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人質人材派遣派遣株式会社  作者: なかじまこはな
人質人材派遣
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やっつけ仕事8

「忘れとった」


キム兄は悪いという表情もなくそう答える。


「仕事内容は?」


「今からするんじゃが」


ヨーコさんは、フ~ッとため息をつくと僕をソファーの方へ手招きをし、「私が説明するから」と笑顔で言ってくれた。


…でも、聞いて僕は凄く後悔するんだ。


ヨーコさんの説明では、僕があの時間にあの電車に乗ったのは仕組まれた事だったのだ。


僕のアパートをキム兄さんは知っている、だから急いで用意すれば、あの電車に間に合う事くらい分かってた。


そして、僕は釣りの餌…


釣るのは僕にパンツ見たと因縁つけて来た女子高生。


あちこちの駅で僕のようにパンツを見たと因縁吹っかけられ、お金を取られた被害者が沢山居て…

犯行は決まって月曜日か金曜日だった。


駅も疎らで、とりあえず天神やら香椎やら、めぼしい駅にスタッフを配置していたんだとか。


で…1番、有力候補の博多駅には僕とマミさんと宇実さんが…あと、グリさんて人も。


で、餌の僕に見事に女子高生は引っ掛かってくれたって訳。


…僕は餌だったんだ。


餌?うん?待てよ、このバイトって一体何?


「人質人材派遣会社じゃボケ、書いてあるじゃろうが」


僕の質問の答がこれだもんなぁ。


キム兄さんはどうして態度が横柄なのかなぁ…


「態度が横柄だと言ってるみたいな顔ね日當君」


ヨーコさんが僕の心を読んだかのような発言をした。


「お、思ってナイです…あの…待って下さい…バイトって…あの」


僕は頭の中で聞いた話を一つづつ繋げる。


どう繋げても危険と得体の知れないという二つの言葉が見え隠れしている。


人質人材派遣を言葉通りに解釈すると、人質になる人材を派遣する会社って事になる。


なる…のかな?


いやぁ、ならないよ普通…そんな人権無視な仕事あるわけがない。


実にありえない!


イケメン俳優の名台詞を真似て現実逃避をはかる僕に、


「今、頭で考えた内容がウチの会社の仕事内容ですよ」


とヨーコさんが笑顔で留めをさす。


「はぁ?」


僕は眉をハの字にしてヨーコさんに聞き返した。


「やっつけ仕事じゃろ?」


何が?


キム兄さんの意味不明な言葉にさらに僕の顔は険しくなる。


「僕…もう、仕事したって事ですか?何の説明もなく…」


「ほーじゃのう」


キム兄は悪びれた様子もないように僕の目には映って、「説明くらいして下さい!」僕は自分でも珍しく強気に出た。


…なんだ、僕だって強気になれたりするんじゃん。と、ちょっと自分を心の中で褒めてみる。


「聞かんからじゃろ」


「はっ?」


まさに、はっ?と言う感じなキム兄の返事…聞かんから…って何をどう聞くんですか!…って強気に出れたらなぁ…。


キム兄の余りにも横柄で強気な態度に僕は何も言えなくなった。


「日當はターゲットになりやすいんじゃ、だからスカウトした」


「はい?」


今度は声が上擦った。


何を言い出すんだこの人は…、僕はドミさんにティシュを貰って、時給一万に惹かれて電話したのに…何を言って…んだか…。


「すみません、よく意味が分からないんですけど」


僕はとりあえず、そう聞いた…全く意味が分からない…この人は。


「ワシが目を付けた奴にティシュを渡して電話するように仕向けるんじゃ、お前もなぁ…その一人じゃ…けど、お前だけだった…電話するのに10分も悩んだのは…ホンマ、トロイのう…お前は」


はい?


スカウト?


トロイ?トロイの木馬…じゃないか…。


はぁ?待って、待って…じゃぁ…ドミさんは僕にしかティシュを配ってないって事?


じゃぁ…電話した時の「遅いじゃろ」は僕が電話かけるのになかり悩んだから?


えっ?そしたら…キム兄は博多駅に居た?


「ホンマ…日當はトロいのぅ…脳に考えが行くまでに何分かかっとんじゃボケ!」


キム兄の言葉で顔を上げてマジマジと彼の顔を見た。えっ?嘘…僕って…はめられた?


「言っとくがのぅ、スカウトじゃからな」


心を読めるのか、この人は…。


「お前の顔に書いてあるからの」


「なんで分かるんですか、僕の考えが!」


余りにも心の声にキム兄が返事をするから僕は驚いてしまった。


「単純じゃから」


「…そうですか」


なんとなくガッカリした…。まぁ、テレパシーとか持ってたらそれはそれで怖いけれどさ…。


「僕が…このバイトに向いてるからスカウトしたんですか?」


「向いてるのぅ…ワシの目に狂いはない…これからもお前は役に立つと思うけぇ」


何となく…僕はニヤニヤとなってしまった。単純?そうかも。




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