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人質人材派遣派遣株式会社  作者: なかじまこはな
人質人材派遣
21/35

コードネームは日當です5

マミさんはプンプン怒りながら戻って来た。


「ご苦労様」


ヨーコさんがマミさんの前にコーヒーを置く。


「躾くらいしろって」


まだ怒りが治まらないのかドカッとイスに座る。


「あ、あの…すみません、僕のせいで」


とりあえず謝った…後が怖い。


「アンタが謝る事やないやん、アイツら人の迷惑もなんも考えとらん」


「最近のお母さんは子供を叱れないからねぇ~全く嫌な世の中ね」


マミさんの言葉に賛同するようにヨーコさんがタバコを吹かしながら言う。


「親が叱らんで誰が叱るんか?って話よね、ヨーコさんタバコ1本チョーダイ」


とマミさんはヨーコさんの前に手を出す。


「こんな体に悪いもん吸うの止めなさいよ」


と自分もタバコを吹かしながらに矛盾を口にするヨーコさんはポケットからタバコを出してマミさんに渡した。


「そう、タバコ…こがんタバコの煙りいっぱいの所に小さい子連れて来てから、本当に子供ん事考えとっちゃろか?」


マミさんはまだ機嫌が悪いままだ。


「きっと…家事でストレスとか溜まってるんじゃ…」


反撃を受けるかも…と思いながら恐る恐る言った。


「けっ、世の中に主婦は腐る程おるし、誰だってストレスは溜めとる…私は子供をほったらかして話し込むのが気に入らんと!もし、外に出て事故にでもおうたら、とがんするとよ」


…マミさんは旦那の金で優雅にご飯を食べる事に怒ってるのではなく。子供をほったらかす行為に腹を立ててるのか。


なんだ…そっか、ご飯も作れと言ったのは外食はあまり良い物ではない…そう言いたかったのかな?


タバコの煙が充満してるもんなぁ。


僕の席もすでにタバコを3人吸っていて、目の前に座るキム兄はわざと僕にタバコの煙を吹き掛ける。


それを露骨に手で払いながら「マミさん、まるで子供居るみたいな発言ですね」と冗談だった。


冗談のつもりだったのに。


「いるよ子供、女の子一人」


そう言われ「えぇ~!マミさん子供居るんですかぁぁ」僕は驚きで立ち上がりシャウトしてしまった。


「日當ウルサイ!」


キム兄、マミさんの言葉がハモる。


「す、すみません」


僕は慌てて座った。


「子供…いるんですか?」


再度確認をする。


「いちゃ悪い?」


不機嫌そうに答えるマミさんに「悪く…ないです」と答えるしかなかった。


…なんだろう、なんか…わかんないけど、サクッと小さい刃物が胸を突く。そんな感覚を覚えた。



「ありがとうございました」


僕は食事をおごってくれた宇実さんにお礼を言って、そのまま学校へと向かう。


バスの中でも…ずっと胸がチクチクした。


子供…小さいのかな?旦那さんどんな人かな?


あれ?旦那さん居るなら…なんで、あんな仕事してるんだろう?


そんな事ばかり、ずっと考えてたらバス停が過ぎていた。


「はぁ~」


大学に着くと授業は教授の都合で休講となっているし、もう、無駄にお金払ってる気がしてならない。せめて、小学校みたいに連絡網回すとか。


前の日に知らせるとかすればいいのにさ。あ~もう、アホくさい!帰って寝る!休講に…腹立つんだよな?


多分…そう、方向を変え、歩き出すと。


「日當~」


と後ろから声をかけられ、振り向くと友人の坂元君が手を振り近付いて来た。


「日當はもう帰るの?」


「うん」


「学食行かない?」


「…帰る、お金ないし…」


お金無いのは本当、…でも、それよりも気分的に無理だった。理由は分からないけれど、へこんでいる自分が居る。


「飲み物くらいならおごれるよ、相談があるんだ…いいかな?」


坂元君は何時になく元気なさそうに見えた。


「相談?」


「…うん、彼女の事…なんか最近、様子がおかしいんだ」


彼女の事?振られたばかりの僕に。なんかムッと来て、断ろうと思った瞬間に「彼女…きっと浮気してる」泣きそうな顔でそう言われ、僕は彼と一緒に学食へと向かった。


なんか…人事じゃないかも。


同情に似た気持ちで、学食のテーブルに着く。


「ごめんな、呼び止めてさ」


坂元君は言葉通りにコーラを僕の手に渡す。


「いいよ、それより浮気って…」


「うん…」


坂元君は今にも泣きそうな顔で椅子に座った。


「最近、彼女とデートもしてないし、電話しても出てくれないんだ」


うん?それだけで浮気?僕は来た事をちょっと後悔する。


「忙しいだけじゃない?」


「でも、今までそんな事無かったんだ」




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