクである。頭が高い! すぐに王に謁見をさせるのだ!」


 最後に小声で「死にたくなければな……。」と付け加えるシャナク。


「ひぃぃ……。」


 シャナクの最後の一言を聞き取った兵士は顔を青ざめさせて、小さく悲鳴を上げた。


 兵士達はシャナクの言葉を聞き慌てる。


 本当に勇者様であったならば、大変な事になると思ったのだ。


 今代の勇者の噂は、既にライブハットまで伝えられている。



 やれ、強大な力を持つ、美しい女性であるとか。


 やれ、極めて短気であり、怒らせると国が亡ぶとか……。



 兵士の目の前にいるのは、七色のオーラを放つ金髪美少女。


 その隣にいるのは、聡明そうな顔の中年賢者。


 兵士はシャナクの言葉が本当である事を確信した。



「た、大変失礼しました! すぐに確認に行って参りますので、しばしお待ちください!」



 兵士の一人はガラッと態度を変えて謝罪をすると、その場から急いで離れる。



 そして数分もしない内に戻ってきた。



「はぁはぁ……お待たせしました。王は直ぐに会うとのことです。こちらへどうぞ。」



 さっきの兵士は、息を切らせながら走って戻ると、ビビアン達を城の中へ案内するのだった。




【獲得した称号】


 プッツン勇者 (ビビアン)

 苦労人シャナク


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