まじめな仕事6
「そうよ、意外かしらね?こんなにお嬢様な雰囲気出してるのに」
ヨーコさんからは…残念ながらその雰囲気は見受けられなかった。ごめんなさい。
「ヨーコちゃん、アタシの先輩になるやね」
「はっ?」
マミさんの言葉に僕の声は大きくなってしまいそのせいで、マミさんの怒りのオーラを感じてしまった。
「ちょっと、日當…今のはっ?は何やきさん、お嬢様に見えんちゅうとや?」
マミさんは怒りのオーラを放ち、僕にゆっくりと近付いてくる。僕は一歩づつ、後ろへと下がる。
死を覚悟した瞬間かも知れない。
「アンタのその極道みたいなオーラと言葉遣いじゃ、見えないわね」
とヨーコさんが阻止してくれた。
「でも、マミさん…お嬢様なら働く必要はない…んじゃ?」
人間、死を覚悟したら何でも言えるんだよなぁ…つい、聞いてしまった。
「お嬢様だったのは高校までよ、親父の会社が倒産したとよ、それに今は子供居るしさ…母子家庭は何かと大変とよ」
しまったぁぁぁ…なんて事聞いてしまったんだろう。
きっと聞いちゃいけなかったんだ。謝らなきゃ…僕がごめんなさいのごを言おうとした時に、「チーィス」とツッチーさんとトミーさんが来た。
「何がチーィスじゃ、遅刻じゃ!」
キム兄がツッチーさんに睨みを利かす。
「えっ?5分前ですよ」
ツッチーさんは時計を確認した。
「アホか、10分前行動じゃろうが、罰としてスクワット100回」
「はぁ?またすぐ無茶を言うんだから」
とツッチーさんは嫌そうな顔をしている。
「日當くん、こんにちは。昨日楽しかったね」
トミーさんが僕に笑いかけてくれた。
トミーさんは笑うと女の子みたいに可愛くなり、つい照れ笑いをしたくなる。
「日當キモい」
その様子を見ていたマミさんが露骨に嫌そうな顔をした。
「ボーイズラブとかよそでやってよ」
「違います!」
僕は慌てて否定、そして…謝るタイミングを逃した。
「あ…だからチェ」
「あー!もう!」
キム兄がチェリーと言う前に僕は大声出して、阻止した。
「ホンマ、日當はうるさいのう…よし、役者は揃ったけん出掛けようか、ヨーコさん何時ものようにサポートよろしく」
キム兄の言葉に何が起きてるか僕には分からず、ちょっとおいてけぼり状態。
ツッチーさんやトミーさんはグリさんと何か話ながら会社を出て行く。
宇美さんとヨーコさんはパソコンの前に座って何かカチカチとやっている。
「ほら、アンタも行くよ」
と僕はマミさんに手を引っ張られた。
「えっ?」
僕は訳が分からずキョトンとなる。
「ホンマとろいなぁ日當は…仕事欲しいんじゃろ?」
とキム兄も車の鍵を持ちドアの前に立つ。
仕事…きっとまた、わけわかんない仕事内容なんだろうな…でも、ミクちゃんの為!僕は頑張るんだ!
「はい」
僕は元気に返事を返し、キム兄の後を着いて行く。
◆◆◆
「今から仕事説明するけえ、ペンとメモ出しんしゃい」
運転をしながらキム兄が偉そうな態度で言う。
ちなみに助手席はグリさんで車はキャンピングカーで驚いた。
こんなのアメリカのドラマか映画でしか見た事がない僕はもう、キョロキョロと周りを見てしまう。
凄い、小さいキッチンもあるし、数人寝るスペースもある…へ~、へ~凄い。これがあったら友達とキャンプとか…。
「日當聞いとるんか!ペンとメモはどうした!」
キム兄の怒鳴り声で現実に戻った。
ペン?メモ?僕は慌てて、バッグを探る。
「ホンマ、日當はトロイのお」
あぁ…何回言われたかな、この台詞。
「あの、あの、何するんですか?」
「だから、今から説明する言うとるじゃろうが!」
まるで、野獣のごとく威嚇するキム兄…うぅ、苦手だやはり。
「お前、本当にあの…言い過ぎ」
ツッチーさんが笑っている。




