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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
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キリクの村

「ホロさんがいらしたぞ~。」

「おお。いらっしゃい。」

「来てもらえて良かったわ。だれかっ。ホロさんが来たって村長のとこに知らせて~。」



 野宿の後、朝早くにキリクの村に到着するや村人から熱烈歓迎を受ける。

 どうやら南で薬が不足しているというのは、かなり深刻なようだ。



「大歓迎だね。」

「この村はいつもそうだぜ。周囲の村の拠点になってっから、薬はいくらあってもいいのさ。何より腕のいい薬師が3人もいる。」

「そりゃ多いね。」



「ジェーンも良く知ってるやつらだぜ?ほら来た。」

「ホロさ~ん。あれ?あ~っっ。先生もいる~っっ。」

「レベッカじゃないか。あんた達、この村の出身だったかね?」



 元気よく馬車まで走ってきた中年の女性に、ジェーンはかつての教え子を思い出す。

 レベッカはこの辺りで初めて薬師兼冒険者になった女性だ。



 母親が魔法使いだったが、黄色草が手に入らず「魔法使いの風邪」をこじらせて死んでしまった。

 それを機に、薬師を育成しているとウワサになっていたギグルシュカの街に修行に来たのだ。



 ジェーンは当時を思い出す。

 たしか、レベッカ以外にも薬師修行に来た兄妹がいたはずだ。



 当時、この辺りには薬師は1人もおらず、病や出産の際の死亡率がとても高かった。

 それを(うれ)いていた村長が、レベッカの旅立ちを機に自分の息子と娘もついていかせ、何とかかき集めた金を持たせて誰か1人でも薬師になるようにと望みを託したのだ。



 ホロは薬師は3人と言ったが、他の2人はその兄妹だろう。

 多くの弟子を育てたが、同じ村の出身で同年代の薬師志望など滅多にあるものではないため、印象に残る3人だった。



 出来が良かったわけではないが、村の期待を背負って必死に薬を学ぶ弟子たちの姿をジェーンは脳裏に蘇らせていた。



「元気そうだね。」

「ええっ。「薬師は身体が資本」って先生に言われたものっ。倒れてなんていられないわっ。」

「ボーンとラシュカはどうしてる?」



「薬屋兼村長やってるわ。旦那は今はいつもの見回りね。薬の採取も兼ねてるけど、村長になってから毎日やってるのよ。ラシュカもここで元気に薬師をしてるわ。今調合中なの。先生が来てるって聞いたら喜ぶわ~。是非、会って行ってっ。」



「心配しなくても俺たちは薬を届けに来たんだぜ?お前らの店に行くに決まってんだろ?」

「あら。そういえば、そうね。」



 呆れ気味のホロの言葉に興奮したレベッカが我に返る。

 昔も興奮しやすいタチだったが、変わっていないようだ。



 ボーンは後を継いで、村長としても薬師としても立派に村を守っているようだった。

 ボーンとレベッカは夫婦になったと一度手紙を受け取った。忙しいのと郵便が高いのとでろくに返事も出来ていなかったが、この様子だと仲良くやれているらしい。



 ラシュカは結婚したかわからないが、元気に働いていることはわかった。

 ホロに対する村人の反応を見れば、3人とも薬師として良くやっているようだ。



 弟子たちが薬師として立派にやっている。

 ジェーンにはそれが何よりの良い知らせだった。





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