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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第3章 バッテンの森へ
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28 森の老人

2020.10.24 サラマンダー → サラマンドラ

 バッテンの森3日目。森も深くなって日の差し込む量が減り、下生えが濃くなると、こういうところの経験が少ないジュディやシェリーたちは口数も少なくなり、移動する速度も目に見えて落ちていた。

 

(キャット)、あんたの言う老人が居るところはあとどれぐらいかかりそうなんだい?」

 

 息を弾ませつつ、アニスが尋ねた。

 

「ああ、もうすぐ着くさ。さっき、爺さんの飼っているフクロウが様子を見に来てたしな」

 

 そう話している彼ら4人の視界が急に開けた。

 

「おーい、爺さん!」

 

 マートは、ぽっかりと鬱蒼とした木々がなくなって、おおよそ直径30mほどの円形の庭の真ん中に建つ小さな小屋に向かって声をかけた。

 

「呼んだかね?」

 

 急に、4人のすぐそばでそれに応えるしわがれた男性の声がした。皆が慌ててそちらの方を向くと、いままで、そこには誰も居なかったはずなのに、そこに、灰色のローブを着た老人が立っていた。

 

「くくく、相変わらずだな。爺さん、元気にしてたか?」

 

 マートはその老人に近寄って行くと、親密そうにハグをした。

 

(キャット)、久しぶりじゃの。なにをしておったのじゃ」

 

「ああ、少し事情があってな。それより、紹介するぜ。こっちは、えっと…爺さん。名前は教えてくれないんだ。仕方ないから、俺はずっと爺さんって呼んでる。森の主みたいなもんだ」

 

 そういって、灰色のローブを着た老人と握手しながら、他の3人に紹介した。そして、マートが連れてきた3人の女性を老人に紹介する。

 

「えっと、真ん中の長い髪の金髪で、にこにこしてるのが、このあたりの都市や街を治めるアレクサンダー伯爵家の次女でジュディ、そして、彼女の右側に立っている、胸が大きくて赤毛の女が彼女の護衛騎士であるシェリー。左側で剣を構えてる、背が高くて濃いブラウンの髪の姐さんが、俺の先輩で、いつも世話になっているアニスだ」

 

「おう、よろしくの」

「よろしくね。えっと、おじいちゃん?」

「そうじゃの、それでよいぞ」

「初めまして」

「よろしく」

 

 4人はお互いににこやかに挨拶を交わした。

 

(キャット)が誰かを連れてくるとは珍しいの。それも美人ばかり。茶でもふるまってやろう。こちらにおいで」

 

 老人は、小さな小屋のすぐ脇にあるテーブルに彼女らをいざなうと、席を勧めてカップを出すと、テーブルの上に置いてあったポットからお茶を注いだ。

 

「森を抜けて来たようじゃの。疲れたじゃろう。香りを楽しんでから、ゆっくりと飲むと少しはましになるじゃろう」

 

「ありがとうございます」

 

 ジュディが飲もうとするのを、シェリーが止め、自分が先に飲んだ。

 

「ふふふ、毒となるようなものは入っておらんが、好きにすれば良い。で、(キャット)、用件はなんじゃ?」

 

「ああ、樹齢100年を超えたヤドリギの枝、リュンクスの柘榴石、そして、サラマンドラの髭。こっちのお嬢がこの3つを探してる。爺さん、何か手がかりはねぇか?」

 

「ふむ、何か作るのか?」

 

 そういって、老人はジュディの顔をまじまじと見た。

 

「はい。私の師匠が、私の杖を作るのに、これらの3つが相性が良いだろうといわれましたので」

 

「なるほどのう。ヤドリギで100年を超えるものとなると...。(キャット)よ、ここから北西にある泉はわかるか?」

 

「北西?いや、どれぐらいの距離だい?」

 

「普通に歩けば半日はかかるであろうが、そこの泉の傍にはひときわ大きな樫の木が生えておるので、木々の梢まで登って見渡せば目印になるであろう。そこのヤドリギであれば、そなたたちの望みに適うであろう」

 

「へぇ、さすが爺さんだ。よく知ってるな」

 

「ただし、問題が2つある。まず、そのあたりに、ランペイジエイプという猿の群れが住み着いており、それをなんとかせねば近寄れないというのが1つ。これは、そなたらの知恵か力か、良い方法をかんがえるがよい」

 

「そのランペイジエイプというのは、殺しても良いの?」

 

「弱肉強食は自然界の掟じゃ。ただ、できれば必要以上に殺そうとするのは避けておくれ。あと、森の中でおおきな火をつかうのはダメじゃ。焚火ぐらいならよいがの」

 

「わかったわ。あと一つは?」

 

「もう一つは、その枝が欲しいというのであれば、その泉の精に承諾を貰う必要があるという事じゃ。これについては、そなたらの中で精霊魔法の心得があるものはおらぬか?(キャット)、実はわしはそなたにその素養があるとかんがえておるのじゃが」

 

 ジュディたちは首を振ったが、そう尋ねられてマートは頷いた。

 

「ああ、爺さん、よくわかったな。この間ステータスカードを買ったんだが、精霊のスキルは確かにあった。まだ時間がなくて、なにも出来てないんだけどな。そのうち、話を聞きに来ようと思ってたんだ」

 

「ちなみに素養はどれぐらいあるのじゃ。☆4つはあるであろう?」

 

「ああ」

 

 マートがそう応えると、その老人は顔を綻ばせた。

 

「ならば、請えば許されるだろう。ジュディ殿と申されたな。彼にすこし精霊魔法の手ほどきをしたい。なに、1日ほどですむじゃろう。そうすれば、ヤドリギは簡単に入手できる。待ってもらえるかの?」

 

 ジュディは、シェリー、アニスと顔を見合わせたが、すぐに頷いた。

 

「もちろん、かまいません。あれほど探しても見つからなかったヤドリギが、入手できそうだなんて夢のようです」

 

「100年を超えるヤドリギなど、普通の森には存在せぬからのう。精霊が愛しておらなければ、それほどの寿命は得られぬ」

 

「精霊魔法の手ほどきができるなんて、爺さんはドルイドだったのか?」

 

「ああ、そうじゃよ。今更何を言っておるんじゃ」

 

 老人は呆れたようにそう答えた。


読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ドルイド修行きたあああああああああああ [一言] 「ちなみに素養はどれぐらいあるのじゃ。☆4つはあるであろう?」 「ああ。6つだ」 「!!!!w4おいつあs;じ;あじぇrtp;えjg;あふ…
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