表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人質人材派遣派遣株式会社  作者: なかじまこはな
人質人材派遣
18/35

コードネームは日當です2

「じゃぁ、一緒に食べに行かない?奢ってあげるから」


と宇実さんは優しく微笑む。優しい…なんて優しいんだこの人は。


キム兄さんも見習えばいいのに…。


「いいんですか?」


僕は二つ返事で答えた。


「あ、いいとこ知っとおよ」


とマミさんが話に加わる。


「じゃぁ、ヨーコさんも一緒に行きましょうよ」


宇実さんがヨーコさんも誘い、早速にマミさんが言うイイトコに行く事になった。


でも…


「なんで…キム兄も居るんですか?」


広い店内に入り、店員に案内されたテーブルに着くと僕の目の前にはキム兄さんが居る。


「飯食っちゃ悪いんか?」


喧嘩ごしな言い方をしながらキム兄はメニューを見ている。


「いや…事務所…いいんですか?」


今日居たスタッフ全員が食事に来たら誰も居なくなるし…電話番とか…金庫番とか要らないのかな?…と僕はいらぬ心配をしてしまった。


「大丈夫、ちょうどドミかツッチーかトミーが来てるはずだから」


とヨーコさんが灰皿を手にしながら答える。


ドミさんの他にスタッフ居たんだ…どんな人達かな?


仲良くなれたらいいけどなぁ…。


「そう言えば皆さんニックネームなんですよね?本名はお互い知ってるんですか?」


「しらん」


僕の質問にキム兄が即答。


知らない…知らない?はぁ?


「知らないはずないでしょ?皆さん履歴書出すんだし、僕だってキム兄さんに名前聞かれたから答えましたよ」


僕はどうせキム兄の冗談だと受け取っていた。


「お前くらいじゃ、本名をバカ正直に名乗ったのは」


キム兄さんは僕を見ずにまだメニューを真剣に見ている。


優柔不断なのかな?


「バカ正直…って…普通、聞かれたら答えるじゃないですか」


「お前の普通が一般で普通だとは思わんように」


そう言ってキム兄はようやくメニューを決めたのか僕の顔を見た。


「確かにそうよねぇ。私も…初め見た時に時給一万だし、名前も胡散臭いでしょ?面接の時に思わず偽名使っちゃったわ、それが今のコードネームよ、ニックネームじゃないからね」


と宇実さんはニッコリと微笑む。


おっとりとして人を騙せそうもない彼女でさえ偽名…都会って…正直怖い所なんかな?僕には理解出来ない。


「そがん事より、ちゃっちゃとメニュー決めりぃよ日當、こっちは腹減って死にそうなんちゃが」


マミさんが僕の顔にメニューを押し付ける。


「止めてくださいよ、すぐ決めますから」


僕はすぐ目についたメニューに決めた。僕がメニュー決めたのが最後だったみたいで、ヨーコさんが全員の分をまとめて店員に注文をする。


話を元に戻すけど全員が本名を知らない会社ってあるん?僕は益々、バイトを辞めたくなった。


「しばらくは辞めれんからのぅ」


また、キム兄は僕の考えを読んだかのような言葉を発した。僕はそんなに顔に出やすいのかな?


今すぐ、自分の表情を鏡で確かめたい気分だ。


「だって、明らかに怪しいじゃないですか…全員が本名を知らないんですよ、しかも危なさそうな仕事だし…それに大体…人質人材派遣って法には触れないんですか?具体的には僕は何の仕事すればいいんですか?」


怪しいと思えば思う程に僕は少しでも情報が欲しい。これは人としての当たり前の感情で、興味本意ではない。


「未成年はおらんし、法にはギリギリ触れとらんし、バレなきゃ大丈夫じゃ」


「はぁ?」


また…信じられない事を口にするんだよ…この人は…。


「バレなきゃ…ってそんな問題なんですか?皆さんは変に思わないんですか?」


僕の持つ常識は一般常識だよね?間違ってないよね?可笑しいのはキム兄だけだよね?他の3人に同意して欲しくて僕は彼女らを見つめた。


「変だと思ったら仕事はやってないわよ」


宇実さんはまたニッコリと僕に微笑む。


「日當、世の中、金。金がないと何も出来んやろ?ウチらは金さえ貰えれば文句言わず働く、それがウチらの常識」


とマミさんはポケットから煙草を出すとライターで火をつける。


「金…って、そんな…何でもするって僕は人殺しとかは嫌ですからね」


僕は頭の中で変な想像をしていた…とてもブラックな…


「アンタは飛躍し過ぎ、ウチらは人は傷つけん、助ける方…日當だって時給に釣られて来たっちゃろ?」


確かにマミさんの言う通り…時給に釣られて来た。でも、金が全てとかは思わない。


「世の中…お金とかだけじゃないですよ、お金で買えないモノとかだってあるし」


「へ~例えば?」


マミさんの質問に僕はちょっと迷って、「愛…」と答えた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ