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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第3章 バッテンの森へ
32/411

31 猿の群れとの戦い

2020.9.14 剣技 → 闘技 に変更しました

    

 ランペイジエイプの群れとの戦いは、小さいほうの群れの討伐が終わるまでは一方的と思われた。

 

 マートが群れを釣り出すのにも、彼は毒を使っていたので途中で数頭は倒すことが出来たし、彼を追いかけてきた最初の集団が3人の待つところに現れたときには、予定通り待ち構えたジュディの魔法の矢で、先頭の4頭を吹っ飛ばしたりということを繰り返し、最初の群れは約半数が倒れ、群れのボスと思われる一回り身体の大きいオスが倒れると、みな散り散りとなりほぼ壊滅状態となった。

 

 ただ、そこから、大きな群れに合流した連中が居たようで、大きな群れは120頭ほどになっており、マートたちのやり方を学習もしていた。一頭をマートが釣り出すと、彼らのうちの大半が一気にマートを追いかけてきたのだ。

 

 「さすがにこれは、ヤバイだろ。ちょっと長めに誘導するか」

 

 マートは飛行スキルを使ってランペイジエイプですら跳んで渡れない木や時間のかかる急斜面を経由することで、ランペイジエイプの集団を細長いものにしてから、アニスたちの居るところに連れ出した。彼の姿を見て、ジュディとアニスは援護魔法をかける。


 『(シールド)

 『防護(プロテクション)


 「遅いよ、何やってたんだい。(キャット)

 

 「悪い。待ち構えてて、いっぺんに来たから、距離を走ってちょっと減らしてきた」

 

 「無理するんじゃないよ。さぁ、殲滅だ。ジュディ頑張りな」

 

 『魔法の矢(マジックミサイル)

 

 マートが幾ら追いかけてくる集団を細く長くしてきたとはいえ、先頭グループだけでも30頭は超えている。まずはジュディの魔法の矢、その後、突っ込んでくる連中に足止めを兼ねて、シェリーとアニスが突っ込んでゆく。何かの闘技なのだろう、その線上に居たランペイジエイプが10頭以上その衝撃波のようなもので、うしろに吹っ飛んだ。さらに彼女らは、剣を振り回して円を描く。彼女たちの剣の腕はかなりなもので、さらに数頭のランペイジエイプが地に倒れた。

 

 「シェリーの右から5頭、左手の木に登ってる奴が2頭。姐さんの左からは3頭、右から5頭」

 

 マートは、倒木の上という位置から、前衛の2人の隙を狙っていそうな敵の様子を見て伝えつつ、矢でさらに高い木に登ってジュディと彼の居るところに飛び込もうとしているやつを撃つ。

 

 『魔法の矢(マジックミサイル)

 

 ジュディは見えるランペイジエイプに向かって、再詠唱時間(リキャストタイム)を待って連射している。彼女の魔法の威力が高いのか、2発当たれば、ほぼ活動できなくなっているようだ。

 

 「次の集団が追いついてきた。約40頭」

 

 最初の集団の半分ほどを片付けたあたりで、次の集団が見えたマートがそう叫んだ。

 

 「くっ、たしかにきついね。でもまだ余裕があるさね。ジュディ、ボスが見えたらそっちに集中だよ」

 

 「はい!」

 

 ランペイジエイプの次の集団が到着したところで、彼らは戦い方を変えてきた。木に頼るのではなく、一頭が他の一頭の足場として、跳ね上げることで、跳躍距離を稼ぎ、数匹が一気にジュディとマートの居るところに飛び込んでこようとしたのだ。

 

 「ちっ、シェリー、自由にやらせるんじゃない。つっこみな。ここのカバーは私がやる、(キャット)、弓がいい感じだよ。サポートしな」

 

 シェリーは、血脂で汚れた剣を拭いながらしっかりと持ち直し、声を上げて、ランペイジエイプの集団に突っ込んでいった。彼女の突撃に対処しようとした数頭は、彼女の突撃に吹っ飛ばされていく。マートは、無言で毒針スキル、毒呪文も使いながら、矢で足場役や、アニスの目をくぐって近づいたランペイジエイプを処理していった。

 

 おおよそ、1時間程戦いは続いただろうか、マートたち4人の息は上がり、肩で息をしつつもなんとか凌ぎきった。ランペイジエイプの群れは、後退を始めた。

 

 「どうする?追いかけるか?」

 

 「そうだね、このまま、泉のあたりから追い出さないと、意味が無いだろう。みんな、もう一息、いけるかい?」

 

 4人は、後退しはじめたランペイジエイプを追うようにして前進し、なんとか泉の近辺からランペイジエイプの群れを追い払ったのだった。

 

-----

 

 「水の音がし始めた。もうすぐ泉にたどり着くはずだ」

 

 マートはそう言って、すこし伸びあがって周りを見回した。ランペイジエイプの姿はかなりまばらになり、前方すこし右側に明るい場所がみえた。

 

 「あそこだ」

 

 彼は駆け足になって、あかるくなっている場所を目指す。そこは、全体を覆う木の枝の天井に、直径2m程の穴がぽっかりと空き、そこだけ青空が見えており、泉の水は、太陽の光を受けて、どこまでも澄み、蒼く輝いていた。

 

 「ああ、綺麗だ」

 

 マートは思わず感嘆の声をあげ、その後ろの3人も泉の美しさに、「おお」と声を出したきり、言葉を失っていた。

 

 ・・・・・・(あり)・・・(がとう)・・・(ひとの)・・・(こよ)

 

 マートの前に長く豊かな銀の髪を腰まで垂らした、グラマラスな裸の女性が姿を現し、ゆっくりと彼に近づくと、耳元でそう告げた。白い肌に赤い唇、そして瞳の蒼が泉の色と似ていた。彼は周りの3人をみたが、彼女達には、その女性の姿はみえていないようだった。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 各々が好き勝手に或いは行き当たりばったりに戦うのではなく、事前に打ち合わせをして連携して戦うのが良いですね。 なろう作品の大半が、パーティ仲間が主人公の単なる引き立て役と化していて、連携も…
[一言] 裸のメーテルをイメージした
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