僕、ピンチです
あぁ…カッコイイなぁ二人共。
ツッチーさんは見た目チャラ男で他人には無関心に見えるのにやる時はやるんだなぁ…トミーさんは雰囲気からして優しいからこんな時はかばってくれそう…と言うイメージ通り。
なんて、考えながら二人を見ていた。
でも、ツッチーさんが何となくうるさく吠えた男の顔を覗き込むような態度を見せた。
何かに気付いたような…そんな感じ。
男も、ちょっとうろたえるような仕種を見せる。
あれ?僕は何となく…一瞬だけど、何かを思い出しかけた。
「何してるんだ!さっさと、金奪って逃げるぞ!」
僕に銃を向けた男がそう叫んだ。
確かに…逃げないとねえ。
でも、時間的にはそうは経ってない。
なんか濃い時間を経験した感じがする。
テレビとかで見る強盗ってさ、金奪って逃げるまでに5分と掛からない気がするんだよなぁ…。
この人達って…シロウトなのかな?
なんて考えが過ぎった瞬間にサイレンがなった。
パトカーのサイレンだ。
じょんじさんがメールした相手が警察に連絡してくれたんだ~。
良かった!
「クソ、思ったより早く来たな!」
銃を持つ男はお金を入れた鞄を手にした。
どうやって逃げる気なんだろう?
警察が来たんだから表からは逃げられないし、裏側から出るとしても…出れないんじゃないかな?
銃を持つ男は僕らを見渡した。
あれ…?
この流れって…強盗が逃げる為には人質が必要だよね?
もしかして…もしかしちゃってる?
いや…、すでに人質だけどさ。
もうすぐしたら…警察が警告の為に拡声器を手に犯人に叫ぶんだろう…あ、なんか…ドキドキして来た。
ドラマみたいな転回に僕は恐怖心はどこへやら、ドキドキしている。
ルルルル…
いきなり銀行の電話がなった。
誰だよ!この緊張した空気に!空気よめ!
銃を持つ男がお金を鞄に詰めた男性スタッフに電話を取るように指示をする。
「もしもし…」
半分びびりながら男性スタッフは電話に出た。
しばらくして男性スタッフは銃を持つ男に受話器を渡し、「アナタと代われと言ってます」と言った。
「誰だ?」
男は怪訝そうに眉を寄せる。
「宗方さんと名乗る方です」
「宗方?知らないヤツだ」
もちろん男は拒否する。
「交渉人の方みたいで…」
「交渉人?警察か!」
交渉人…僕の耳にもそうちゃんと聞こえた。交渉人って…僕が好きな刑事ドラマに出てくるんだよ~。犯人に色々と交渉して事件を解決する人…凄い!本当に居るんだ!カッコイイ!
僕の頭には交渉人の宗方と名乗る人で頭がいっぱいだった。
銃を持つ人は電話に出て、何かを話している。
僕の居る位置からはイマイチ、よく聞き取れないんだ。
他の仲間は急にソワソワし始めて、閉められているブラインドを指で少し隙間を作り、外の様子を見ている。
外はどうなってるのかな?
サイレンの音がやたらと耳につく…そこまでアピールするか?ってな具合に。いつも思うんだけど、サイレンの音させたら犯人を刺激するんじゃないかな?
焦って、何をするか分からない…そんな感じ。
だって、明らかに喚いていた男はソワソワして落ち着かないし、他の仲間も。ただ、電話に出てる人だけは冷静な感じ。
きっと、リーダーは彼なんだろう。
他の3人はいつも彼の指示を待っているみたい。
「断る」
銃を持つ男は一言そう言うと電話を切った。
「どうしたんですか?」
電話を切るのを待ち構えたように3人がリーダー(勝手にそう思っちゃった)の回りに集まる。
「人質を解放しろとさ」
リーダーは僕達に視線を向けた。
人質…さっき、言った断るって…僕らを解放しろって事に対する答?
ええっ! だったら僕ら…解放されないの?
えっ?交渉失敗?
さっきまでカッコイイとか思ったけど…役立たずう~!
なんて…僕に思われてるなんて知らないだろうな…あ~ぁ、僕らどうなるんだろう…警察は建物のすぐ外に居るのに…じれったい!
「警察…囲んでるんですよね?どうやって逃げるんですか?」
強盗の一人がリーダーに聞いているのが聞こえてきた。
1番歳が若そうな…銃を持たないうるさい男が聞いている。
彼が1番そわそわしているように僕の目には止まった。
「なんとかなるさ、人質だってこんなに居るんだ…簡単には踏み込まないだろう」
流石にリーダーは落ち着いている。




