やっつけ仕事
「じゃぁ、サイン貰おうか」
キム兄がニッコリ笑った。
ははは…僕はもう笑うしかない。
「ドミ、早う片付けりぃよ」
マミさんがドミさんを睨んでいる。
「はい」
返事をして、ドミさんはホウキとちり取りを手に掃除を始めた。
「すみません」
本当は僕が片付けなきゃいけないのに…迷惑かけっぱなしだな。
「いいよ、慣れてるから」
と彼はモタモタと掃除をしている。
慣れてる?
あぁ、キム兄達の横柄な態度にか…
モタモタっぷりを見ていたら、掃除に慣れてるとは思え無い。
「んじゃ、サインな」
僕はキム兄に言われるがままにサインを書きまくった。
色々と説明を聞いた気がするが…
正直、頭に入って来なかった…ただ、どうやったら辞めれるか…そればかり考えていたから。
バイトは明日から…という事になりアパートへ帰った。
アパートへついても食事する気になれない…と言うか…まぁ、食料が乏しいと言うのが現実。
やっぱり…やんなきゃいけないかな?
時給1万だしさ…
僕は一晩中、くだらない事で悩み続けた。
…チュン、チュン、
雀が平和に鳴いている…
朝…来てしまったんだなぁ。
なんで24時間しかないんだよ~くそう!
今日からバイト…。
結局、辞めますとは言えなくて…いや、あれは無理矢理。
怖くて逆らえなかった…僕ってなんで…こうダメダメなんだろう。
布団にまだ入ったままに時計を見つめる。
よし、針が3になったら起きよう。
カチッと3になる。
じゃぁ5になったら…
カチカチカチ、と針は潔く進んでいる、僕の気持ちを少しくらい察してくれてもイイじゃんかよ~。
あ~もう!行きたくない!
僕は布団の中でシダバタと暴れてみる。
もういい加減に起きなきゃ遅刻だし、きっとクビに…
クビ…?
そうか…クビ…!
よくね?
僕は急に希望が湧いてきたかのように元気になった。
うん!遅刻してクビになろう!
布団から起き上がると側に置いていたスマホが響く。
こんな朝から?
手に取り、着信を確認。
キム兄…と表示されている。
ああぁ…昨日、番号教えたんだったあ!
僕ってバカ~!




