第一章
登場人物
カイル・アルフォード
アルフォード皇国の第一皇子。かっこいいが、ダルダル系男子。
ジョシュア・アースメイア
アースメイア王国の第一王子。弟想いだが、女癖が悪い。
レノン・アースメイア
アースメイア王国の第二王子。お兄ちゃん子だが、芯がしっかりしていて、冷静。
カイルとは幼馴染で、同盟国でもある。世話焼き。少し悪賢いところがある。
エミリー・アークフォルト
アークフォルト皇国の第一皇女。責任感が強く、冒険心が強い。どんなとこにでも行ってしまうため、レノンは、エミリーを常に気にかけている。
ヨハン
アルフォード皇国の執事兼教育係。厳しい反面、優しい部分もある。アースメイア王国の執事のノエルとは、執事学校の同級生。
ノエル
アースメイア王国の執事。ジョシュアには毎回手を焼いている。ヨハンとは執事学校の同級生。
リリー
アークフォルト皇国の侍女。エミリーを慕っているが、心配性の一面がある。
あらすじ
1980年代のヨーロッパ。
21歳の誕生日になったカイルの誕生日パーティーを開くことになった。
そこには、幼馴染のレノン・アースメイアとエミリー・アークフォルト。
二人の王子たちは、敵国の皇女をめぐって争うこととなる。
第一章 突然の再開
時は、1980年代のヨーロッパ。
アルフォード皇国の一室で朝から慌ただしかった。
「おい、ヨハン。なんで朝から俺執務室で勉強しないといけないんだ?」
こんなことを言っているのが、一応この国の第一皇子、カイル・アルフォード。
「おや、カイル様、今日の夜のことお忘れになられているのですか?」
ブー垂れているカイルを叱るのがヨハンという青年、いやカイルの教育係兼執事である。
「ゲッ、ヨハン。今日って、俺の誕生日のパーティーに出ないといけないんだっけ?」
自分の誕生日を忘れてしまいかけていたカイル。
いや、現実を見たくなかったのであろう。
そんな様子を見ていたヨハンは半分呆れ顔。
「はあ、当たり前です。誰が主役だと思っているのですか。」
カイル面戸くさそーに頭をかく。
「あー、そうだった。チッ、出たくねー。」
「つべこべ言わず出るんですよ?出席者の中に、レノン様もいらっしゃるような。」
「ん?レノンが?なら出ようかな。」
にやつくカイル。その様子を見たヨハンは・・・。
「まったく、現金だなーw。」
そのレノンという青年は、同盟国アースメイア王国の第2王子である。幼馴染のこともあり、付き合いが深いのである。
「まあ、レノン出るなら行かないわけにはいかないしな。あいつは、大事な幼馴染だ。」
「そうですね、お二人とも健やかにお育ちになられて。」
「ヨハン、わかった。書類に目を通して、返事を書いておけばいいのだな?」
「左様でございます。」
「わかった。出来たら呼ぶから、それまで自由にしていてくれ。」
「はい、かしこまりました。いったん失礼いたします。」
ヨハンが執務室から出ていき、一人になった。
「正直祝ってもらってうれしいけどさ。ただ、あいつが来るのかと思うと。」
「でも、あいつはレノンのほうが好きだろう。」
「正直、気にはしているが・・・・・。」
一方、アースメイア王国では・・・・・・・。
執務室で、第一王子のジョシュアと、第二王子のレノンが話していた。
「兄さま、今日の舞踏会の件ですが、私が行けばよろしいのですか?」
「そうだ、レノン。カイルの誕生日だろう?私の代わりに行っておいで。」
首をかしげるレノンを執務室の机からおかしそうに見ているジョシュア。
ジョシュアからみられていることをわかっていないレノン。
「わかりました。何か兄さまから伝言とかはありますか?」
「そうだな、レノンが世話になっていると。誕生日おめでとうと伝えてくれ。」
「かしこまりました。お伝えしておきます。」
ジョシュアは思い出したようになのか、わざとなのかあのことを聞いてみた。
「そうだ、レノン、エミリーは元気かい?」
「ブッwwwww。兄さま突然何をおっしゃいます?」
「エミリーはもちろん元気ですが?」
笑い転げるジョシュアを大人げないなと内心思いながら見ているレノン。
「ハハハハハ、その反応面白かったぞレノンwwwww」
訝しげに見るレノン。
「兄さま、僕のその反応見たかっただけですか?」
「悪いって、レノン。お前がかわいいから見たかったんだよ。」
涙目になりながら、謝るジョシュア。
「兄さま、僕も21ですよ?もう大人です。いつまでも子ども扱いしないでください。」
「わかったって。ごめんね?」
「いいですよ?いつもの兄さまだし。兄さま仕事詰め込みすぎないでくださいね?」
「ああ、気遣いありがとな。」
「はい。それでは、行ってまいります。」
「ああ、気を付けていくんだぞ。」
「わかりました。」
執務室を後にするレノン。誰もいないひっそりとした廊下で・・・・。
「兄さまらしいけど、今日は久しぶりにカイルに会えるのか。楽しみだな。」
「ただ、エミリーはどうするんだろう。」
「エミリーに伝書鳩飛ばそう。」
来てくれると思う気持ちを胸に自室に戻るのであった。
その時、アークフォルト皇国では・・・・。
第一皇女のエミリーに手紙が届いたとはしゃいでいた。
「エミリー様、アースメイアの王子様からお手紙が。
侍女のリリーは、ドレッサーの前に座っている皇女に手紙を渡した。
「まあ、レノン様から?」
「はい。」
そこに書かれていたのは、今日、カイルの誕生日パーティーがあるということと、エミリーに会いたいということがつづられていた。
「そういえば、今日カイル様のお誕生日パーティーでしたわね。」
苦い思い出を思い出しつつ言うエミリー。
なぜかというと、レノンの誕生日パーティーでカイルに無理やり踊らされたからである。
その様子を見たリリーは、
「エミリー様、ほんとにいかれるのですか?」
心配そうに見つめている。
「当り前じゃない。レノン様がいかれるのよ?私が行かないでどうするのよ。」
レノンに会えるのがうれしいエミリーは、正直カイルのことはどうでもよかった。
そんな様子でいるエミリーにリリーは半分呆れたように。
「かしこまりました。そこまで言うのでしたら、おとめしません。」
「リリーありがとう。」
しかし、リリーが伝えたのは、負荷がかかることだった。
「レノン様にも、カイル様にもお会いするのですから、一国の皇女として恥じない対応をしてください。」
リリーは、きつかったかなっと思いながらエミリーを見た。
「わかってるわ!」
半分怒りながら言った。
「なら、それでいいです。今日は、何色のドレスにしますか?」
エミリーなら選ぶであろう、レノンが送ってくれたドレスを持ってきていた。
「この国の象徴でもある青にするわ。レノン様が送ってくださったドレスを。」
「かしこまりました。」
「あ、あとレノン様にお手紙の返事書かなくては。」
急ぎで送ってくれたのであろう。早く返さないといけないと焦った。
「エミリー様、なんて送りますか?」
こういう時、リリーは頼りになる。
それ以外は、頼りにならないような言い方だが、実際助かっている。
「今日のパーティーは出席するわ。と書いておいて?」
これだけでいいだろうと思っていたことが後々面倒になるなんて思いもしなかった。
「かしこまりました」
今日のエミリーはブルーのドレスにパールのネックレス、髪をアップにして清楚ないでたちをしていた。
リリーは、遠目からそんな皇女のことを誇らしげに思っていた。
時刻は夜の7時を回っていた。
アルフォード皇国にはたくさんの貴族が集まっていた。
ちなみに、カイルはというと・・・・・・・・・。
「カイル様、いい加減に駄々こねるのやめてください。主催者がいなくてどうするんですか」
ヨハンは、だらけているカイルに注意をする。
「レノンはいるのかよ?いるならいくけど」
ヨハンはそんな皇子をみてこう言った。
「仕方ありませんね、見てきて差し上げましょう」
「ヨハンありがとう」
と思った矢先、身に覚えのある声がした。
「コンコン」
「はい」
とヨハンは返事をする。
そこには。
「カイルいる??」
そこにはレノンの声が。
目を合わせるカイルとヨハン。
「ああ、いるよ」
と声をかけるカイル。
まさか、レノンが来るとは思いもしなかっただろう。
「おい、ヨハン。今の話聞かれてないよな?」
「ええ、おそらく」
青ざめた二人に、また不意打ちをかけるように。
「カイルまだなの?」
「もう行くから待ってくれ」
「どんだけ待ったと思ってんの?カイルこないから僕さみしんだけど」
おいおいまてよ?なんでレノンのやつ俺のこときにしているんだ?どんだけ俺のことすきなんだし
レノンそういう趣味あったのかよあいつ。
あきれるヨハン。
「カイル様が遅いからでしょう」
「ヨハンは一言多いんだよ」
「失礼いたしました」
またもやレノンの声がする。
「カイルまだ?いい加減にしてくれる?」
「仕方ねー、じゃあヨハン、行ってくる。」
だるそーに腰を上げるカイル。
「私も後から行きますので」
ヨハンは部屋を去っていった。
カイルが外に出るとそこにはきらびやかなフロアーが見えていた。
舞踏会の会場にはたくさんの貴族や王族が来賓として来ていた。
とある貴婦人がダンスホールの階段から降りてくるカイルの姿を見てこう言った。
「まあ、カイル様だわ!」
「相変わらずお美しいのね」
「なだご結婚もなされてないのでしょう?」
とひそひそと話をしていた。
その様子を見ていたカイルは、
「あいつらいるのかよ。だりー」
めんどくさいと思いながらレノンと話しているカイル。
「ははは、カイルほっといておけばいいよ?」
辛辣な言葉を口にするレノン。
「レノンは、相変わらずだなー」
と、幼馴染のことを笑いながら階段を下りていく二人。
その様子を遠くから似ていたエミリー。
「カイル様は、あいかわらずだわ」
なぜそんなことになるかって?
前回のレノンの誕生日パーティーでカイルに散々な目にあわされたからなんだが。
「レノン様もいらっしゃるわ」
ほれぼれしていると、ふとレノンと目が合った。
レノンはにっこり微笑んでいたが、隣のカイルはというと・・・。
「ゲッ、エミリーいるのかよ?」
青ざめた顔をしているカイル。
それを見たレノンは、おかしそうに言った。
「いるよ?」
「だって、カイル、エミリーのことすきでしょ?」
そういうことを考えてあの伝書鳩を飛ばしていた。
まさか、こんなに好都合なことになるとは思わなかった。
エミリーには申し訳ないと内心思っているが・・・。
おせっかいだなと思いながら実際内心では喜んでるカイル。
「う、うるせーよ。なんであいつが・・・・・。」
「そろそろ認めなよカイル。エミリーのことが好きだっていうのは前々から知ってるから。」
「だって、エミリーはどう思っているか知らねーもん」
ふてくされるカイルを大人げないなと思いながら見るレノン。
不意に思ったのかレノンはカイルに質問をした。
「カイル、エミリーをデートに誘ってみては?」
突然のことで赤面したカイルは、エミリーを見てこう言った。
「ぶっ、おい、いきなり何言いだすんだよ」
いきなりすぎる反応に面白おかしくなったレノンは、
「だって、カイルデートしないだろ?」
基本めんどくさいことはしたくないカイルだから、デートもそうであろうと感づいたらしい。
「そうだけど、どうすればいいんだよ?」
一方で、エミリーはというと・・・・・・・。
「また、言い合い始まった。」
「声でかいし。聞こえてるし。」
半分呆れ顔。
しかし、そう言っているカイルのことが気になってしまう自分もいた。
貴婦人たちは、なぜかアークフォルト皇国の皇女には気づいてないらしい。
そんなにあの二人がいいのかと思ってしまうほど。
レノンとカイルは、エミリーに近づいてこう言った。
「やあ、エミリー、今日も美しいね」
エミリーは照れながら
「ご機嫌麗しゅう、レノン様、カイル様。今日もかっこいいわ」
この二人のやり取りを見ていた貴婦人たちは
「あの人だれよ」
「見たことないわ」
ぶつぶつ言っていた。
エミリーは呆れながら聞いていたが、カイルが貴婦人たちにこう言った。
「お前らうっせーよ。こいつをだれだとおもってんだ?」
「アークフォルト皇国の第一皇女エミリー・アークフォルトだ」
貴婦人は一気に青ざめた。
あまりにも怒っているカイルは、貴婦人たちを追い出し、身内だけで行うこととなった。
「エミリー、申し訳ない。」
とカイルが言った。
まあ、仕方ないことよ。でも、ありがとねカイル。
その様子を見ていたレノンは、
「よかったら、二人で踊ってくれば?」
二人は、赤面した顔で見ていた。
「えっ、二人で?」
「そうだけど、僕なんか間違えたこと言ったかな?」
「うん、いってるな。これじゃまるで俺らができているみたいな言い方じゃねーか」
「うん、カイルそのままの意味なんだけど」
「レノン、やってくれるな」
「エミリー、俺が嫌じゃなければ、踊ってくれねーか?」
いきなりの誘いにエミリーは困惑していたが、
嬉しそうに微笑んだ。
「私でよければ喜んで」
こうして二人は、ダンスを踊るのであった。
仲睦まじく踊っている二人は知らず、レノンは、近くにいたノエルに指示を出した。
「ノエル、アークフォルト皇国に使いを出せ。」
「アークフォルト皇国の皇女は、敵国のアルフォード皇国の第一皇子と恋仲であるとな」
内心皇女を取られたくない気持ちもあるが、敵国となると?
アークフォルトとアースメイアは同盟国だし、婚約となったらより一層豊かになるし、兄さまも大変な思いもしないで済む。
「二人ともごめんね」
と小声で言った。
まさか、その後波乱が起きるとも知らずにいる二人だった。
パーティーが終わり、バルコニーで涼んでいる二人。
そこへ、執事のノエルがやってきた。
「皇子様、皇女様、レノン様がお呼びです。」
きょとんとしていた二人は、何のことかわからないまま立ち尽くしていた。
「ええ、今行くわ」
「ああ、今行く」
これからから起きることも知らないままに。
ある一室で待つこととなった。
そこへヨハンと、ノエルがやってきた。
「うちの皇子が申し訳ない。」
「いやいいんだ、うちの王子もああいう性格だからな。」
カイルは疑問に思った。
「なんでヨハンがあやまってるんだ?」
エミリーもうなずいていた。ただ、感はついていた。
「ねえ、カイル。私たち敵国でしょ?だからお互いの同盟国であるレノン様が企んでなんかやったのでは?」
「はあ、あいつが?そんなことやるか?気のせいじゃない?」
そんなことを言っている合間に、聞きたくない声が。
「エミリーの言うとおりだ。カイル。何をしておるのじゃ。」
「エミリーなにをしているのだ、いったい。敵国と恋に落ちてどうするんだ。」
二人はびっくりしている。まさか国王がいるなんて。
これもレノンの仕業と分かったエミリーは泣き崩れ、カイルは支えたままレノンの執事のノエルを呼んだ。
「レノンを呼べ」
「かしこまりました」
そして、レノンはやってきた。
「ははは、無残な光景。こうしたのは僕だよ。」
「だって、普通さ、敵国同士でダンスなんてしないよ?」
「憎しみのほうが強いのにさ、なんでふつうなのかな?」
「それに、カイルには悪いけど、エミリーのことが好きなのは僕だから。」
「当分エミリーに会わないでね?」
こいつ大丈夫かな?嫉妬狂ったな。と思った二人。
エミリーは、こっそりカイルと話した。
「何があっても、私はカイルを呼ぶわ。だからそれまでは待ってて頂戴」
「ああ、わかった。」
二人の秘密の恋が今から始まった。
1章完結。