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猫《キャット》と呼ばれた男 【書籍化】  作者: れもん
第26章 再び魔龍王城へ

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202 エルフの長老

 

「私の20代ほど前の長老の話ですので、少なくとも千年以上、場合によっては二千年ほど前の話になります。当時も我らは今と同じような暮らしをしておりましたが、この森の東側に人族の王国がありました。その王国の名前はピール王国といったそうです」


 ピール王国という名前はマートも聞き覚えが有った。魔剣が作られたのがピール王国歴で394年。以前一般棟でウィスキーと一緒にマジックバッグに入っていた日記がそれよりさらに73年前にあたる321年の日付だったはずだ。それと同じ国のことだろうか。

 

「その頃、ピール王国に所属する魔法使いとその20代ほど前の長老とは親交がありました。その魔法使いが当時の長老に秘密裏に魔道装置を預かってほしいと依頼をしたそうです」


 その時、ピール王国の魔法使いは、長老に、預けた魔道装置は人族が滅びぬための安全装置だと説明し、人族やエルフ族に対しても極力秘密にして欲しいと依頼した。長老は、その預かった魔道装置を森の中にある地下洞窟に隠し、代々の長老だけにその場所を伝承してきたのだという。その場所には何か仕掛けがあるのかとマートが尋ねると、その地下洞窟の入口にはエルフの里と同様に隠蔽の儀式が施されておりその入口は長老にしか見えないはずだということだった。

 

 長距離通信用の魔道具を使うための魔道装置を探しに来ただけのはずが、見つかったのは人族が亡びないための安全装置とは、また大層な話だ。一体どういうことなのだろう。人族が滅亡しそうになったらその装置から願いを叶える魔人でも登場するのだろうか。

 

「その魔道装置というのは、触れると何かが作動したりとかあるのか?」


 エルフの長老は首を振った。

 

「いえ、何代前かわかりませんが、伝承に懐疑的だった長老が触れたことがあったようです。ですが、魔道装置に触れても、何も起こらなかったと聞いています。私達エルフは魔道装置や魔道具といったものにさほど詳しくありませんし、私も以前その地下洞窟に足をふみいれた際に見たのは一つの魔道装置から金色のきらきらとした光がごく微量たち昇っていたのを見ただけです」


 マートとニーナは顔を見合わせ、エルフの長老にその魔道装置が隠されたという地下洞窟に案内してもらうことにしたのだった。

 

-----


 案内してもらう途中、エルフの長老にはこの森についても色々と話をしてくれた。この森自体はかなり広く、北は外海、南は内海に至る範囲を覆っているのだという。そして、この森のほぼ中心は彼らの暮らす里。生命の樹がある。そして、ここから東側にはピール王国のかつての街であった遺跡があるのだという。マートが場所を聞くと、そこはマートがここに転移するのに使った魔法のドアノブや、倉庫棟からの転移装置の出口のある場所を含む一帯らしかった。この街に住んでいたピール王国の人々は彼らに魔道装置を預けてからしばらくして、その街を放棄し、南のほうに移動していったらしい。その後、エルフたちと人族との交流は途絶え、この森を訪れるのは、遺跡や生命の樹の伝説を聞き一攫千金を夢見てやってきた冒険者ぐらいになったという事だった。

 

 地下洞窟の入口は、幻覚呪文に似た効果のあるエルフの儀式によって入口が覆い隠されていた。生命の樹の精霊であるアニータによると長老たちは光の精霊に何らかの代償として貢物を捧げることにより、これらの効果を得ているということだった。長老の案内でマートとニーナはその入口を潜り抜け、地下洞窟の中に入って行った。そこは、あまり広い場所ではなく、10メートル四方ぐらいだろうか。所々きらきらと何かが天井で青白い光を放っていた。そして、そのほぼ真ん中に、1辺1メートルほどの立方体の不思議な金属製の箱が3つ並んでいた。以前、ステータスカードを作成・編集することのできる魔道装置を見つけたことがあったが、外見はそれによく似ている。3つ並んだその箱の内、真ん中の箱からは、エルフの長老が言っていたように金色のキラキラとした光が幽かに立ち昇っている。

 

“魔剣、判るか?”


“うむ、識別しよう。まずは真ん中で良いか?”


 魔剣は金色のキラキラとした光が幽かに立ち昇る魔道装置を識別した。


“ああ、判る……判るとも。これが、そうなのか。マート、これは、警告装置じゃ。このようなものがあるというのは予想しておった。こんなところにあったとは”


“警告装置?魔剣、知ってるのか?”


“いや、見るのは初めてじゃ。だがこのようなものがあるのではと想像しておった。ステータスカードに仕込まれた情報収集の仕組みから想像するとな。そなたは聖剣の予言について知っておるな”


“ああ、邪悪な龍が目覚めるとかどうとかいうやつだな”

 

“ステータスカードというものを通じて情報を集め、それによって邪悪な龍の誕生を知り、その情報を聖剣に伝える。それが『警告装置』という名前の魔道装置ができる事じゃ。聖剣の予言というのは、これを基にしておったわけじゃ。詳しくは分らぬがこの魔道装置は、ステータスカードから集まる遠距離通信の情報を集積し、警告に値する情報を判断して、聖剣に伝えるものじゃ”




読んで頂いてありがとうございます。


誤字訂正ありがとうございます。いつも助かっています。

評価ポイント、感想などもいただけるとうれしいです。よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 聖剣の予言、神の言葉とか予知とか超能力的なもっとフワフワしたのかと思ってたら、想像以上に現実的で自然な設定でてきた…こういうの好きだわ〜
[一言] 邪悪な龍はステータスカードを持ってる訳だ。なら、ドラゴンの前世記憶者の怪しさ満点だなぁ。
[良い点] え、なにそれおもろ
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