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人質人材派遣派遣株式会社  作者: なかじまこはな
人質人材派遣
27/35

まじめな仕事5

「あれ?君……」


その言葉に顔を上げると、日に焼けた長身のイケメンが居た。


キム兄同様、ガタイが良いその男性に僕は見覚えが…。


「グリさん、日當知っとるっけ?」


マミさんがグリさんと僕を交互に見る。


グリさん…この人がグリさんだったのかぁ!


「あ、昨日の夜ちょっと」


とグリさんが僕に微笑む。


僕は昨日の夜の出来事を思い出し、ちょっと恥ずかしくなった。


「キム兄んとこの新人だったのか。」


僕は頷く。


「なん?何か意味ありげやない?」


マミさんは僕とグリさんの関係を知りたそうにウズウズしているみたいだ。


「どうせ、補導されたんじゃろ?日當は子供顔やし、チェリーやし」


ちょっと、明らかに最後の言葉は関係ないし、しかも…僕は殺意を感じた。


「関係ないでしょ!もう!」


僕は自分でも動揺しているのが分かった、だって…声が裏返えってるし、ちょっと過呼吸気味になってるもん。


「チェリーなのは知らなかったけど、昨日…職質したんだよ。ねっ!」


グリさん…チェリーは聞き流して良かったんですよ、律儀に繰り返してくれちゃってさ…。


「職質?アンタ何したと?」


マミさんが怪訝そうな顔をしている。



説明すると…こうだ。


ドミさんやツッチーさん、トミーさんと別れた後…遠回りしながら散歩がてらに歩いていたら、パトカーが僕の横に止まった。


僕は…少し寒い事もあり、フードを被っていて、別に顔を隠してるわけでも、怪しい事をしようと思ったわけでもない。


パトカーが止まった時にちょうど強い風が吹き、僕はフードで顔をカバーした…それが、パトカーが横付けされた瞬間と重なってしまい。


しかも、僕はお腹が減っていたのである物を食べながらに歩いていたのだ。


パトカーが横に止まり、窓が開いて声をかけられた…僕は何でこうもタイミングが悪いのかな?


よく補導もされるし。


警官が声をかけて来た事で僕は食べてた物をバッグへ隠した。だって、恥ずかしいじゃないか?


すると警官は「今隠した物を出しなさい」と威嚇するようなキツイ口調で要求して来た。


もう、出すしかないやん?


僕が恥ずかしくて隠した物…食べかけのうまい棒。


10円くらいで買える駄菓子。サクサク美味しい。


「ぎゃはは、日當、やっぱアンタ最高!」


説明を終えた僕にマミさんは大爆笑しながら背中をバンバン叩く。


「うまい棒で職質…やるわね日當君」


宇美さんもクスクスと笑う。


その時、声をかけて来たのがグリさんだったのだ。


「なんか、明らかに怪しくてさ、フード深く被ってるし…まぁ、風が強いせいもあったけどね。隠した物がうまい棒とは思わなかったよ、好きなの?」


僕は頷くしかない、これ以上何か話したらさらに突っ込みが入りそうだから。ちなみに僕は明太子味が好きだ。


「安いし、お腹減ってたから…」


「それに美味しいよね、俺も好きだよ、あっ、そうだ…昨日のお詫びに今度うまい棒たくさん買ってあげるよ」


グリさんはニッコリと笑ってくれた。


有り難いです。有り難いけれども、どちらかと言えば…ご飯がいいかも…。それよりも仕事。うん…、仕事欲しい。


「あ、そう言えば女子高生捕まえられたのは君のお陰なんだよね?ありがとう。」


グリさんは僕に律儀に御礼を言ってくれた。


ありがとう…ありがとうって言葉って不思議な力あるよね、なんか…言われただけで気分良くなっちゃう。


自己満足と言われたらそれまでだけどね。


「あ、いえ…女子高生って全員捕まったんですよね?」


痴漢だと言い張って無実の人達から和解金とかふんだくってたって後からヨーコさんに聞いた。


「うん、全員ね。彼女らは進学校の子でね、女子校の制服をワザワザ手に入れて学校がバレないようにしてたみたい」


彼女らが着てた制服は素行が悪い事で有名な制服で、捕まった彼女らの学校はいわゆるお嬢様学校。たぶん、罪をなすりつけるつもりだったのだろう。


「あの学校も地に落ちたもんね、アタシの時代は超お嬢様学校で、制服着て歩くだけで男子が振り返るって感じだったのに」


マミさんが不満げに言っている。


「そう言うなら私の時代は気軽に口聞いてくれないくらいにレベル高かったわよ」


とヨーコさん。


「そがん明治か大正時代の古か話せんでよ、あ…ヨーコちゃんの出身校か」


「えっ?」


僕は思わずヨーコさんを見た。


「あら?私にだって純な女学生時代があったのよ」


ヨーコさんはニッコリと微笑む。


「ヨーコさん、お嬢様だったんですか?」






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