グレンガイア国
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グレンガイア国の王宮内のさらに奥まった場所にある召喚の間。
国王を筆頭に宰相、各部門の大臣らそして軍を束ねる元帥と将軍が二名、三十を超える護衛兵が集まり、今まさに国内位置の魔術師による異世界からの聖女召喚の儀が執り行われようとしていた。
300年も昔に当時の勇者と聖女により封印されたはずの魔王復活に伴い、姿を見せることのなかった魔獣が次々と出現し周辺諸国は警戒を強めている。それはグレンガイアも同じことで、国境近くで魔獣の出現が確認されたことにより王家は300年前と同じように聖女召喚を決めたのだ。
古の書によれば、
『聖女は女神ネウレスティアに導かれ異世界から現れる。癒しと光の力を持ち魔を退け、聖なる風をもって精霊と対話する』
とされている。
精霊とはこの世界の万物に宿るものとして認識されているのだが、よほどの魔術の使い手で高い魔力を有していなければ見ることすらできない小さく美しい導き手のことだ。彼らの機嫌を損ねればたちまち財をなくし友をなくし光をなくし廃人のように生きていくしかない。神と同じように崇高で気まぐれで恐ろしい存在なのである。最高の位を持つ優秀な魔術師の中でもさらに限られた一握りだけが直接話ができる。と言ってもあくまでそれは偉大なる精霊の言葉を聞き知恵を授かるためで、人間側から要望でも言おうものならその場で心を奪われても文句は言えないのだ。
そんな彼らと対等に話すことができる聖女という存在は、魔の進行を防ぐのに必要不可欠であった。
そして聖女と共に魔に立ち向かう勇者と呼ばれる者。
『聖女が現れた時、勇者もまたその地に現れる。他を圧倒する武と魔術の才を持ち、全ての属性を手にし聖獣を使役する』
と言い伝えられ、かつて魔王封印を成し遂げた英雄である。
300年前の勇者はグレンガイアの第一王子であり、聖女召喚がなされた日に全ての魔法属性に目覚め風の聖獣と言われたフェンリルを使役しその後は賢王として国を治めた偉大な存在であった。
属性とは魔法属性のこと。
この世界には精霊に連なる属性があり、主に火、水、風、雷、土、光、闇 の七つに分類される。その中でも力の強弱があり王族は代々二つ以上、高い魔力を有する者で一つ以上の属性を持っている。
今代国王は火と風と光の属性を持ち、歴代でも300年前の勇者に近いほどの優秀な王だと言われている。また第一王子は火と土、第二王子は風と雷の属性を持っている。
召喚の間の中央に複雑に描かれた魔法陣は、国の最高位の魔術師が三日かけて練り上げた傑作である。
白く明るい室内でその魔方陣は照明の光を受けてきらきらと輝いていた。
集まった人々が食い入るように見つめる中、魔術師の紡ぐ言葉は次第に大きく激しくなる。それにつれて魔法陣の輝きは照明だけのものでなく、そのものが光を放つように強くなっていった。
穢れの無い真っ白な輝き。
徐々に強くなり最後には光の柱のようになっていたそれは、魔術師の言葉が途切れた瞬間凝縮し四散した。
目を離せずにいた人々もたまったものではないとその瞳を覆う。
降り注ぐような光が止んだ後、魔法陣の中には二人の人の影があった。