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未来の子供たち  作者: Naoko
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3. 惑星ラーウス

 ブンッという音でヨルクは目覚めた。そしてヌンのベッドに横たわっているのだと分かった。


 辺りは薄暗く、操縦パネルの緑の小さなランプが着いたり消えたりしている。

その緑の灯は、ヌンの息遣いのようなもので、かえって静けさを引き立たせる。


「なんだ夢を見ていたのか」とヨルクは思った。

「変な夢だった」と思いながら寝返りをうつ。

すると誰かが自分を見ているような気がする。かなり大勢のような・・・


「うわぁー!」

 と、ヨルクは叫び飛び起きた。

 なんと植物の苗が床を埋め尽くしており、ヨルクの方に向きを揃えている。


「これは何だ⁉︎」

 ヨルクは大声を上げた。ヌンが、また何かやらかしたのかと思ったのだ。


「はい・・・」

 ヌンの声は暗い。いつもの失敗した時の口調だ。


「どうしたんだ⁉︎」


「あの、ご主人様が私の行きたい所とおっしゃったので、そこを思い、ちょっと仲間たちのことも…」

「仲間?」

「はい。すると何故か、植物センターの仲間が、ここへ来てしまったんです」

「植物センター?」

「仲間たちを宇宙ステーションに残せば死んでしまう。一緒に故郷へ戻れればと」

「何の話だ?」

「ですから、私の行きたかった所です!」


 ヨルクは、ヌンが何を言っているのか分からなかった。

それでも宇宙ステーションへの攻撃は現実だったんだとがっかりする。

とにかく「ヌンは静かに飛行しているから危険から脱したらしい」と思った。


「いったい、ここはどこなんだ・・・」

 独り言のように言ったせいか、ヌンは答えない。

 苗たちでさえシーンと静かにしているように沈黙が流れる。

 操縦席のスクリーンも閉じたままだ。

 

 ヨルクは言った。

「スクリーンを開けろ」

「え・・・」と、戸惑うヌン。

「いいから開けろ」

 すると前のスクリーンがブンッと音を立てて開いた。


 外は真っ暗だ。星も見えない。


「ここはどこだ?」と思ったヨルクだが、すぐに光が差し、ゆっくりと明るくなっていくのが見える。

 それは灰色の雲に覆われた惑星で、夜から朝に変わるところだった。ヌンはこの惑星の軌道を回っていたのだ。

 しばらくすると、雲にぽっかりと空いた穴が近づいて来る。


「あ、あの穴は、何なのか分かりません」

 とヌンは、うろたえるように言った。


 ヨルクにとって穴なんてどうでもいい。知りたいのはこの惑星、自分がどこにいるかだ。宇宙ステーションはどうなったんだろう。そして両親は・・・


「お前、何か隠してるな」

「ええっ!?」


 自分が目覚めた時、ブンッと音がした。あれは操縦席前のスクリーンが開閉する音で、ヌンは誰かと交信していたことになる。


 ヌンはしばらく沈黙していたが、急にグラグラと揺れた。


「も、申し訳ありませーん!」


 床を埋め尽くしていた苗たちの鉢が、ガッチャンガッチャンとぶつかり合う音を立てる。


「揺らすんじゃない!」


 ヌンは揺らすのを止めて言い訳する。

「私は、ただ、ただ、言われた通り、自分の行きたい所を思っただけなんです」

「だから、ここはどこなんだ!」

「えーと、あのー」

「じゃあ、この惑星は何だ?ここがお前の故郷なのか?」

「そうらしいです。でも私たちの先祖が採取された時にあの穴はありませんでした」

「穴はいい。惑星の名は?名前がなければ登録番号があるだろ」

「名前はラーウスです」

「ラーウス?」


 ヨルクは、その名を聞いたことがあった。両親がやってるプロジェクトに関する惑星がそんな名前だったような気がする。それに植物センターには「惑星ラーウスで採取」なんて植物もいくつかあった。

 だがラーウスは、ワープを繰り返しても、何十年もかかる遠い宇宙にあったはずだ。


「僕はどれ位寝てたんだ?」

「二日です」

「二日?」

 そんなに寝ていたのかと驚くが、それでも距離と時間が合わない。


「あれは惑星ラーウスじゃないだろう」

「ラーウスです」

「どうして分かる?」

「ラーウスから連絡がありました。少年たちを空港へ迎えに行かせたそうです」

「少年たち?」

「はい、ご主人様と同じ年頃の子たちだそうです」

 ヨルクはますます分からなくなる。


「他に隠してることがまだあるな」

 ヌンは答えない。

「いいから話せ」

 するとヌンは話し始めた。


「私は言われた通り、自分の行きたい所、故郷を思いました。もちろんそこは遠いところだと知っていました。でも安全な所はそこしか思いつかなかったんです。そしたらここに来ていました。どうして来れたのか分かりません。なぜ仲間たちが一緒なのかもさっぱりです。ここは私たちの故郷ですが、こんなに時間が経ってしまったなんて信じられません。それで、ご主人様が目覚める前に何とかしようと」


「ちょっと待て」とヨルクが遮る。


「時間が経った?」


 もしこれが惑星ラーウスであれば、長い時間をかけて来たことになる。しかもラーウスには人が住んでいなかった。それなのに「少年たちが迎えに来る」のだから、ここで生活している人たちがいると言うことだ。

 ヨルクは、自分が眠っている間に何かが起こったのかもしれないと思った。 


「ヌン、今はいつなんだ?」


 ヌンは少し間を置いて言いにくそうに答えた。


「あれから百五十年経ったそうです」

「何だって?」

「今は、百五十年後の未来なのです」


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