ギルド長の呼び出し
「ジェーンさん。これが買い取りの金額です。お確かめください。…後、ギルド長がお呼びです。」
「確かに受け取ったよ。…で、何だって?最近耳が遠くなってねえ。」
「ジェーンさん…。」
「ふう。仕方ないねえ。」
困り顔のパティにため息をつきながら答えて、ジェーンは薬の代金の金貨1枚と銀貨8枚に銅貨5枚を受け取る。
ちなみに、ジェーンの薬はポーションが銅貨10、ハイポーションが銅貨30、マジックポーションが銅貨50で買い取りとなっている。
通常のポーションが銅貨50なのから考えれば激安である。
もちろん、ギルドで売る際にはポーションが銅貨30くらいになっているが、それでも安い。
間に人件費がかかっていないとこれだけ値が違ってくるのだ。
もちろん、材料持ち込みならギルドの買い取り価格より安くで売ってもらえる。
だから、『薬師ジェーン』の名前はこの近辺の冒険者の間では有名だった。
こんなことをしては本職の薬屋に恨まれそうだが、ジェーンの場合その心配は無かった。
そもそもこの近辺は昔は魔物の多い地域であったため、薬師が住み着かなかった。
そのため、常に薬が追い付かない状況で、薬師兼業の冒険者だったジェーンはギルド専属薬師として来て欲しいと、破格の依頼料を提示されたくらいだった。
後年、ジェーンがギルド長の依頼で薬師の育成に力を貸したため、現在の街には地元出身の薬師が数多く住み着いている。
そのため、大半はジェーンの教え子であり、恨まれるどころか良い情報元になっていた。
その薬師の育成を依頼したギルド長だが、珍しいエルフでありジェーンの昔のパーティー仲間だったりもする。
ただ、昔のよしみでちょくちょく呼び出されては困った愚痴を聞かされるので、ジェーンは辟易しているのだ。
「待たせたね。薬は昼には必ず届けるよ。おかみに渡せばいいかい?」
「いいや。昼には俺とザックのどっちかが下にいとくよ。薬はそこで受け取る。」
「わかった。代金は銅貨10枚だよ。きっちり用意しときな。」
「その値段でいいんですか?」
「俺らは持ち込みだからな。」
「助かるよ。ジェーン。」
ディルとジェーンのやり取りに、まだいたカレンが驚きの声を上げる。
ディルとザックはまるで昔からの知り合いのようにカレンに黄色草を見せて、自分たちの状況を説明していた。
どうやら、カレンは気に入られたようだ。
まあ、疾風の牙は女の子に無理強いする連中ではないので心配ないだろうと、代金を伝えるとジェーンはさっさとその場を離れた。