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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
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新人冒険者

 声をかけてきたのは15、6の小柄な少女だった。

 茶色い髪に大きな黒い目が特徴的な可愛い娘だ。



「あ、あの。ジェーンさんですよね?私、カレンっていいます。」

「…惚れ薬なら無いよ。あんなのは人が作れるもんじゃない。あきらめな。」



 カレンが何か言う前にジェーンが先制する。

 よくあるのだ。ジェーンの見た目も手伝って、惚れ薬だの媚薬だの売ってくれというのが。



 媚薬の方はともかく、惚れ薬なんてものはジェーンにも作りようがない。

 人の心を変える薬などというものは存在しないのだ。



「え?いいえっ。違いますっ。私、最近冒険者になったFランクなんですけど、薬師志望なんでジェーンさんにご挨拶をと…。」

「おや。そうなのかい。そりゃ悪かったね。知ってるようだけどCランクのジェーンだよ。頑張りな。」

「はいっ。ありがとうございますっ。採取先でお顔を合わせることもあるかと思いますが、よろしくお願いしますっ。」



 ジェーンの勘違いに気付いて、カレンが慌てて冒険者証を見せながら訂正する。

 それを見てジェーンも驚いて名乗り返す。同業者への礼儀だ。



 ちなみに、ディルとザックも横で驚いていた。

 それもそのはずで、カレンのように薬師志望の冒険者など滅多にいないからだ。



 薬の材料が取れる場所は魔力の強い森や洞窟が多いため、魔物と戦う必要があるし、取ってくるだけで時間がかかる。



 薬師は小さな村でもそれなりに儲かるため、わざわざ時間をかけ、さらに危険を冒してまで材料を取りに行く者は少ない。

 採取のほとんどはギルドへ依頼され、冒険者のいい収入源となっている。



 逆に、冒険者は薬草は採取できるが、調合が出来ない。

 調合には加工の手順に火加減や時間など細かな決まりが薬ごとにあるが、まずこれを覚えるのが難しい。



 薬の調合は匂いもすごいため専用の場所が必要で、ほとんどの者が定住場所を持たない冒険者では薬師は兼業に向かないのだ。

 そのため、薬師兼業の冒険者は少なく、顔を合わせることも稀なのである。



「君、最近ギルドに入った子じゃね?可愛い子が入ったってウワサになってたぜ。俺はディル。よろしく。」

「俺はザックだ。頑張れよ。…そういやあったな。声をかけるかどうかで喧嘩になってたやつだ。」

「あ。よ、よろしくお願いします。カレンです。」



 ジェーンとカレンの挨拶が終わったからか、ディルとザックが話に混ざり始めた。

 どうやらカレンはウワサになっていたようだ。本人に自覚はないようだが。



 ジェーンは「男どもが騒ぎそうな娘だね。」と納得していた。

 カレンは長袖シャツに細身のズボン姿で、上に皮のアーマーとブーツという典型的な初心者冒険者の姿だが、それが返って彼女の華奢な体型を引き立てている。



 可愛らしい顔立ちと相まって、庇護欲を掻き立てるのだろう。

 冒険者には無用なものだが、薬師志望なら薬を売る際に武器にもなる。



 彼女は背負った弓に腰の短剣といい、冒険ではなく薬師メインでやっていくつもりのようだ。

 そこまで数瞬で観察したジェーンは、カウンターから声をかけられて意識を戻した。


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