コードネームは日當です3
愛と言う言葉に僕以外全員が笑った。
なんで?ここは笑うとこ違うし!僕はなんか…恥ずかしさで逃げ出したくなった。
そこまで笑う?
「日當、アンタ最高!」
マミさんが1番笑っている。そこまで…笑わなくても。なんか…ちょっと切なくなった。愛って…そんなに爆笑される言葉なのかな?
「愛って日本語まだあったんだねぇ」
ヨーコさんがしみじみとした表情で僕を見ている。
「愛は死語じゃないです!そこまで笑う事ないじゃないですか!だって愛はお金で買えないし」
僕は切なさを通り越し、段々とイジケモードに突入しそうになってきた。
「あはは、そうやね…確かに愛はお金じゃ買えんね…ばってん、心はお金で動くんよ」
マミさんはそう言ってまだ笑っている。
そこまで…笑うか普通…僕は気分が落ち込んできた。愛は…お金で買えない。買えないで欲しい。
そんな世の中にならないで欲しい。そう考えてたら余計に気分が落ち込んだ。
愛…って存在しないのかな?だったら僕と彼女の間にも愛は無かったのかな?
僕の脳裏に彼女の可愛い笑顔が過ぎる。
ううん、違う!
あの眩しい笑顔には愛はあった!
そう思い直していたのに、ちびっ子が2~3人僕達のテーブルの周りを騒ぎながらぐるぐると回り出だす。
あぁ、もう!
お昼時のせいか家族連れが多い…そして感じるのはちびっ子の母親らしき3人組の女性達は子供に注意するでもなく自分達の会話に夢中。
子供は大人しく食事をしない…自分も子供時代もそうだった。
すぐに飽きちゃうんだ…母親達も少し注意すればいいのに…僕はそう思っても彼女らに注意は出来ないでいる。
「なぁ、君らうるさいけん、お母さんとこ言ってくれる?」
マミさんがそうハッキリと注意をしているが口調はいつもより優しめだ。
流石のマミさんも子供には優しいんだな…意外な一面と言うのかな?
ちびっ子達は注意が利いたのかすぐに向こうに行った。
暫くすると食事が運ばれて来た。
人の奢りは本当に美味しい…パクパクと口に運ぶ僕にヨーコさんが、「お皿出して」と言う。
不思議に思いながらに皿を渡すと。運ばれてきたご飯を半分以上皿に移してくれた。
「そんな、いいですよ~ヨーコさんの分無くなりますよ」
僕は遠慮がちに言う。
「あ~いいとよ日當、ヨーコちゃんはあまり食べんとよ、いつも誰かに分けとるから気にせんとき」
とマミさんに言われた。
「そう、育ちざかりが食べれば良いでしょ?」
とヨーコさんはニッコリ。
「ありがとうございます」
ハッキリ言って有り難い…お金が無いから食事をケチってて、今朝も食事抜きだったから。
ヨーコさんはオカズまでもくれて、僕は有り難く頂いた。
「ワシもわけてやるけえ」
とキム兄はランチに着いて来たサラダを僕の前に出す。
僕はサラダを見つめる。明らかに…野菜が嫌いなんだな…と分かった。
「嫌いだから僕にくれるんですか?ちゃんと食べて下さいよ!」
「野菜は嫌いじゃない…食べんだけじゃ」
それを嫌いって言うんじゃないかな?
でも、それ以上突っ込みを入れると何されるか解らないからお礼を言ってサラダを貰った。
「あ、僕にもコードネーム下さい!ドミさんとかもコードネームなんでしょ?それとさっき、知らない名前が沢山でましたよね、スタッフ何人居るんですか?」
サラダを食べながらチラリとキム兄を見る。
「コードネーム欲しいんか?生意気な」
もう…なんでこう来るかな?この人は…
「コードネームねぇ~皆コードネームだもんね」
宇実さんが何か考えてくれてるかのように腕を組んでいる。
「日當でよかやん」
とマミさん。
「え、ヤダ!皆コードネームなのにぃ」
「日當で決まりやな」
人の話をまるで聞く気がないキム兄さんが頷いている。
「ヤダって言ってるじゃないですか~」
僕は必死で喰らいつく。
「じゃぁポチ」
とキム兄
「嫌です、犬じゃないんですよ!」
「じゃぁ、タマ」
「だから猫じゃないって…」
「チビ」
「僕チビじゃありません!170以上はあるんです!」
「アホ」
「もう、ただの悪口になってるじゃないですか!」
「ハゲ」
キム兄は明らかに面白がっている。
「もう…日當でいいです」
僕は根負けした。
「最初からそう言えばよかろうもん」
とマミさんが呆れ顔で言う。
くそう…絶対にムカつく根負けした僕は悔しがるしかなかった。