ある戦神の悪戯
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それは、神在月の出雲での事。
毎年行われる神々の遊びで、夫婦札を書くと言うのがある。
不思議なことに、この札に書かれたカップルは、必ず結婚に至ると言う。
でも、これ書くの苦手なんだよ。
だってさ、俺は戦の神なんだぜ、恋愛とか面倒くさいし。正直な処、退屈だ。
そうでなくても、最近戦が無くて、暇だって言うのに……
周りを見回すと、どの神々も楽しそうに、誰と誰の縁を結ぼうとかやってんの。
だが、隅っこの方で、女神の壱柱が、難しそうな顔で札を睨んでいた。
あれは……確か、木花之佐久夜毘売の姉、石長比売。
妹に嫉妬して、生まれた甥に、呪いを掛けたんだよな……
そのせいで、縁切りのご利益があると有名ではあるが
本当は、自分も殿方に愛されたいと思っている縁結びの神でもある為、縁結びと縁切りの両方を持つ不思議な女神だ。
そこで、俺は1つ疑問にぶち当たる。
もし、この夫婦札に、人間以外……そう、神の名前を書いたら、それは叶うだろうか?
物は試しだ。どうせ、書く名前など決まっていなかったし。婦の欄に石長比売の名前を書く。
ただ、問題が1つ……それは、夫の空欄に、誰の名前を書くかと言うことだ。
う~ん。
もし夫婦札が効果を発揮したとき、好きでもない相手と夫婦になれば、人生……いや神生の墓場になっちまう。
それで恨まれて、呪われたくないし。
しかし、不謹慎ではあるが、札の効果を見たいと言う好奇心も抑えられん。
他の神々に恨まれず、好奇心を満たすには、自分の名前を書くしかない。
どうせ、俺に興味があるのは、戦の事だけだしな。
札の夫の欄に、自分の名前を記入した瞬間。札が淡い朱色に輝くと直ぐに収まった。
何だ……やっぱり神には効果無いのか……
俺は筆を放り出すと、そのまま畳に寝転んだ。
「きゃあ」
丁度、後ろを通り掛かった。石長比売にぶつかってしまった。
「おっと、済まねえ」
直ぐに立ち上がって、詫びを入れるが、石長比売は顔を朱く染めて一点を見詰めていた。
その視線の先は……俺の書いた夫婦札じゃねーか!
「あの、それ……本当に良いの?」
そう言って見つめてくる女神が、いじらしくて可愛い。
「ああ、男に二言は無い」
「嬉しい!」
そう言って抱きつかれた俺は、この女神と結ばれることに、喜びを感じていた。
結論。夫婦札の効果は絶大だ。
ニニギノミコトの元へ姉妹揃って嫁いでいるので、石長比売は既婚者
NTRになるのかな?