104 討伐訓練のガイド依頼
昨日昼にふと見ると、ポイント数が急増していて、なんとハイファンタジー〔ファンタジー〕の日別部門で91位、夜は71位を頂いていました。すごく嬉しいです。ありがとうございます。たまたまですが、一つ上に昨日漫画を読んでいた風来山さんの「おっさん冒険者ケインの善行」とか、前後に見覚えのあるタイトルがあり、余計に、わぁっ❤と思ってしまいました。調子に乗って、明日も更新入れて見ます。
文章評価は4.7あたりをキープできていたのが4.5まで落ちていたので、そちらも気にしつつ、より面白くなるよう、頑張って行きたいと思います。
翌日、クララの伝言を受けてマートは再びアレクサンダー伯のジョンソン城に登城した。
城では、警備の衛兵たちも遅くまで騒いでいたのだろう少しのんびりした雰囲気だった。マートは昨日の受勲で少しは有名になったようで、エミリア伯爵に呼ばれていると告げると、疑われたり、邪魔されたりということもなく城の客間に通された。
しばらく、マートが待っていると、そこにエミリア伯爵が入ってきた。昨日と同じように男装ではあるが、式典で着ていたほど華美なものではなく、シェリーとおなじように騎士服だ。彼女の後ろには、小柄ではあるが、同じような騎士服の女性が1人つき従っている。
「マート殿、よく来てくれた」
「いえ、お手数をおかけしました」
そう言って、マートは礼をした。
「どうぞ、座ってくれ。私は貴族ではあるが、それより、武人でな。あまり形式ばった話は好きではない。ストレートに話して欲しい。口調も普段のものでよいぞ。それのほうが私もそなたも話しやすいだろう」
そう言って、エミリア伯爵は先にさっさと座った。横で女性がちょこっと礼をして同じく座る。
「では、失礼します」
マートも礼を返して座った。
「もっと楽な口調で良いと言っているだろう」
マートは、少し考えたが、まぁ良いかとそれに乗る事にした。
「ああ、わかった。これでいいか?」
「ああ、それが良い。知っていると思うが、私はエミリア・ブレイン伯爵。ワイズ聖王国の第二騎士団 団長を務めている。こっちは私の補佐官の1人でメーブという」
横の背の低い女性が軽く会釈をした。マートも礼を返す。
「なかなか良い男ではないか。ハリエット夫人に首っ丈だという話は本当か?」
エミリア伯爵は、軽く足を組み、少しにやにやしながら、椅子にかるくもたれかかった。
「そういうのも楽しそうだ」
早速その話かとマートは思わず苦笑しながら答える。
「ふふん、余裕だな。そうか、このタイミングで来たということは、違う可能性もあるのか」
「ん?」
今回の呼び出しはクララに聞いたのだが、この伯爵はジュディにしか伝言してなかったのか。もしそうであれば、“今日来てくれたということは”という言い方で何を匂わせたかったのかは想像できなくもないが、別にそれに反応する必要もないだろう。とぼけた顔をしていると、伯爵は面白くなかったのかニヤニヤ笑いをやめた。
「まぁ良い。では、用件に入るとしよう。実はな、近く騎士団から腕の立つのを何人か選抜して、特別訓練することになった。それも正規の訓練ではなく、潜入訓練だ。リリーの街の東側あたりでオークやオーガが出没すると聞いている。ウィシャート渓谷やハウエル丘陵と呼ばれる地域だな。それも連中は西の山脈を越えてなのだという」
「ということは、そのオークやオーガが越えてくるルートを使って、西の山脈の向こう側に行けるはずであろう?特別訓練としてそのルートを越えたいのだ。そなたにその道案内を頼みたい」
「この季節に?」
マートはとても無理だというように首を振った。
「ああ、騎士たちは1週間後には到着するだろう。来年の年明けには王都に戻りたい」
「都合はそうかもしれないが、普通の人間に山越えは無理だ」
「騎士団から選抜したメンバーだぞ。普通の人間ではない」
「まだ、夏なら可能性はあるかもしれないが、これからは雪と氷に閉ざされる時期だ。俺も、ウィシャート渓谷のオークを倒した事はあるが、季節は初夏だった。たぶんオークやオーガですら山越えするのは雪が解けてからなのだ。この季節に行くのは自殺行為だ」
「ふむ……」
エミリア伯爵はちらっとメーブとか言う補佐官のほうを見た。彼女はかすかに頷いた。彼は何か試されていたようだ。
「なるほど、やはり無理か。訓練には丁度良いと思ったんだがな。では、もう一つの案だ。伯爵領の南西部、ウィードの街から南方面にはまだ蛮族が多いと聞く。オーガナイトやオークウォーリヤーを見つけて、対戦経験を積ませたい」
こっちが本命の依頼か。しかし、何のつもりなのだろう。わざわざ俺を試すようなことはないはずだがと思いながら、マートは普通に答える。
「ああ、ウィードの街から南方面は冒険者もあまり行かないからな。そのあたりはたっぷり居そうだ」
「ふむ、では、それのガイドと、食料などのポーターの調整を頼みたい」
「参加メンバーと期間は?」
「騎士3名、あとは、私とメーブ、あとは神聖魔法の使い手が1人といったところだな。期間はおよそ1ヶ月」
えらく人数は少ないが、どういう狙いなのだろう。騎士たちは少数で戦う冒険者とは違う。蛮族との戦闘訓練というのは意義があるのだろうか?それも、伯爵様が行くというのなら、どういう感じにしたいのか詳しく確認しておく必要もあるなとマートは考えた。
「使用人や召使を連れて行く予定か?」
「そうだな、身の回りの世話をするのに5人か。あとは食事の用意や御者などに必要な分はそなたに任せる」
「そうなると結構かかりそうだ」
「そんなにかかるか?」
「詳細は詰めないとだめだが、まず夜営等も考えて俺の他に冒険者を3人程雇う必要がでてくる。使用人や召使を護衛しないといけないからな。それに、1ヶ月間に20人程度の食事の材料、使用人や召使も運ぶとなると馬車がおそらく4台ぐらいは必要になる。それでも食事は騎士団の糧食程度だろう。馬車が4台ということは御者も要るし、料理人を兼ねる下働きも必要になってくる。それ用に6人ぐらいの人を集めないといけない。いろいろ考えると、金貨200枚は少なくとも必要ってことになるだろう。食事のグレードを上げるとなると、さらに金額が必要になる。他にも考えないといけないかもしれないので、計算する時間が欲しい」
マートは必死に考えてそう答えた。たくさんの人数を護衛する場合の経費なんてどうやって計算すれば良いのだ?
「ふむ、半分の金貨100枚となるとどうなる?」
伯爵は重ねてそう尋ねた。
「使用人や召使は無し。各自荷物は自分で運び、洗濯なども自分たちですることになる。テントは女性用に一つだけ。夜営も交代という感じだろうな」
マートはこの間のシェリーたちと一緒に行ったラシュピー帝国への調査旅行を思い出した。あれと同じようなパターンなら100金貨でかなり余裕があるだろう。自分一人ではやはり不便なので、もう一人ほしい。経験のあるアレクシアの都合がつけば良いのだが…と気楽に考えた。
「ふむ、わかった。戦の時と同じようなものだろう。では、それで頼んだぞ」
「判った。何日に出発したいんだ?」
「10日後、ここに集まって翌日出発でよいか?」
「わかった、じゃあ、準備してくる」
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