借金1千万できちゃいました!!1
「とろくて頭悪そうに見えるけぇ、無理じゃろ?」
無理じゃろ?
期待した言葉はたった今…粉々に砕けちりましたよキム兄さん。
やっぱり…そんな風に見えるんだな僕は。
だいたい、いつも第一印象って、
「日當君って良い人そうけど…頼りなさそう」
だし…、褒めるかけなすかどっちかにしろっていつも思ってた。
だから…彼女に……。
禁断の言葉が浮かびそうになり僕は頭を振る。
僕は…ダメ人間だもん。
絶対にバイト続くわけがない。
マイナス思考になると…僕はとことんマイナスに陥る癖がある。
やっぱり…断ろう。
「負のオーラ…出とう」
急にそう言われ、キム兄を見た。
「断る気やないやろうな?」
ニッコリ微笑むキム兄さんは目が笑ってません。
ハッキリ言って怖いです。
もう…走って逃げたいくらい。
うん、走って逃げよう!
僕は立ち上がると、キム兄さんを見もせずに走ってドアに向かった。
向かったつもりだったが、ドアが外側から開き、ドアがもろに僕にぶつかった。
「えっ?ごめん」
ドアを開けた誰かが顔を出した。
顔を出したのはティッシュを配っていた青年。
僕はドアにぶつかった拍子に尻餅をついたまま青年を見上げた。
「大丈夫?」
青年が手を差し延べてくれる。
優しい…こんなに優しい人も働いてるんだ。
いや…違う、きっとこの人もキム兄に強制的に働かされてるに違いない。
かわいそうに…それなのに他人にこんなに優しい。
人間が出来てるんだろうなぁ…。
キム兄は悪人に違いない。
どことなく極道の臭いがするもん。
「あの…」
青年が困ったような顔で僕を見ている。
僕は我に返り、大丈夫と笑って立ち上がった。
「本当にごめんなさい、よく見てなかったから…怪我とかない?」
青年は本当に申し訳なさそうに僕を気にしてくれている。
本当に優しい。
それに比べ…他の人達は。
早い所、逃げないと。
あの極道に捕まらないうちに。
僕が青年を交わしてドアに手をかけようとした時に、
「もう面接終わったの?」
青年が尚も話かけてくる。
確かに彼が僕にティッシュをくれたからココにいる。
返事を返してる暇はない…きっと彼とは仲良くなれたかも知れない。
違う場所で会いたかったな。
「うん」
僕は急いでドアをあけようとした。
「待て、忘れもんじゃ」
キム兄の声。
ドキッとした…どうしてこうも、この人の声は迫力あるんだろう。
「忘れ物?」
何か忘れたっけ?と振り向いた。
キム兄が何か指さしている。
指さす方向に手をつけてないコーヒーが入ったカップ。
まさか…飲めと?
「人が出した物を手をつけず帰るとは…ええ度胸じゃな」
僕を見る…目が…目が怖い。
それに…それいれてきたの僕ですよ。
「いや…あの、お腹いっぱいで」
僕は真っ直ぐに彼を見る事が出来ずにそう言った。
内心はもう…いっそ、このドアがどこでもドアで開けたらアパートの部屋ならどんなにいいか。
「僕、あの…やっぱり」
逃げ腰にそう言いながらドアノブをさりげなく回す。
タイミングを見計らってダッシュで逃げる魂胆だ。
「ドミ!」
キム兄が青年を見た。
ドミ?
僕がキョトンとしていると。
「はい?」
青年が返事をする。
彼の名前なのかな?
あ、コードネーム?




