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王国騎士と藍色の魔王  作者: 小山シオン
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第二話 騎士様

 クリストフはまず、自力で歩けるようになるまでは何もできないため、赤ちゃんとしての生活を堪能した。悪くない生活であったが、自由が利かない点と未だに死因が思い出せないことが残念であった。(死ぬ瞬間なんて思い出したくもないが)


 朝起きたらまずミルクを飲み、至福の二度寝。そして起きてしばらくしたらまたミルク。さすがにカレーライスでも食べたくなる時はあったが仕方ない。そもそもまともに歯が生えそろってないし、この世界にカレーライスがある保証がないのだから。


 そして懲りない父親と母親の攻防を見届けた後にまたミルクである。


 この後にマリアがクリストフを抱っこし、敷地内の広い庭に出ることが多かった。家の外にでると、きれいに切りそろえられた植物が立ち並んでいる。これは毎朝、執事(結構若い男性)が行っている仕事の成果だ。この庭を見るだけで執事が器用でかなり有能であることがわかる。


 一通り庭を回ると家に戻り、また寝かされる。また、この時は執事が見守ってくれることになっており、マリアは安心して部屋の外へ出ていく。明らかに夫よりも執事を信頼しているところが面白い。


 そしてその後はミルクと睡眠、マリアやフェルトとの時間を過ごしている。


 クリストフは生活の中で一つ疑問が浮かんだ。乳母などの世話係が雇われないのだ。以前フェルトとマリアが世話係の雇用について話していたが、フェルトが拒否している。貴族であれば乳母がいるというのはクリストフのイメージでしかなかったのかわからないが、執事が世話係を兼任することで成り立っていた。


 また、わかったこともあった。フェルトとマリアは低級の貴族であり、治めているのは小さな村一つであるということだ。庭に出ると小さな村が見渡せるようになっており、人も多くないことがわかる。


 半年が過ぎたころからは、ハイハイができるようになった。このころから執事の見守りの時間にクリストフが寝ていないときは、童話のようなものを読み聞かせしてくれるようになった。文字を見せながら読んでくれるので、最初は全く読めなかった字もだんだんと読めるようになっていった。赤ちゃんの吸収力というものは侮れない。


 クリストフは、執事が読んでくれた童話の中に一つ気になる話があった。人々を恐怖に陥れた魔王と、それを退治した騎士という話だ。


“昔、昔のあるところに一人の騎士様がいました。 


 騎士様は勇敢で、周りの人々から頼られ尊敬されていました。


 ある日、魔王が多数の魔族を引き連れて人里を襲っているという話を聞いた騎士様は、対抗するために仲間を集め始めました。


 騎士様はまず、剣技の達人が集まる場所へ行き数人を仲間にしました。

 それから腕っぷしに自慢のある男を募集しました。


 騎士様を慕っている人は多かったので、数万人もの男が集まってきました。


 騎士様は剣技の達人とともにその大軍を引き連れて魔王に挑みましたが、不思議な力を使う魔王に手も足も出ませんでした。


 多くの仲間を失った騎士様の信用はすぐに失われてしまいました。


 人々から、多くの人を死なせた、弱い騎士だと口々に言われましたが、騎士様はあきらめませんでした。


 それから騎士様は山奥で、一人鍛錬に励みました。


 何度も死にかけたくらいの厳しい訓練の果てに、騎士様は神様からある力を授かりました。


 その力は魔王や、魔族が使う不思議な力に匹敵するものであったので、騎士様はとても喜びました。


 さらに訓練を重ね、その力を自分のものとした騎士様は一人で魔王討伐に向かいました。


 一人で来たことをあざ笑った魔王と魔族たちでしたが、騎士様の使う力の前に仲間の魔族の多くが倒されました。


 焦った魔王は騎士様と戦いましたが、厳しい訓練を重ねた騎士様にかなわず、とうとう倒されました。


 騎士様は魔王を討伐したことによって信用が回復し、あがめられるようになりました。


 そして、その地に騎士様を中心とした一つの国が完成しました。


 騎士様はその国の王として親しまれ、天寿を全うされました。


 騎士様が亡くなった後、生まれてきた人間の子供が不思議な力を持っていることがありました。


 この力は騎士様の名前をとってナミスと呼ばれるようになりました。


 そして死後も人々に力を与えてくださった騎士様は、後世まで語り継がれることとなりました。“


 このような“騎士様”という人物に関する童話であった。聞いた当時は、騎士様に対する評価をすぐに変える周りの人々に突っ込みをしたくなったということで、印象に残っていたクリストフであったが、後にこの話が実話であると気付いたのであった。

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