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だとしたら、勝ち目がなかった。
結婚は出来る。
生まれた時に相手が決まっているのが、この国のルールだからだ。
だけど、私はマルクスの心も欲しい。
私にだけ優しくしてほしいし、私だけを見てほしい。
でも、今、マルクスの目に映っているのはアリーナだ。
苦しい。
こんなにもマルクスのことを思っているのに、それは届くことが無いのだ。
見たくはないはずなのに、二人を尾行する。
心のどこかで「二人は私に内緒でサプライズを考えているのかも」なんて、甘い考えを抱いているのかもしれない。
サイクリングコースを歩く途中、二人は林の中に入っていった。
尾行していることに気付かれてしまったのかと思ったが、違うようだ。
近くまで行くと、細い道があった。
遠くからでは見えない、近くに来ても決して「入ってみよう」などと思わないような道だ。
二人の姿は見えない。
この道を進んでしまったら、もう、後には引けない。
そんな感じがしていたが、足は奥へ奥へと進んでいく。
小屋のような建物が見える。
レンガ風の外観のそれは、お店のようにはとても見えなかった。
真っ白な壁に、大きな四角い窓。
建物の周囲には、緑の植物や花を植える。
というのが、一番清潔的で良いとされている。
実際に、この国のほぼ全ての店はそのデザインで出来ていた。
私がカタリーナとよく行くカフェもそうだった。
近くにあった窓から、中の様子を窺う。
二人が珈琲を飲みながら、楽しそうに談笑するのが見えた。
私には、詮無いことと諦めて帰る以外の道はなかった。