僕、ピンチです3
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ここからはまた日當バージョンでお送りします。
変な日本語を話す女性の声がした。出前一丁とか叫んでいる。
彼女…日本人じゃないみたい…って言うか日本人じゃないよね。
プッっと横でツッチーさんとトミーさんが俯いて笑っている。
あぁ、彼女の日本語がおかしいからかな?
二人肩を震わせ笑いを懸命に堪えている。
「何だコレは!こんなの出前で頼んでないだろ!」
すぐにリーダーの人の声が響いた。
「コレ?コレはウチの超オススメよ!超ウレテルよ!ウマイよ~しかも、超ヤスイよ」
怒鳴る声にもびびる様子もない出前の彼女は大きい声でリーダーに何かをススメているみたいだ。
「あのな、こっちが頼んだのはラーメン!分かる?ラーメン!博多と言えばとんこつラーメンだろ!」
リーダーが半分切れているようだった。
あぁ、頼んだ出前と違うのか。
「シッテるよ!バカにするな!ワタシ、中国人よ!博多人じゃナイよ!トンコツラーメン食べたかったらニホンのラーメン屋電話すればヨカッタじゃないの!」
凄い…負けてない。僕はどんな人が出前を持って来たのか見たくてウズウズした。
僕の位置からじゃカウンターが邪魔をしてやりとりが見えないのだ。
「ああ、もういい!いくらだ」
リーダーの方が負けたみたいだ。
「ホント?アナタいいヒトね。これ、セットで500円よ。」
彼女は打って変わって穏やかな口調になった。
「マジ?安いな」
リーダーもさっきまで怒ってたのに口調が変わった。
「ソウヨ!ウチのギョーザとチャーハンは超安くて超オススメよ!超うれすじよ!アナタ、良いニホンジンね。お店キタラ、もっとオマケするよ」
彼女…分かってるのかな?その良い日本人が銀行強盗だって…。
「そうか…いつか行くよ」
「マイド、ドーモ!ゼッタイキテよ」
彼女はそう言うと出て行ったようだった。
カウンターにドンッと置かれたのは超山盛りのチャーハンだ。
凄い!餃子とセットで500円だって言ってたよね?
うわ~どこの店だろう?行ってみたい。しかも、凄く良い匂いがするんだよ。美味しそう。
そう考えていたら…ぐうぅぅ…と腹の虫が鳴り響いてしまった。
「日當…」
ツッチーさんとマミさんが冷ややかな目で見ている。
「日當君、ご飯食べてないの?」
トミーさんは優しく声をかけてくれる…。
うん、ご飯食べてないんだよぉ!
犯人の目の前にあるチャーハンと餃子は凄く美味しそう。
「お前、腹減ってんの?」
リーダーさんが僕の方を見てそう言った。…って、事は…カウンターまで僕の腹の虫の主張は届いているのか…情けない。
「食うか?」
と言われたけど、食べますとか言えないじゃないか!
空気を読んで僕は首を振り俯いた。
「あのチャイニーズ娘の言う通り、マジで美味いな…超、オススメと言うだけある…とんこつラーメン食べたかったけど…このチャーハンでもいいか」
リーダーさんは次々にチャーハンを口に運んだ。よほど、美味しいのだろう。
◆◆◆
(またキム兄バージョンでお送りします)
施さんが銀行から出て来てワシを見るなり笑顔で手を振る。
だーかーらー!バレるじゃろう!
面白さだけでチョイスするんじゃなかったかな?
やっぱりジャッキーにすれば良かった。
いち早く宗方さんが施さんを連れて行ってくれた。
ナイス宗方さん!
ワシがヨーコさんが送ってくれたレイアウトを見ていると宗方さんが顔を出した。
「施さんは何て?」
「良い日本人だと」
その言葉でワシはジャッキーを選ばなかった自分を悔やんだ。
「人選ミスじゃな」
「いいえ、彼女凄いですよ。記憶力良いんですね、短時間で犯人の銃の種類から人質の人数、集められている位置…全部覚えていましたよ」
はっはっは、当たり前じゃ!ワシは天才じゃからの!
宗方さんに聞いた銃の種類をパソコンでヨーコさんに送ると数分で電話が来た。
「銃器担当の草下君の情報です。犯人の持っている銃は数ヶ月前に銀行強盗で使われた銃ですよ、情報転送します」
電話が切られたと同時に情報が送られて来た。
「相変わらず凄いですねヨーコさん。キム兄さんは私達警察より優秀だ」
はっはっは、当たり前じゃ~ワシは天才じゃからのう!
ざまーみろ東区め!
今回もワシらの勝ちじゃ!
キム兄が高笑いしている頃…
ここからはまた日當バージョンです。




