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R^-FACE【ラフェイス】  作者: D.S
第一章「黒と赤」
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第一章・三話「王国の命運」

『記憶』と『想起』に呪われた銀何。遂に物語は動いていきます。

銀何と烈火の勇姿にご注目下さい。

では、お楽しみください…

 ――。




 銀何は、烈火と二人で大きな廊下を歩いていた。


 数分前、銀何はこの上の階の部屋――その中にあるベッドで目覚めた。状況の確認をする為に、部屋を出て廊下を歩き、階段を降りて大広間に行き着いた。そこでは、強そうな格好の騎士に剣を向けられ、疑われた所をまたまた烈火に助けられた。

 ……この二日間で、烈火は一気に『救世主』だ。


「……銀何君」


「――? はい」


 ……生憎、『生前』の事は憶えている。自分と瓜二つの存在から、呪いを掛けられた様なものだ。

『記憶』と、『想起』と言っていたか。終わると思ったものが終わらないとは、何たる皮肉だろうか。

 だからこそ、これを利用して望む人生を謳歌してやる。まだ、死ぬには、早い。


「色々不明瞭に、有耶無耶にしてしまって申し訳ありません。後で必ず説明はさせてください。今から向かうのは、『不動の総会』という議会です」


「『不動の総会』? そこでは何を……」


「『不動の総会』――通称、『本部会』では、王国の経済事情を治める代表と近衛騎士らが集結し、王国の一大事に向けて話し合う会議です」


「『一大事』が何か、って言う質問も後で?」


「……はい、銀何君には、僕と共に『本部会』にご出席頂きたいのです」



『生前』――言わば『想起』が行われただろう前に、銀何がこの城の人間全員を疑った事も事実だ。だからこそ、銀何にも多少気が引ける話なのだが、『不動の総会』に出席させる事で、一体何を目的とするのだろうか? 拘束や始末をされると思っていたものだが、これでは案外、匿ってくれる事だけが目的と言う線もある気がしてきた。


 烈火は、疑う等言語道断、と言わざるを得ない位の善人ではないのかと、銀何自身の経験が語っていた。

 何せ、銀何は『二回』も烈火に助けられているのだ。状況は掴めなかったが、夜の闇の中で炎を操る烈火の姿は正に英雄、と言う貫禄だった。


『不動の総会』に出る事で、銀何が烈火を――この王国を信用できる根拠が手に入る事を、銀何は願う。



「はい、喜んで出席させて頂きます」



 ………………………………………………………………


『本部会』こと『不動の総会』は、烈火と歩いていたこの大きな廊下を進んだ先にある会議館で行われる。

 会議館には、参加者の座席となる鉄椅子が並ぶ。その数、数百。それが左右対称(シンメトリー)に並べられ、その中央線を陣取るのが、美しい赤色のカーペット。その奥にはステージがあり、壇上では発言を許された者がスピーチを行うのだ。


 銀何は、烈火の案内で会議館の中に入る。すると、鉄椅子に着席している何百人の騎士が一斉にこちらを向く。何事かと思いながらも、烈火の隣席に着く。席に着けば、注目していた騎士達も目を離した。



 そして――再び扉は開く。



 美貌、強面……更に異端。三人の個性派が、堂々たる姿勢で会議館に入ってきた。「個性派」と比喩したが、その評価も無理ない事だ。何故なら、一目見るだけで印象付けさせられるからだ。その事実こそ、三人の存在感を物語る根拠である。


「銀何君、あの三人は何れ君と協力し合う相手です。どうかよく覚えておいて下さい」


「ど、どういうこと……。」


 三人と協力し合う……? 現時点では意味が分からない。取り敢えず、『本部会』に参加し続ければ状況を掴めるだろうか。


 そして、時は来る――。



「これより、『不動の総会』を執り行います」



 ………………………………………………………………


『不動の総会』が始まった。この場に、銀何の先の人生の行方が懸かっている。


「本会では、今まで待ちに待ち、永く望んだ希望が――遂に集結した事をご報告致します」


 その言葉一つで意味を察したのか、周りの騎士は大いに騒めいていた。


「その報告を、代表者から――猛尊 烈火」


「――はい」


 この会議の司会が、烈火の名を呼ぶ。それに呼応すると烈火は起立し、銀何を一瞬見てから赤いカーペットを歩き出す。


『代表者』――とは未だよく分からないが、烈火がただ歩くだけでも感じる貫禄が、銀何を含むこの場の参加者を震わせていた事は事実だろう。


 すると、先程来た個性派三人組が微笑み出す。否……強面の男は除いた二人だ。彼の雄姿を見慣れた例外者も居た様だ。


 烈火が遂に壇上に上がり、珍しくも一回深呼吸をしてから、ゆっくりと口を開く。


「レスター王国中心城地所属、近衛騎士団団長……猛尊 烈火です。只今より、『王国災禍』の厄から王国を護る最後の希望『守護者』における、『最後の四人目』を紹介致します」


 その言葉を聞いて、またしても騎士達は騒めく。

 だが、恐らく一番心境を揺らしているのは銀何自身だろう。聞いた事がある言葉と、ない言葉が出てきて混乱しているのが、その理由の半分だ。


『最後の四人目』……これは『前世』で烈火が騎士を説得する時に使った言い回しだ。それが何なのかという疑問も少し明らかになった。詳細は不明だが。

『王国災禍』と言う、どう聞いても絶対的な威圧感を放つ単語、これが恐らく王国を脅かす存在なのだ。それが運んでくる脅威から、『守護者』なる者が王国を護る、という事なのだろう。


 ……そして、もう一つの理由。突然この場まで連れてこられた銀何が抱かざるを得ない疑問。

『四人目』なる者が誰なのか、だ。ただ、言われたタイミングもそう、烈火が「連れて来た」と言った事実もそう。何か、凄く、嫌な予感がする。


「では早速……尊き『守護者』の四人目は――、」


 ………………………………………………………………


 烈火は現在、胸が張り裂けそうな思いをしている。

『不動の総会』の『守護者』代表を任命され、遂にそれに相応しい『才能』を見つけた。だが、折角選んだその人物は、どうやらとても困った不運に巻き込まれたらしい。その人物の過去に何があったかは烈火自身も知らない。だが果たして、彼にいきなり酷な運命を与えて良いのだろうか、この、命を賭ける運命に。


 ………………………………………………………………


「尊き『守護者』の四人目は、極 銀何君です」


 ……。え? 何で? 何で!?

 いやいやいや、確かに嫌な予感はしてたけど、俺がそんな大役は……無理だろ。

 ……と、銀何は心底疑問を連鎖させていた。


 取り敢えず、落ち着いて状況を整理する。どうやらこの城に寝床を借りるには、『守護者』という大役を負わされるという条件が付くらしい。しかも事情を聞くに、決定は至急で緊急なものとなった。烈火が声を掛けてきた理由の大半が、銀何に『守護者の才能』を見つけたからだろう。


「……極 銀何君、起立を」


 烈火の催促で、銀何は急いで立つ。その時、烈火は銀何に一礼を向けていた。不思議と悪い気はしなかった。一度は疑ってしまったが、それは大きな間違いなのだと、命を以て思い知った。彼は、恐らく疑う余地も無い善人なのだ。


「……彼と会ったのは、何たる事か昨日でした。然し、それが運命的な類であったと本気で信じられる自信があります。彼は正真正銘の『守護者』です。今にもその才を発揮し、必ずや『王国災禍』に立ち向かってくれるでしょう」


「……。」


 その信用はどこから出てくるのか。一体自分の何を見たというのか。何を『視た』というのか。この信用に、応えた方が良いのだろうか。自分の微力でこんな大役が果たせるのだろうか。

 烈火が大絶賛を並べる中、銀何の中には不安の渦が巻き起こっていた。


「僕は、銀何君を――銀何を信じます。僕と彼は、初めて会った気がしないのです。彼には、その内に眠る大きな力が有ります。そう、確信しています。だからどうか、銀何を『守護者』とし、王国の運命を預けませんか」


 烈火は、銀何への絶対的な信用を表す。そして、そこまで言うと一息を吸い――、


「――僕は、猛尊 烈火は、この騎士の命に掛けて、極 銀何を推薦します」


 騒めき、響めき。烈火が連ねる言葉に、会議館に居る騎士達が動揺させられていく。鋼の様な空気が一気に焼き尽くされる様な絶景。極 銀何の『守護者』入りは、結論的には確定したも同然だった。



 ………………………………………………………………


「申し訳無い!」


『本部会』が、無事かどうかは兎も角終わり、待合室に入って直ぐに、烈火がそう謝った。


「……あの、事情を詳しく、教えて下さい」


「……。分かりました」


 烈火は乱れかけた息を一度整えて、銀何に説明を始めた。


「――此処、レスター王国は現在、ある災厄に平穏を脅かされている状況なのです」


「その災厄、というのが?」


「ええ。王国領地規模内最高危険度外敵、通称『王国災禍』です。それの正体は未だ明らかになっておりません。生物なのか、物体なのかも……なので、中心城地騎士団のサポート役に属する『結界術師』が、王国の周囲何十キロもの範囲内の魔素(マナ)を解析し続け、『王国災禍』の様子を伺っているという訳です」


「……俺にとっちゃ、『魔法』すら異次元の存在だってのに」


「魔法をご存知無い?」


「はい、でも後でまた教わります。先に、『守護者』についての説明をお願いしたいです」


「承知しました」


 銀何に課せられた条件『守護者』。確か、王国で最も恐れられる『王国災禍』の猛襲から王国を護る任と烈火は言っていた。大まかな事実はそうかもしれないが、具体的な所を聞いていない。


「先程の本部会でも説明しましたが、『守護者』は『王国災禍』への、言わば特攻隊と言う括りにあります。『守護者』の選別は一般市民の中で行い、剣術、魔法、その他の特殊能力等において秀でる素質を持つ者を中心に選びます」


「成程……俺は市民でもない変な存在ですが」


「その通りです。然し、記憶が無い状態と聞いたので、それが戻るまでは王国内に在住して良いかと。それに……『守護者』に値する素質を見つけたら、半ば強制的な連行が必須となるのです。正直僕自身、良い方法とは思えませんが」


「それであの、俺にもその『素質』が?」


「……はい。『特殊能力』に近いと思います。銀何君、今までに習い事は?」


「記憶が戻っていないのでどうとも……でもやっていないと思います」


「僕もそう予想しています、僕も騎士なので特徴を知っています。銀何君の手は、剣を持つ者のそれとは明らかに違う。記憶を失う前に剣を握っていた線は薄いでしょう」


 成程納得できる話だ。銀何は剣を振る様な事はしていなかったと分かる。


「……それを言うなら、烈火さんの手も綺麗じゃ」


「マメ等ができる程不慣れな時期は越えました。これでも『団長』なので」


 これ以上論を並べるのは無駄だと思い知った。


「話を戻しますが、銀何君が持つ『守護者の素質』は、戦闘術等ではないと判断できたので、必然的に何らかの『特殊能力』だと思われます」


「……うーむ」


 銀何は、感嘆符を入れながら悩む。『特殊能力』とは言われても、それが何なのかは銀何自身にも分からない。他でもない、記憶喪失の所為でだ。


「それも近い内に明かしたい訳です、まずは承諾を頂かないといけないのですが」


「…………。」


 承諾、とは『守護者』の任を受けるかどうか、という事だろう。一度疑ったのが重罪とも思える位に烈火は良い人間だ。そして、この王国内が切羽詰まっていた原因も明らかとなった。今、銀何が疑うものは無くなってしまった訳だ。故に――、


「……俺で、大丈夫ですかね」


「僕が一緒に戦います」


「命を懸けて、ですか?」


「非道ながら、はい」


 銀何自身、烈火に多大なる恩を感じていた。外に迫る危険を退けてくれた事、ここに居ていいと言ってくれた事、そして……心強い味方になってくれた事だ。

 恩は返さなければならない。自分の力が小さいから、と言って見過ごせる事じゃない。「銀何には素質がある」と、他でもない烈火が言った。自信も居場所も貰った銀何に、これ以上の好機は無い。



「――微力ながら、受けます。『守護者』として、頑張らせて下さい」



 今、この瞬間、王国の命運が相応しき者達に託され、レスター王国には激震が走る。

疲れ気味なので少し短くなりました。

次回からは動きがあるので、恐らく量は増えると(願う)思います!


「冷えた刃が宿す愛」

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