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R^-FACE【ラフェイス】  作者: D.S
第一章「黒と赤」
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第一章・二話「END2」

お久しぶりです。今回は少しゆっくりめに書いていました。ですが、文量が伴って多くなっている筈なので、前よりボリューミーな『隙無し』を味わって頂けると思います。

では、お楽しみください…

 銀何が目覚めたのは、ベッドの上だった。純白の天井、薄紫の壁、豪華な家具に囲まれた部屋の中。

 銀何は、ベッドの柔らかさと違和感に包まれながら目を覚ましたのだった。


 明らかにそこは、金持ちが住む様な豪邸の一室で、そんな中に自分が寝ていたと思うと、どうにも不安でならない。

 窓の外を見ると大きな庭が広がっており、花々が咲き誇りながら弁を舞わせていた。


 この部屋の出入口に当たる扉を開けると、長い廊下が続いていた。一定の間隔で、テーブルとその上に乗るランプが飾ってある。

 長い、長い廊下。終わりも見えない廊下。異色の装飾がされているからか、心做しか、妖しく見える。


 銀何は、廊下を歩き始める。

 そもそも、だ。思い返してみれば、こんな所で目覚めるのも変梃な話と言うものだ。確かこの前の記憶では……そうだ、馬車に乗っていた。赤髪の美青年、烈火と共に、中心城地に行くのだとか。

 一般人がそんな場所に足を踏み入れるとなれば「自分が行っても居場所は無い」と感じるのも無理ない事だろう。無論、銀何も例外ではない。身が固まる感覚がするのを流し、馬車に乗っていた。


 そして異常事態が起きたのは、馬車が中心城地の領地内に入った所だった。森――とまでは広大とは言えない、林に囲まれた場所。その奥に見えたのが、これがまた大きな城ではないか。城の裏庭、と紹介された、どう見ても豊かな草原に着くと、馬車は急停止。

 烈火が何かを察知した顔で馬車から降り、それから色々眩しくて熱くて――。


 ――それが所謂、『魔法』と言うやつなのか。


 原点に戻る。それなら先ず、この異世界に来た事実こそが、非現実的。現在の銀何には『前世』の記憶が無い。だが、此処が死後の世界――『魔法』こそが摂理となって成る世界なのだと予想できる。エネルギーやテクノロジー等と並べられた理が天地逆転。一体全体、どちらが現実なのだろうか?


 そんなこんなで、殆ど無意識に先の見えない考察を続けていた銀何が、自分の視覚に揺さぶられて気が付く。


 ――変わり映えの無かった廊下の終、そこには階段があった。


 廊下にも同じ事が言えるが、丁寧に皺一つ無く敷かれたカーペットが道となっている。その続き、つまりは一直線上に繋がる様に、階段にもカーペットが敷かれている。段差に敷かれたこちらにも皺は無い。

 感心し終えると、銀何は階段を降りていく。一段一段を、文字通り踏み締めながら降りる。今まで居た場所が何階かも、そも、この場所が何処なのかも分からない。

 ただ、恐らくはあの城の中だろう。根拠は、窓からの景色だ。気絶前に馬車の中から見えていた、あの草原。その広大な庭を、上から見下ろせる位置の様だ。


 銀何は、王国の中枢に匿われたに違いない。



 ………………………………………………………………


 そうして浮いた考察を重ねている内に、段差を降りようと動く足が平行線にぶつかる。どうやら、階段はここで終わりの様だ。

 爪先を床に立てた足が痛む。痛みが引いていくのを感じながら、辺りを見渡す。


 階段を降りた先にあるのは、輝かしく装飾された大広間だった。天井には巨大なシャンデリアが下げられ、床は純白の大理石が象られ、一面を埋め尽くしている。正に「清純」。穢れが微塵も無い、完全無欠の「最後の砦」だ。


 大広間の光輝に当てられて、銀何は暫く気を取られていたが、やっとの事で冷静さを取り戻す。そして、もう一度辺りを見渡し、気付く――。


 大広間から通路に繋がる入口――その近くに、人が立っている。


 銀色の鎧に全身を包み、体型はとても逞しい。烈火が言っていたこの城の騎士だろうか。その腰には、『長剣』が下げられ――?


 ――何故、武器だと分かったんだろう。勘が働いたのか。


 そんな事は後回しだ。まずはコンタクトを取ってみるべきだろう。


「……あ、あの」


 不安気ながらも話し掛けてみる。声を掛けると、騎士は落ち着いた様子でこちらに振り返る。そして全身を震わせると、腰に手を掛ける。


「……。」


 黙り込んでいたかと思えば、重苦しく息を長く吐き、腕に力を入れ、腰の柄を引き抜く。

 鞘から抜かれたのは無論、銀剣。大広間に交う純白黄金の輝きを反射し、白く冷ややかに煌めいている。その刃の滑らかさと言ったら至高と言わざるを得ない。


 そして銀何は、直後に肝を冷やす事になる。


「……貴様、何者だ」


 抜き放たれた銀剣の刃先が、鋭い光を翳しながら銀何の方へ向く。その周囲には、気の所為か否かの境で、冷気が舞っていた。銀何の心身が一気に凍えたのに、時間は要さなかった。



 ――銀何は再び、殺意を向けられた。



 ………………………………………………………………


 凍った殺意を纏う鋼が、金属音を一声上げて銀何を指差す。言う迄も無く、突然の衝撃に銀何は身も心も震わせていた。


「貴様、黒赤軍士か!? 格好は違う様だが、扮装したとて無駄だ。拘束して地下牢行きにしてやる」


「『コウケグンシ』……? って、ちょっと待って下さい! 俺も状況が分かっていなくて……!」


「……問答無用だ。怪しい者には変わり無い、大人しくするのだ!」


「待って! ……うぅ、一体……。」


 場所もよく分からないし、この人物の詳細も不明。知らない状況の中で寝て起きただけの銀何にとっては、絶体絶命だ。


「……そうだ、烈火さん! ここに猛尊 烈火という人は居ませんか!?」


「――。何故今になって団長の名前を挙げる? 今更知らない振りか。小賢しい!」


「烈火さんが団長……? 取り敢えず俺は敵なんかじゃありません! 俺は、多分烈火のお陰で助かったんです! きっとここに運んでくれたのも――」


 銀何は、必死で何とか説得を試みる。自分が置かれている状況を自分なりに整理して説明しようとして、言葉は急に途切れる。



「――彼の言う通りです」


 決して、決して大きくはない冷静な声だったが、その声は清らかに大広間中に響き渡った。第三者の制止によって、争いは一瞬にして収まる。


「烈火さん!」


「無事で何よりです、銀何君。……それにしても、これは一体どう言う状況なのです」


 赤髪の美青年――烈火が銀何の無事を喜び微笑む。だが直後に表情を曇らせ、殺伐とした空気の謎を問う。すると騎士が鎧を強く鳴らす。


「団長! この怪しい者は誰なのです! 敵対者であれば拘束かあるいは――」


「――モクジンさん」


「……。」


 余計に悪化し、声を荒げる騎士を烈火が一言で黙らせる。思わず銀何も緊張してしまう。


「落ち着いて下さい。彼は極 銀何、僕が『最後の四人目』に選び、本城地にお連れしている所に黒赤軍士と出くわしたという訳です」


「本城地に軍士が――!?」


「その点も重要ですが、……先ずは貴方が謝るべきでしょう」


「くっ……」


 烈火は整う顔立ちを険しくしながら、凄まじい剣幕で騎士を言及する。銀何も当てられる程のものだったが、騎士が剣を鞘に収め、銀何に向き直るのに気付いて、向き合う。


「……怪しい者、敵対者だと見誤り、勝手に判断した事、申し訳ない」


「あぁ、いえ……」


 これで何とか、命拾いしただろう。冷気を放つ炎も無事に鎮火したのを見ると、烈火は騎士に言う。


「さあ、後はお任せ下さい。貴方は引き続き護衛を」


「……はっ」


 短くやり取りがされて、騎士は遠くに離れる。後に残ったのは銀何と烈火の二人。


「先程の無礼、本当に申し訳ありません。ここからは僕がご案内致しますので」


「は、はい」


 危な気な一幕がありながらも、銀何は無事に、烈火とその場を後にするのだった。



 ………………………………………………………………


 現在銀何が歩いているのは、先程騎士が居た辺りから通じる廊下だった。天井が高めで、『教会』にいる様な気分にされそうだ。


「あの、烈火さん。さっきの騎士さんが言ってた事で何個気になった事があって」


「その事でしたら、後でお教えしましょう」


「……分かりました」


「すみません」


 銀何は、先程の件の所為か、この場所自体に疑心を持ち始めている。

 烈火は銀何を幾度も助けているが、行動の質の善悪は「性格の善悪」とは異なるものだ。

 また、無論先程の騎士が怪しい。殺意にも思える敵意を剥き出しにし、武器まで見せ付けてきた。危うく拘束される所だった。


 もしもこの場所が権利を悪用する者達の巣窟だとしたら、今までの展開にも納得がいく。

 烈火が『団長』と呼ばれる代表格で、銀何をこの城まで連行した。そして一芝居立てて気絶に追い込む。次に城内へ運んできた後、騎士達が監視役として銀何が勝手な行動をしないよう見張る。その結果が騎士とのやり取りだったという訳だ。


 ここでは銀何がどんな待遇なのか分からないが、可能性としては有り得る。この城に居続ける事の危険性が浮き出て来たのだから。


 ――どうすればいいのか。逃げ出したい。

 脳が悪い考えを出し尽くし、心がそれを怖がり震える。体も心と繋がる様に恐怖を感じ、今にも爆発すると錯覚を起こす。

 恐怖が、疑心が、みるみる膨れていく。例えるなら風船。薄い薄い膜の中の悪意。今にも破れ――、



『どうして、僕は疑うんだ?』



 ――銀何の、その『風船』の中で、声がした。


「……え?」


 思わず虚無の闇から感じた存在に聞き返す。それは『声』として耳が感じた訳では無い。ならば、何処から?


「どうか、されましたか?」


 赤髪の青年が、平穏に水を差された様な顔で言った言葉が、引き金(トリガー)になった。


「――!!」


 銀何は、その場を真っ向から疑って、逃げ出した。


「待って! 銀何君!」


 背中から追う声も無視して、今来た道を逆方向に走る。大広間の正面――通じる廊下の向かい側には大きな扉が有る。恐らく出入口だろう。そこまで全力で走る。

 これが、記憶に次ぐ『喪失』だったかも知れない。

 大広間の中央まで来た。腹が立つ位に広く大きい。銀何を閉じ込める迷宮の様だ。でも関係無い。もうここには縁は無い。もっと気を抜いて生きたい。生きていたい。


 銀何は走る。――出入口の前に立つ殺意にも気付かずに。


 銀何を襲いかけた騎士が、監視から戻ってきた所だった。騎士は銀何の明らかに不審な行動を見ると、すぐさま剣を抜き放つ。そして居合の型に構える。

 銀何は必死で気付かない。視界が狭くなっているのだ。出入口という、ただ一つのゴールを目指し走る。

 だが、その先にあるのは(ゴール)では無く閃光。鮮やかに輝く剣が、軌道を描いて流れる。

 ――一閃が、放たれる。


 型が動き出し、流れる様に押し出された刃が、空気を切って銀何を捉える。

 銀何は、身に迫る殺意を感じて前を向く。意識が気圧されて途切れ、視界が狭い状態から強制的に覚醒させられる。目の前には、覚えのある冷気が飛んで来て――銀何の胴を通った。


 まるでその瞬間は、銀何の身体をすり抜けたかの様で、銀剣が透明に感じた。だが、銀何を横に通った刃の銀色は、いつの間にか鮮やかで黒みを帯びた紅に染まっていて。


「――っは」


 次の瞬間には、銀何の身体から鮮血が弾けた。


 弾けた紅は一秒の間、烈火の眼に映る世界を同じ色に染めた。また一秒経つ頃には、世界は元の色に戻った――と思いたかったのに、騎士が持つ刃も、銀何の全身も、床一面すらも、紅く染まっている。

 その眼は、悲哀の波を表面で揺らしていた。


 銀何は、銀何は、銀何は、倒れ、伏せ、死ぬ。

 何処かで味わった感覚。全身から力が抜けていくというこの感覚。人間が創り出した表現なら幾らでも見て聞いて、自分の中でも考えて想像した事なら幾らでもあるのに、何故、『一生で一度』の筈の感覚が二度目に感じるのだろうか。極 銀何は記憶喪失。突然見覚えも無い世界に立たされて、時と人の流れに押し流されるままに来て、やっと自分の正気が異変に気付いて、流れに逆らってみた結果がこれと言う可哀想な少年だ。どういう事だ。「どうしようもない」とはこの事だ。あまり言った事も実感した事も無いこの言葉だが、やっと意味が分かった気がする。ん? 何故こんな事を考えている? これからどうなるんだ。死ぬんだろ。もう人生を謳歌等するのは不可能だ。逆を取れば疑心を抱く様な空間に二度と居れないで済む訳だが。呆気ない終わりだ。飾る必要性も意味も見出せない死だ。まるで虫が一匹地に落ちたかの様な小ささ。人一人が亡くなった所で、血縁関係でも無ければ知らないで終わる訳だし、メディアで取り上げられた死は酷い時では愚弄されて終わる。銀何という弱者一人の死は誰に影響する? 友人恋人も居ないどころか、血縁関係すら不明。烈火や、斬って殺した本人である騎士? 有り得ないだろう。王国の汚れ仕事の一つとして片付いて終わるのだ。所詮権力の塊何て大した事は無かった。人生に新たな意味を見つけるチャンスだと儚い希望を持ったのが間違いだった。本当に、呆気ない。本当に――退屈だ。


 ――『二機目』極 銀何の最期は、寒かった。







 ###########################################





 ――覚醒。否、潜在意識の再起動。

 身体には全く関係の無い、形の無い意識が眼を開ける。

 極 銀何は終わった。忘れ去られた一度目の死、ジョーカーの凶刃。凍てつく二度目の死、悪意に満ちる騎士の一閃。正に二度も、人の手によって命を奪われた。一言では言い表せない、一生を。

 ……否、其の命には、人生には意味が無い。二度目の最期に嘆き続けた通りだ。


 なのに、何故? 何故、終わらせてくれない。

 もういいだろう。こんな人生、二度在ったとて無駄に終わるのみ。愚かしい? 知るか。極 銀何はここで終わり。語り継がれる事も無く、誰かの人生に握り潰されて踏み躙られて消えるのだ。


『そう簡単には、終われない』


 五月蝿い。死は絶対的な終焉だ。ゴールじゃない。落ちたら出られない大穴だ。天や地に消える事も無い。そこで存在は消える。理のその一切も通じない。


『死は新たな生と成る。清らかに純白に始まる事もあれば、未練によって続く事もある』


 黙れ。それこそ愚かだ。現実を受け止められない程の論外者では無い。例え未練有る終わりでも、受け入れてやる。


『理は時に覆る。生こそが美しい』


 ――。


『生こそが正義。生こそが理。生こそが――』




 ――人そのもの。


『素晴らしい、もう一度やり直さねば』


 ……だから、だから。――誰なんだよ!


『あぁ。僕は――、』




「僕は、君でもあるんだよ」




 ――!?

 何だ、意識が形を得たかの様な感覚がした。辺りは、暗闇だ。何も無い。……は? 『暗闇』? 何で分かるんだよ。終わった筈だろ。もう無い筈だろ!


「やあ、初めまして。極 銀何」


 目も、鼻も、耳も、無い。それどころか、この意識は形を得ない。本当は意識がある事自体おかしい筈なのに。暗闇の中で、仮にも『目覚めてしまった』この意識は、よく聞き慣れた声を感じ取っていた。


「君は、二度終わったね。可哀想に」


 その声は、形も無い意識を包み込む様に届く。嫌悪感しか湧かないので、纏わり付いている感覚が正しいが……『嫌悪感』? 『感覚』?

 ……おかしい、おかしい、おかしい!


「落ち着いて、そして安心してくれ。君は生きられるし、もう既に生に近付けている」


 ……嫌だ、嫌だ。『嫌だ』と感じる事自体が嫌だ。あぁ、それが嫌だ。これでは嫌悪感のループだ。考えを変えてみよう。本当は考える事もできないが。


 潜在意識の中でも、何故か生きている心地がしている。予想にはなるが、『夢』の様なものだろう。

 人間の断片的で深層に眠る記憶が再現されたりする不思議なイメージ。今はそれに類似しているのだろう。実際に身体が無くとも、有る錯覚を起こすのだ。今もそれが『見えている』という訳だ。

 ……それにしても、気持ち悪い。気味が悪い。どういう趣向だ。死後の夢、となれば『走馬灯』が当て嵌るだろうか。ともあれ何れこれにも終わりが来る。この茶番が終われば、やっとの事で人生終了だ。


「考察してくれてる所悪いけど、全部外れだよ」


 夢の中の役者が何かほざいている。外れな訳が無い。しかも思考まで透けているのか。悪趣味だ。


「ごめんね、悪趣味で。言っただろう? 僕は君でもある、って。君が考える事は、手に取る様に……どころか、僕の中にも流れてくるんだよ」


 ……。


「黙っちゃったよ……ま、いっか。そういえば、君にもこの空間は認識できるんだよね? ずっと同じ黒でも飽きるし、僕の姿でも見せておこうか」


 ……嫌々同感してやろう。確かに飽きてきた。死の前、最期の余興だ。飽きさせないでくれ。


 とか思っている内に、暗闇に一筋の光が差す。光は次第に人一人の身体位まで大きくなると、白一色の光に色が付き始め――。


 ――ああ、やっぱり悪趣味だ。


 光が化けた形は、どう見ても極 銀何その者だった。強いて言うなら、原盤(デフォルト)と比べて多少服と髪色が違う。どちらも、黒と赤を混在させたデザインだ。


 今思えば、先程まで感じ取っていた声。それが誰のものか、考えずとも分かる筈だった。

 ……他でもない、極 銀何本人の声となれば。


「繰り返すけど、君が喋れずとも頑張っていた考察は、残念ながら、大外れ。君にはもっともっと、生きてもらう。……それに、もうすぐ時間だし」


 ――は? 冗談だろ?


「ちょっと聞いててね。君は多分、もう一回生きたとて、死にたがりな性格上死んじゃうよね。すーぐ死ぬ。何回も死ぬ。でしょ?」


 ……。


「だから、優しい僕が、君に絶対的なチカラをあげよう」


 …………。


「理解するのは簡単さ。ズバリ、『セーブ』と『ロード』。ゲームとかでよくあったでしょ? 君や僕はすぐクリアして飽きてたし、そもそも使わずに終わったけどさ」


 ………………。


「初めて使うのが人生で、とはね。まあまあ、簡単だよ。過酷な人生を生きる君は、人生を『記憶(セーブ)』したり、『想起(ロード)』したりできる訳、簡単でしょ?」


 ……………………は?


「その方法は簡単。君が生きている内にも、潜在意識は動いている。潜在意識の中に、何かしら強い波動が伝われば『記憶』完了だ。『想起』は勝手に行われる。君が最後に『記憶』した時点まで飛ばされるだけだ」


 …………嘘、だ。


「そうそう、一回の『想起』はとんでもない出鱈目――正に、チートだよね。だから、一回毎にペナルティが付く」


 ……ペナルティ?


「簡単だけど、時に恐ろしいペナルティ。それは、『断片的な記憶の欠片の消去』だ。例えるなら……リンゴとブドウとメロンが目の前にあったとする。そして僕が、目の前の果物の名前を全て言わせるとする。普通なら君は何食わぬ顔で答えきれるだろうけど、一回『想起』が行われて、『メロンの記憶』が消されてしまった場合、君はメロンのみ、答えられないんだ」


 何がペナルティだ。そんな事をして何が楽しいんだ。意味不明、理解不能だ。


「因みに、失われる『記憶の欠片』は毎回ランダムだ。人物だったり、出来事だったり。それによっては、重大なトラブルが発生するかもしれない。見所が増えるというものだね」


 …………狂っている。


「――さて、そろそろ時間だ。ついでに言っておくと、今回だけは僕が勝手に『記憶』してあげたよ。後は、その場所まで『想起』して、新たな道を進むといい。君がどんな一生を見せてくれるのか、楽しみだ」


 ……やめろ、やめろ。嫌だ、もう嫌だ。


 ####やめろ#####いやだ####いやだいやだ####いやだぁぁぁ####################################





 ###########################################

段々と、物語も狂気を纏ってきたと思います。正直…『記憶』と『想起』については、後付けの設定となっています。前に考えていたものよりも、量も質も、『分岐』も変わると思うので、楽しみにしていてください。


「三回目の人生は逃げるなよ」

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