4話 悪魔との接触
「レイグ様…どうして泣いているのですか?」
「え…?」
ふと気が付くと俺は涙を流していた。
「目にゴミでも入ったのかな、あはは……」
俺は涙を拭い会話を続ける。
「ところでアリシア様はどんなスキルをお持ちなんですか?」
「私はまだ成人していませんよ」
「…!?すみませんでした!」
「いえ、大丈夫ですよ。レイグ様のスキルはどの様な名前なのですか?先程の鎖はレイグ様のスキルですよね?」
「は、はい」
どうしよう…俺のスキルなんて言おう……。
【呪縛】なんて言ったらどんな反応をされるか。
いや、アリシア様になら言っても良いのではないのか?
やめておこう。
アリシア様が大丈夫でも彼女は王女だ。
王城に戻って付き添い人のスキルが【呪縛】だったらまた殺されかける未来しか見えない。
「俺のスキルは【製成】です。まだ鎖しか作れないですけどね」
スキルの中でも【製成】はかなり在り来たりなスキルの一つだ。
これで大丈夫なはず…。
「【製成】ですか。しかし見た事のないスキルだったような気がしますが先程の鎖はどのような物なのですか?」
「ええと、あの鎖には相手をある【状態異常】にする能力があるんです」
「成る程そういうことですか。私もレイグ様みたいに役に立つスキルを得られたらいいな」
「俺のスキルなんかそんな大それたスキルじゃありませんよ。アリシア様ならもっといいスキルを与えられるはずですよ」
こんな事を話している間にルノーン王国の王城に着いた。
門の前には門番兵が、立っていた。
「アリシア様お帰りなさいませ。ところで貴方は何者ですか?護衛の騎士は何処にいるのですか?」
「この方は私の命の恩人です。客人として招き入れますのでくれぐれも無礼がないように」
「はっ!」
門番兵は騎士がいなくなった理由は聞かずに悟った。
「レイグ様こちらへ――」
アリシアは俺のローブを掴み引き寄せる。
門を潜ると俺が元いたカノン王国の城と同じくらい大きな城が聳え立っていた。
そして城に入ると直ぐに客室のような場所に案内された。
「あの、俺そろそろ時間なので帰ってもいいですか?」
「もう少しお待ち下さい」
一体何をするんだろうか。
これ以上此処にいたら俺が悪魔だとバレかねない。
するとドアを叩く音が聞こた。
「レイグ様、国王様がお呼びです。此方へお越し下さい」
おいおいマジかよ。
王とご対面だって?
でも行くしかないよな。
バレない事を祈ろう。
「分かりました――」
◇ 〈謁見の間〉
「私はルノーン王国第一王子、エヴァンだ。お主が我が娘を助けたレイグか。今回の事は感謝してもしきれない。何か褒美をやろう。何か欲しい物はあるか?」
「いえ、俺はただ通りかかっただけですのでそんな褒美を貰うような事は出来ません」
「我が娘の命の恩人なのだ。無償で助けられたとなれば王家として顔が立たないのだ。遠慮なく言ってくれ」
「ですが……。そうですね、では私に住む場所を頂けませんか?」
俺は今無一文だ。
住む場所もなければ食べる物もない。
住むことさえ出来ればどうにかなるはずだ。
「承ったぞ。ではこの王城の一室を貸そう」
王城か…。
あわ良くば宿屋が良かったが今のところ此処に俺がいても悪魔という事はバレる可能性は少ないだろうか。
「有難うございます、エヴァン王よ」
「うむ」
◇ その日の夜
王城ではパーティーが開かれていた。
「レイグ様…」
振り返るとそこには真っ白なドレスを着て恥ずかしがり、顔を紅く染めて立ち尽くすアリシア様がいた。
「………」
美しい…。
数秒間、彼女に見惚れてしまった。
「お似合いですアリシア様」
「あ、ありがとうございます……」
「……」
「……」
「楽しんでおるか?」
「はい、とても楽しんでいます」
エヴァン王が話しかけてくれたおかげで気まずい空気が吹っ飛んだ。
「では乾杯をしよう」
俺とエヴァン王とアリシア様は乾杯をし、その日のパーティーを楽しんだ。
◇
俺はふと目を覚ました。
外を見る限りまだ夜は明けそうにない。
再びベッドに入ろうとするがベランダに誰かから視線を感じた。
しかし、ベランダには誰もいない。
気のせいか。
「悪魔さん♪」
目を逸らした途端ベランダから声が聞こえた。
目を向けると先ほどまで何もいなかったベランダの柵に一人の少女が座っていた。
「誰だ…?」
「私も悪魔だよ♪」
私もだと?
俺は自分が悪魔とバレているのに何故か落ち着いていた。
「その悪魔が何のようだ?」
「冷たいなー♪特に用は無いんだけどさ、悪魔が誕生したって聞いてやってきちゃった!」
少女は柵から降り部屋に入って来る。
俺のそばまで来るとクンクンと俺の身体を嗅ぎ始めた。
「何してるんだ…?」
「この匂い……。貴方もしかして気になる人でもいる?」
「は…?お前何を言って…」
チクッ。
少女は俺の首に手を絡ませ首に何かを刺した。
「痛っ、おい何してるんだ!」
彼女を突き飛ばすと口元に赤い液体が付いているのがわかった。
「美味しっ♪やっぱり貴方は私の運命の人だよ♪そろそろ時間だね、行くね♡」
「おい、待てって」
「大丈夫だよダーリン♡そのうち必ず会えるから♡だって私たち運命の赤い糸で結ばれてるんだから♡」
俺は彼女の目を見る。
すると急に眠気に襲われた。
「バイバイ、ダーリン♡」
薄く開いている瞼の隙間から見えた彼女の背中には翼が生えていた。
それは物語に出て来る本物の悪魔のようだった。
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