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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
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依頼の詳細

 ジェーンは話を聞いて、すぐさま理由に思い当たった。

 ジェーンは薬師として名を馳せてるが、本業は魔法使いである。

 長くあちこちを旅してきて、珍しい他国の魔法を習得したりもしている「勤勉な」魔法使いだった。



 そんなジェーンが習得した魔法のうちの一つに『結界』というものがある。

『結界』とは一定の範囲を薄い亜空間の膜で区切る魔法だ。

 これをかけた範囲は、外からも中からもあらゆる干渉が出来なくなる。



 つまり、話題に上った遠くまで一瞬で移動する『移動』の魔法も結界の範囲には使えないのだ。

 まあ、そうは言ってもこの魔法は万能ではないので、結界の外側の部分ごとごっそり持っていけば『移動』の魔法は使用可能ではある。



 だが、ジェーンの結果の範囲は馬車数台分にも及ぶため、それごと移動しようとするにはとんでもない魔力を消費するハメになり、相手の魔法使いの方が先にぶっ倒れる可能性の方が高かった。



 それに、『結界』自体があまり知られてない魔法なので、それに思い至る魔法使いは少ない。

 他にも弱点はあるが、『結界』は相手の手が見えない状態で取るには使える魔法であった。



「うん。ジェーンの『結界』でくるんじゃえば移動の阻害も出来るし、あまり知られてない魔法だから向こうもつられると思うんだ。」

「まあ、そうだね。護衛は誰だい?」

「イージスに頼もうと思ってるんだ。彼、強いし、ジェーンと何度か組んでるし。」



 イージスとはBランクの冒険者だ。

 童顔で優しげな顔立ちのため初心者に間違われることが多いが、もうすぐ30になろうかという青年である。



 経験も腕前も確かな上に性格も穏やかなため、こういう依頼主が危機を感じてピリピリしている依頼をよく任されている。

 今回は、その初心者に間違われる顔立ちを囮にする気なのだろう。

 年寄りのジェーンとヒヨっ子冒険者に見えるイージス、この組み合わせなら相手も油断するというわけだ。



「ひとりだけかい?」

「ホロさんの荷馬車にそれ以上は乗らないよ。」

「ホロの馬車かい。そんなら3人までだね。でも、あんなボロ馬車でつれるのかい?」



「他に出てくれる馬車もいないしね。逆に、そんな中出る馬車なら狙われるかなって。」

「まあ、他にないなら狙われそうだね。荷物は薬だし。」

「うん。ホロは結構この辺で顔が売れてる薬屋だから、中身が薬だって相手は知ってると思う。」



 ホロとは元Bランク冒険者の薬屋でジェーンの弟子だ。

 客層は主に一般の住人で、小さいながらも良心的な値段で良い物を売っている。

 ホロは見た目ごついおっさんなので一見の客には怯えられるが、愛想の良い可愛い奥さんがいるので店は何とかなっている。



 彼は今でも鍛錬を欠かしておらず、全盛期ほどではないとはいえ盗賊ごときにやられるタマではない。

 護衛を付けなくていい身軽さから、ホロは近くの村々に薬や薬草を収める仕事もしている。

 今回も近くの村に行く定期便なのだろう。小さな馬車なので、前にふたり後ろの荷台にひとりが限界だ。



「あいつもこんな時期にご苦労なことだね。」

「他の薬屋さんには出来ないから。おかげで、ずいぶん薬がいきわたるようになったよ。」

「…そうだね。」



 ジェーンは最初にこの街に来た頃を思い出す。

 街中でさえ、病気になると隔離されて、死ぬまで放置されているのが普通だった。

 薬を手に入れられるのは金持ちだけ。



 それがここまで来たのだ。

 ジェーンは下で会った少女を思い出す。

 ああいう子がいるなら、この先もここは大丈夫だ。

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