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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第3章 バッテンの森へ
31/411

30 猿の群れ


2020.11.24 訂正です。

その岩の上にジャンプ → その倒木の上にジャンプ


   

 彼らは老人の庭で一泊し、翌日には彼に教えてもらった泉に向かうことにした。

 

 相変わらず下生えは濃かったが、3日目ともなると、シェリーのほうは基礎体力があるおかげか、少しはその森での移動に馴染み始めており、全体的にもすこし移動する速度は上がっていた。

 

 老人の話では、泉まで半日ほどという話であったが、1時間程歩くと、マートには猿の遠吠えのような声が聞こえ始めた。

 

「もう猿みたいな鳴き声が増えてきた。思ったより早いな。爺さんの言ってたランペイジエイプだろう。ジュディ、シェリーは戦ったことはないか?姐さんは?」

 

「ううん、無い。大きな猿?」

 

 ジュディと一緒にシェリーも首を振る。

 

「私はあるけど、はぐれたやつだけだね。猿系だと、群れると厄介そうだね」

 

 アニスは、周囲を警戒しながら、そう答えた。

 

「俺も、群れを相手にしたことはないが、聞いた話だとかなり狡賢いやつで、2匹、3匹と連携して攻撃してくるから注意をしないといけないらしい。単体だと狼と同じぐらいの強さでしかないが、木の枝を使って上空から急に飛び込んできたりして、かなり動きがトリッキーなのと、木の上や遠くから石だけじゃなく砂を投げて目つぶしをしてくることもあるらしい。できれば戦いたくない相手だが、泉を占拠してるっていうのなら、仕方ない」

 

「どれぐらい居るのかねぇ」

 

「ああ、予想より群れのテリトリーが拡がってそうだから、かなりいるかもしれない。ちょっと一人で先に見に行って来るよ。気をつけないといつの間にか囲まれてるとか、別の群れが居て逃げ道がなくなったとかになると悲惨だからな」

 

「わかったよ、じゃぁ、3人は連携を確認しておこうかね。ジュディは、私やシェリーと戦っている相手を魔法で撃つとき、合図が……」

 

 相談している3人を残して、マートはするすると木に登り、遠目からランペイジエイプの群れを眺めたが、そこから見たところでは七十頭は居るように思われた。

 

“こいつは、かなり多そうだ。すこしずつ削るにしても骨が折れそうだぞ”

 

 マートはそう考えたが、とりあえず他の群れがいないか確認しようと思い、その群れは迂回して、泉のあたりに向かうと、先ほどとはまた別の群れがいる事に気が付いた。

 

 その群れは、百頭近くのランペイジエイプで構成されていて、最初の群れとは、ある程度距離を保っており、お互い警戒しあっているように思われた。

 

 さらに、周囲を見て周り、この二つの群れの他には、数頭のはぐれ程度である事を確認して、マートはとりあえず3人のところに帰った。

 

「ランペイジエイプの群れは2つ、一つは百頭、もう一つは七十頭ぐらいのグループだ。この種だとこんな近くに群れ同士が近寄ることはないはずだけど、泉がそれほど魅力的ってことなんだろうな」

 

「合わせて百七十ね。さてどうしようかねぇ」

 

 マートの話を聞いて、アニスが少し考えるようなしぐさをした。

 

 ジュディとシェリーはどうするか判断がつかない様子で顔を見合わせている。

 

「一つやり方としては、群れ同士を戦わせるというのが試せるとは思う。さっき言ったように、これほどの距離で近寄ってる群れだからな、餌場とかはかなりシビアだろう。ボスの糞とかをお互いの餌場とかにばらまくだけで、すぐ抗争になると思うぜ。そうした後に襲撃すれば安全に狩れるんじゃねぇかな」

 

「なるほどね、たしかにそれは賢いやり方だ。だけどイマイチまどろっこしいね。(キャット)、あんたは言ってくれてたじゃないか。猿一匹は狼程度の強さだってさ。もし、そうなら、シェリーにしろ私にしろ、五十頭ぐらいなら、広いところで囲まれても相手できると思うよ。砂とかの目潰しと、お互いの距離が離れないようにさえ気をつければ大丈夫じゃないかねぇ」

 

「ああ、姐さんがそう言うのなら、俺に異論はねぇよ。まぁ、安全を考えるのなら同時じゃなく、片方の群れから先にやっつけるほうがいいかなって位かな」

 

「ああ、そうだね。小さいほうから片付けようか。じゃぁ、戦いやすそうなところはどこだい。どうせ、(キャット)のことだから、うまく釣り出してくる段取りも含めてみてきてくれたんだろ?」

 

「案内するよ。ジュディとシェリーもそれでいいか?」

 

 ふたりは、よくわからないまま、頷いた。

 

----- 

 

 マートが案内したのは、倒木があって空がすこし見えているところだった。倒木の上はすこし安定性が悪いながらも登ることが出来たので、高さが確保でき、周りの枝からは、その倒木の上にジャンプ出来そうではあったが、それは、マート自身が木に登って枝を刈ることによって、ある程度飛び込まれるルートを限定できそうだった。

 

「前衛の2人が持ちこたえることが前提にできるなら、こういう所が一番良いんじゃねぇかな。飛び込まれても、お嬢の安全は確保できるだろ。その分、姐さんとシェリーはきついかもだけどな。似たようなところがあと1か所あるから、次の群れも同じような戦い方ができる」

 

「ああ、いいだろう。シェリー、私とあんたはこの倒木の回りで戦うんだよ。間違っても10歩以上はなれちゃダメだ。(キャット)はランペイジエイプの群れを釣ってきた後は、ジュディの近くを離れるんじゃないよ。余裕があるときは弓を使っててもいいけど、危ないと思ったら剣でジュディを守るんだ。そしてジュディ、あんたが主戦力だ。絶対に3人であんたを守る。周りは気にせず、魔法を撃ちまくりな。優先するのは、木に登ってこっちに飛びかかろうとしてる奴、次は私達から離れてる奴だ。いいね。私やシェリーと揉みあいになってる敵に魔法を撃つときには、さっき言ってたような合図で確認すること。みんなわかったかい?」

 

読んでいただいてありがとうございます。

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