僕、ピンチです2
どうやって逃げるんだろう?
「何か腹減ったな」
リーダーさんが余裕っぽく呟き。 出前を頼んでいる。
はぁぁ、僕ら…いつまでここに居るのかな?
そして、僕はふと…キム兄を思い出す。
キム兄…そうだ、キム兄が外に居るんだから僕らがここに居るって知ってるよね?いきなり、警察が来て銀行を取り囲んでいるんだから異常だって気付くはず。
あんな鬼畜に希望を抱くのはむかつくけど、でも、望みを託すしかないんだ。
キム兄…お願いだから警察に僕らの事を伝えて下さい。僕は必死に神様とキム兄に祈る。
◆◆◆
…その頃のキム兄。
※ここからはキム兄バージョンでお送りします。
アホの日當が1番心配じゃのお…。
アイツ、すぐテンパるから…まあ、マミさんやトミーやら居るからええか。
と、インカムをつけ車内でスタンバイをするワシの元に事務所から連絡が来た。
「キム兄さん、ドミです」
アホのドミからじゃ…こいつも日當と同じく心配な一人。
「どうした?」
と聞くと「じょんじさんからメール来ましたよ」返事をされた。
「ラジャー」
ワシは電話を切り、宗方さんへと連絡を入れた。
さすが日本の警察じゃ…ものの、数分で銀行を取り囲んだ。
「キム兄」
宗方さんが顔を出した。
彼はワシが言うのも何じゃが…見た目、極道。警察が一緒に居たら百パー犯人に見える…。
「中にグリもおるけぇ」
「承知してますよ。」
宗方さんは微笑む。
微笑んでも怖いのお、日當が見たらビビるんじゃろうな…。
「あと、ウチのスタッフが6人おる」
「じゃぁ、6人残すように言っても良いですか?一般人をなるべく巻き込みたくはないので」
「ええよ、その為の人質派遣じゃけえ、あ、ミーさんだけは残したくはないのう、後はええよ」
「わかりました。では、交渉します」
そう言って宗方さんは離れて行った。
耳元から日當のテンパる声が聞こえる。相変わらず…うるさいのお、耳が痛くなるわ。日當のデカイ声はインカムを離してもハッキリ聞こえて来る。
ミーさんは近くにおるんかいの?ホンマ、アイツはうるさいわ…。
パソコンを触って居るとヨーコさんから銀行の内部の地図が送られて来た。
そして、電話も来た。
「犯人が出前頼んでますよ、施さんとジャッキーどちらを出しますか?」
面白さから施さんをチョイス。
◆◆◆
「チョット、アナタ達ジャマよ、通れないジャナイの」
思いっきりカタコトを話す女性が警察を押し退け現れた。
彼女は手に出前用の入れ物を持っている。
「ワカる?これ、超オモイよ。ハヤクとどけたいのよワタシ」
デカイ声で話ながら施さんが来た。
宗方さんは心配そうな顔でワシを見る。彼女もこちらをチラリと見て微笑んでいる。
いやいや、バレるから…ワシ達の存在はあまり知られてはいけない。
彼女にもその事を伝えてはおるんじゃが…なんせ、日本語をあまり理解しちょらんからな…あぁ、やっぱりジャッキーにすれば良かったかいのお?
施さんは犯人が居る銀行に入ろうとして警察に止められる。
そりゃぁ、止めるわな…危険じゃし、こんな時は婦人警官とか扮装させるもんなんじゃろが…。
「チョット、コレなかのヒトにタノマレタのよ、アナタたちナニのケンリあってトメルのよ!超ムカつく」
施さんは超ムカつくだけは綺麗な発音をする。
多分、来日した時に最初に覚えた言葉なんじゃろな。
「中は危険なんだよ。中の人から出前頼まれたの?」
警官の一人が施さんに説明をしている。
「アナタ、何カイ、ワタシにオナジコトいわせるの?デマエよ!デマエ!アナタ、ニホンジンよね?ニホンゴわからないの?バカじゃない?」
施さんは相手が警察だろうが怯まずにマシンガントークを炸裂。
うーん、ジャッキーにすれば良かった。
「彼女を止めないで下さい。中で犯人が出前を頼んだんです。腹が空くとイライラが人質に当たるかもしれない。」
宗方さんがナイスフォローを入れた。
「アナタ、ニホンゴよくワカルね。ヨカッタ、このヒトタチ、ニホンゴよくワカラナイみたい。オナジことナニカイもいわせるのよ。超ムカつくの、ワタシ、ハヤクでまえトドケタイの!」
施さんの声はデカイ…日當以上かも知れん。
あんなに遠くにおるのに、真横に居るように聞こえる。
宗方さんが出て来たので、どうやら施さんは上手く中へ入れるようじゃ。
ワシは中の様子に耳を集中させる。
「ハイ、デマエ、イッチョウ!」
施さん…日本語違うじゃろ。ワシは思わず吹き出した。




