表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人質人材派遣派遣株式会社  作者: なかじまこはな
人質人材派遣
26/35

まじめな仕事4

◆◆◆◆


「キム兄さん!」


僕は会社に着く間もなく、椅子に偉そうに座るキム兄の名前を呼んだ。


「ほんま、お前はうるさいのう」


キム兄は露骨に嫌そうな顔をしたけれど、僕は負けない。


「何か仕事ないですか?何でもいいです!何でも一生懸命しますから、仕事下さい!」


キム兄に縋るように言う。


「仕事欲しいんか?じゃぁ、コーヒー」


とキム兄はキッチンを指差す。


「はい!分かりました」


僕は速攻でキッチンに行った。


コーヒーをマグカップにそそいでハッと気付く。


「違います!お金になる仕事です!」


テーブルにコーヒーが入ったマグカップを置いた。


「砂糖」とキム兄は手を出す。


僕はその手にステックシュガーを置く。


「仕事下さい!お願いします」


僕は真剣にお願いをする、キム兄にお願いをするのはちょっと嫌なんだけど。


これも彼女の為。あの後、僕は彼女の相談に乗った。ミクちゃんはお金を僕に用意してとは言ってはいないんだけど、…でも、彼女にはあんな大金は無理に決まっている。


だから、僕がバイトを頑張ればすぐに大金が手に入る。


彼女の涙は見たくないもん…


「コーヒー入れるのも仕事のうちじゃ」


「お金くれるんですか?」


「何でワシがお前に金払わなきゃならんのじゃ」


意味…わかんないんですけど…?これだからキム兄さんは!


「お金になる仕事下さいよ!」


僕はムスッとした。


「金、金、お前はカネゴンか!うるさいのう」


キム兄はうざそうだった。


カネゴン?


「カネゴンって何ですか?」


僕はカネゴンと言う言葉にキョトンとする。


「何じゃ、知らんのか?」


僕は頷く。


「ジェネレーションギャップですねぇ」


僕の後ろでヨーコさんの声がした。


「日當君、仕事欲しいの?」


ヨーコさんはニッコリと笑う。


僕は高速で頷く。


「何ね日當、女?」


いつの間にかマミさんが居て、ニヤニヤしている。


「そ、そんなんじゃないですよ!」


僕は懸命に否定した。


でも、当たってはいる。


「なんじゃ、女孕ませたんか?」


「ば、バカな事言わないでくださいよう!そんなわけないでしょう!」


僕はさらに必死に否定した。


「日當はお子ちゃまじゃと思ってたんやけどなぁ、ドミと仲間や思うとった」


ドミさんと仲間?大学?僕はまたキョトンとなる。


「仲間って何ですか?」


「チェリーじゃ」


「はっ?」


「童貞って意味ですよ」


意味が分かっていなかった僕にヨーコさんがサラリと言う。


はっ?


はぁぁ?


童貞?


「何で、知ってるんですか!」


と僕は叫んでしまい、次の瞬間…後悔した。


3人が僕を見てニヤニヤしている。


キム兄なんて…なんか、憐れむような目をしているし。


「あ、嫌、違いますよ~」


僕は慌てて、否定をしたけど…きっと誤魔化せない。


「ほーか、女孕ませたんやないな。」


「ドンマイ日當」


とマミさんが僕の肩を叩く。


ドンマイ…ドンマイ言われても…慰めにもなってないんですけどぉぉ!


あー、もう!何で僕はこうも自滅しちゃうんだろう。


「自爆テロ…」


ヨーコさんがまたサラリと言う。


確かに自爆テロ…あぁ~、もう!


僕は自分を恨んだ。


「日當、コードネーム欲しい言いよったのお、チェリーでどうじゃ?」


「嫌です!」


ほら、絶対にこれから先…このネタで虐められ続けるんだぁぁ!


「チェリー、可愛かねぇ。良かやん似合うとるよ」


マミさんも頷いている。


「絶対に嫌です!日當でいいって言ったでしょう!もう、勘弁して下さい」


こうお願いしたって、明らかにキム兄とマミさんは暫くはネタにしそう。とりあえず、このネタから遠ざかりたい僕は話題をどう変えるか考えた。


チクチク虐められるのは苦手だ。


「お疲れ様。グリさん来られましたよ。」


ナイスタイミングで宇美さんがドアを開けて入って来た。


「おう、待っとった。日當、コーヒー用意しんしゃい」


話題が変わりそうなので、僕は喜んでコーヒーをいれにに行こうとする。


「気を利かせて、他の人の分も用意しいよ、チェリー君」


マミさんが僕の後ろ姿に声をかけた。


あぁ…その一言で宇美さんにまで僕が童貞だと知られてしまったじゃないかぁ~マミさんのバカぁ!と本人に言えるわけもなく、僕はコーヒーを人数分いれに行く。


「どうぞ」


人数分コーヒーをテーブルに置いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ