出会い
入学式の朝。私は元気よく家を出る
「行ってきまーす!!」
「つばき!お弁当、お弁当忘れてる!」
あはは・・・初日から忘れるとか(笑)そういえば、高校からはお弁当なんだっけ。
「ごめん!お母さん、ありがと!行ってきまーーす!」
まだまだ十分に間に合う時間だが、私は走る。春の暖かい風が気持ちいい。学校につくと既に多くの生徒が集まっていた。みんなの視線の先にあるのは、クラス表だ。人が多すぎて遠くからじゃ見えないので、人の間に割り入って見ることにした。
「すみませんっ、ちょっと通してください」
やっと前につき、表を見る。
「えーっと、わたしは・・・あっ!3組だ!」
どうやら、クラスは5組まであるようで、それなりに人数が多い。
「あなたも3組なんですか?一緒ですね。」
突然横から声がした。すごくかわいい子だ。綺麗なピンク色の髪を横で一つに三つ網みしている。
「あ、うん。よろしく!」
少し会話をし、教室まで一緒に行くことになった。私とその子が歩いていると、誰かに肩を叩かれた。
「あの、これ落としましたよ。」 視線の先には男の子。持っているのは私のハンカチ。
「ごめん、ありがとう!」
どこで、落としたのだろう・・・。人の間に割り入ったときか?それより、私は男の子に叩かれた時の妙な違和感のほうが気になっていた。男の子はすぐ歩いて行ってしまったが、私はその後も何かに入るような、押し出されるようなよくわからない、でもすごく嫌な感じの違和感が体から離れなかった。
「あの、何か気になることでもありましたか?まさか、あの方に一目ぼれ♡・・・とか?」
え、そんなに私あの人を見ていたのだろうか・・・。そんなことを言われ、私はテンパる。
「ち、ちがうよぉ!それよりさ、まだお互いの名前知らないよね?」
私は必死に話題を変える。
「私は藤乃つばき。よろしく!」
「私は桜井かぐやです。よろしくお願いします。」
お互いの名前が知れた事で、すこし打ち解ける事ができた。新入生がたくさん歩くこの廊下で、私は昨日考えていたことを思い出す。(同じ力を持つ人···やっぱ、見ただけじゃ分からないよね笑)
「つばきさん、どうしたんですか?やっぱり、あの方に・・・♡」
「ち、ちち違うよっ!少し、これからの事とか考えてただけだし!あ、こっちだっけ?教室。」
「はい。楽しみですよね、高校生活。」
教室に入ると、すごく賑やかだった。(もう、みんな仲良いんだなぁ)自分の机に荷物を置き、さっきのハンカチを拾ってくれた人がいるのに気がついた。もう一度、お礼を言っとこうか。
「あの、さっきはありがとうございました!同じクラスなんですね。一年間よろしくお願いします!」
男の子は、読んでいた本を閉じ、
「いえいえ、偶然拾っただけですから。こちらこそ一年間よろしくお願いします。ところで、名前は···」
やっぱり、何か違和感がある。この男の子限定だ。どうしてだろう···なにか、なにか···
「あの?」 「あ、すみません!! 藤乃つばきです。」
「僕は 細井かなたです。あ、そろそろHR始まるので」
「あ、そうですね。それじゃ」
自分の机に座り、違和感について考える。最初に会った時と変わらない、あの違和感・・・。ボーっとしていると、担任の先生らしい人が入ってきた。
「おはよう!みんな、入学おめでとう!これからこのクラスの担任になる横井だ。わからない事があれば、なんでも聞けよ!」
熱血タイプの先生だ。目をつけられるとめんどくさいんだろうなぁ~。そう思い、クラスメートの反応を見ると、結構みんなそんな感じだ。でも、かぐやちゃんだけは目を輝かせていた。(かぐやちゃん・・・目輝いちゃってるよ・・・苦笑)HRが終わり、さっそく移動教室。体育館で学校の説明を聞くらしい。かぐやちゃんと歩いていると、
「お前っ!今、なにしたっ!」
廊下にどなり声が鳴り響いた。男の子どうしの喧嘩か?入学初日から・・・大丈夫?よく見てみると、絡まれてるのは、かなたくんだ!かなたくんは別に怯えもせず、堂々と構えている。というか、本を読んでいる。それが、気に食わない相手は
「お前なぁ!なめてんのか!!後で体育館裏に来い!!!!!」
ぷっ(笑)体育館裏っていつの時代よ(笑)かなたくんはそれを聞いたのか聞いてないのか、わかったとだけ言った。騒ぎが落ち着き、みんな移動し始める。
「私たちも行きましょ。つばきさん」
「そうだね。あ、ていうか、つばきで呼び捨てでもいいよ?私も、かぐやって呼び捨てにするし!」
かぐやはとてもうれしそうだった。体育館での学校説明が終わり、お昼だ。教室を見ると、かなたくんがいない。(あ、そうだ。体育館裏!)私は走ってそこへ行った。どうしても気になったのだ。体育館裏で二人が話している。陰に隠れて耳をすませるが、なかなか声が聞けない。次の瞬間、私は目を疑った。かなたくんじゃない方の人から電気が出ているのだ。電気、雷とでもいうのだろうか。とにかくその類だ。私はやばいと思い、とっさに二人の前へ姿を出してしまう。
「かなたくん、あぶないっ!!!!」
私は、ためらいもせず火を放つ。かなたくんも、もう一人の人も目を丸くしていた。
「あんた、なんでそんなことできるんだよ!?」 もう一人の人に言われた。もう、おしまいだ。絶対、変な噂を流される・・・。ん?でも待てよ?さっき、電気の類がこいつから・・・・
「あんただって、同じようなもんじゃない!」
私は必死で訴える。相手と睨みあいが続く。すると、かなたくんが
「待て、二人とも。少し話し合わないか?」
ということで、話し合いスタート。まずは、自己紹介からだ。
「藤乃つばきです。」
「細井かなた。」
「大森ゆうがだ。」
教室にいた時のかなたくんと全然違う・・・。なんか、少し怖いなあ。かなたくんが話を進める。
「一人一人、力を言ってけ。」
やっぱり、みんな持ってるんだ。かなたくんの力ってまだ見てない・・・。というか、さっきのかなたくんの笑顔はどこに行ったのか・・・。とりあえず、言われたとおりにする。
「火の力です。」
「俺はとばせ。」
え、かなたくんの力が一番聞きたいのにーー!
「俺は、雷だ。」
あんたはわかってたよ、ゆうがくん。
「かなたくんの力ってなに?」
「俺も聞きたいな。細井お前、その力はなんだ?」
じいーっとかなたくんを見る。するとかなたくんが
「なんだ、まだ気づいてないのか。おれは結界だ。」
結界?なにそれ、なにそれ。そんなのあるの!?
「やっぱりな・・・。」
「え、ゆうがくん、わかってたの!?」
びっくりだ。わかってたのか、でもどこで?
「ああ、わかってた。こいつとすれ違ったとき、いつもはってる俺の電気バリアに何かが触れた。」
電気バリア?何それ。そんなことできるの!?というか名前(笑)
「それで、俺はこいつに怒鳴ったんだ。」
あ、そうなんだ!そういう事だったのね。じゃあ、私が、かなたくんに感じてた違和感ってかなたくんの結界の力だったんだね。納得、納得。
「俺は、いつも結界を自分の周りにはり身を守っている。」
かなたくんもかっ!
「ちょっ、二人とも日ごろから自分の周りで何か起こってんの!?」
「「いや、ぜんぜん」」
だよねぇ~・・・。じゃなかったら、困る。安心したところで、チャイムがなる。お昼休み終了だ。ん?え、まじで?
「やばっ!お弁当食べてなーーーーい!」
私は二人を置いて先に帰った。