05 スキル
「はい、どうかしましたか?」
「質問いくつか良いか?」
年配の女性はにっこりと笑った。
「はい、もちろんいいですよ。ステータスカードは正しく使っていただくと成長の助けにもなります。是非理解を深めてください」
そういわれて彼はいろいろと質問を始めた。まずは★の数についてだ。
彼女の説明によると、あくまで目安ではあるが、
1:駆け出し~素人
2:そこそこ熟練 一応プロを名乗れる
3:熟練したプロ
4:名人
5:その道では世界有数の達人
ということらしい。
冒険者ギルドで働いている人間の得意分野は、★3つであるものが多く、稀に4つあるものも居るということだった。2つだと厳しいという感じらしい。
彼の場合、斥候としては十分生きていけるが、戦士としてはまだ素人同然だということだ。たしかにその通りではあるが、目の前に突きつけられると少しショックではある。
もう少し真面目に身体を鍛えるか…。たしかにこういう風に実際の状況が見れるのであれば、励みになるかもしれない。マートはそう考えた。
★が6つ以上あることはあるのかと聞いてみたが、彼女は聞いたことが無いという話だった。素質である☆は他人が見れないので自称する者は居るが、確かめようが無いのでわからないということだった。
素養の☆の数を超えて成長することがあるのかと聞いてみたが、それは稀ではあるが無いわけではなく、逆に、☆がたくさんあっても、努力しなければダメらしい。素養はあくまで適性でしかないということだった。
成長の助けになるという彼女の言葉についても聞いてみる。すると、そのスキルを意識してその行動を反復練習することによって、スキルは上がりやすくなるのだという。逆に漫然と行っていてもスキルは上がりにくい傾向があるとのことだった。そして、もちろん☆があるほうが上がりやすいので、それを意識したほうが一般的には強くなれるということだった。
マートは魔法について、素養がある場合、どうやって習得したらよいのか聞いてみた。
元々はあまりその気はなかったはずだが、さすがに☆6つと出れば興味もわくというものだろう。
彼女の説明でいうと、魔法というのは真理魔法、神聖魔法、精霊魔法の3つがあるのだという。
まず、真理魔法というのは、魔術師ギルドが主に管理しており、魔法といえば、大抵これを指す事が多いという事だった。
この系統を修行するには、個人か或いは魔術学院で魔術を習い、魔法の仕組みや呪文、魔法陣といったものを勉強する必要があり、初歩の光呪文を習得するのにおおよそ1年から2年かかるのだそうだ。そこから、攻撃魔法である魔法の矢呪文や防御魔法である盾呪文を習う必要があるらしい。
神聖魔法は、教会に修道士として奉仕をする必要があるらしい。こちらも真理魔法と同じように1年から2年の修行をし、そのあと、秘儀として怪我を治す治癒呪文や毒を治療する解毒呪文といった神聖呪文を習うのが定番だということだった。
最後の精霊魔法は、森に住むドルイドとよばれる祭司に仕え、精霊との交信について学ぶ必要があるのだという。こちらは、真理魔法や神聖魔法とちがってこのように修行すれば良いという決まりがあるわけでもなく、精霊との相性であるので、素養が5つあって、10年ドルイドと共に森で過ごしても、精霊魔法が習得できなかったという話もあるらしい。そして、精霊と交信できれば、その精霊に願い事をすることによって様々な事ができるらしい。
それを聞いて、マートはバッテンの森に住む1人の老人を思い出した。彼に頼まれて薬草を探したりといったことは1度や2度ではない。彼に聞けば、ドルイドの1人や2人紹介してくれるかもしれない。
「スキルというのは、どこまでの範囲をいうんだい?たとえば、俺は音楽スキルというのがあり、星が2つだ。たしかに1年ほど前まで旅の一座にいて、楽器はそこそこ弾けるが、歌はそれほど上手なわけでもないし、旅の吟遊詩人が唄うような叙事詩もしらない」
「スキルというのは、明確な区切りがありません。楽器や歌などを含め、ダンスなどにも恩恵があるでしょう。スキルを意識すれば、歌も上手に歌えるとおもいますよ」
そういう説明を聞いて、マートはとりあえず納得した。
「わかったよ。ステータスカードはOKだ。あとはカタツムリの買取を頼むぜ」
マートはそう言って個室を出、採取クエストの精算をすませると、冒険者ギルドを後にした。
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