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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
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薬の依頼

「こんにちは。ジェーンさん。今日は納品ですか?」

「ああ。ポーション20、ハイポーション20、マジックポーション5だね。」

「はい。確かに。では、少々お待ちください。」



 ジェーンがカウンターの上に小瓶を並べていき、パティがそれを数えていく。

 薬草の知識を持つジェーンは冒険者と兼業して薬師の仕事も行っていた。



「おお。ジェーンのポーションが入ったのか。助かった。切らしてたんだ。」

「こないだ買ったばかりだろう?もう使っちまったのかい?」



 ジェーンに声をかけてきたのはDランク冒険者パーティー「疾風の牙」の剣士ディルと槍使いザックだった。

 ポーションを欲しがったのはディルの方だ。



 頭に血が上りやすく、よくケガをする彼はジェーンのお得意さまだった。

 ギルドで他のポーションも買えるが、ジェーンの薬は効果もさることながら、材料を自分で調達しているのもあってとても安価だ。



 材料を持ち込めばさらに安くなるため、収入の安定しない低ランク冒険者たちにとって、ジェーンの薬は命綱になっていた。

 ただ、ジェーンが一度に作れる薬の数には限りがあるため、手に入れるのは早い物勝ちで、競争が激しいのだ。



 それがあって、ディルの「助かった」という発言になる。

 彼はジェーンの薬が入荷するたび買っていて、この間は3つも買っていたのに使い切ったと言う。

 さすがのジェーンも呆れ顔だ。



「こいつ、ブラッドバットの群れに突っ込んで行ったんだよ。」

「馬鹿につける薬はないね。」



「ひっで。しょうがねえだろ?うちのバリィが調子悪くてよ。」

「たったひとりの魔法使いが?それなのに依頼を受けたのかい?」



「いや。本当は黄色草を取りに行ったんだけどさ。その場所が森の洞窟の傍で。」

「ああ。見つかっちまったんだね?あいつらは体温で獲物を見付けるから。」

「そうそう。おかげで貴重なポーション使い切っちまって。こいつが。」



 呆れていたジェーンにザックが状況を説明してくれる。

 仲間のために薬の材料を取りに行ったら、運悪くブラッドバットの群れに見つかったということだった。



 ブラッドバットはその名の通り生き物の血を吸うコウモリ型のモンスターだ。

 洞窟の入り口近くや大きな木の陰に巣を作り、縄張りに近づいた獲物をいきなり集団で襲うのが特徴だ。



 体温で獲物を感知するため、どこまでも追いかけてくる厄介なモンスターとして知られていた。



 通常はパーティーに魔法使いがいれば、森に入る前に魔法で感知阻害をかけたり出来るのだが、今回はパーティーに一人しかいない魔法使いが体調不良でいなかったため、ポーションを使い切るはめになったようだ。



「…ぉう。」



「命があるだけいいじゃないか。その顔だと黄色草も採れたんだろ?」

「おうっ。依頼の分とジェーンに持ち込む分だ。」

「おや。じゃあ、調子が悪いっていうのは…。」



「…のう。」 



「そう。『魔法使いの風邪』さ。正規の薬は俺らじゃ手が出ねえから。」

「成る程ね。今日は予定もないから、すぐ作ってあげるよ。昼には出来てる。「銀ぎつね亭」だったね?」



『魔法使いの風邪』とは魔力もちだけがたまにかかる病気だ。

 その正体は魔力のコントロールの乱れが熱となって現れる現象で、魔力の強いものほど症状が重くなる。



 そのため、一般の人間もかかるが、魔法使いの方が圧倒的に重症になるので『魔法使いの風邪』と呼ばれている。

 治療には黄色草と呼ばれる薬草を生のまま刻んで生姜と一緒に煎じたものを飲ませるか、乾燥させて粉にしたものを水で飲むかの二通りがある。



 生の方は新鮮でないと効き目が薄く辛くて苦いが、材料さえ手に入れば出来るので安い。

 乾燥させた粉の方は日持ちするし苦味がほとんどないが、加工に手間がかかるため高い。



 ジェーンが「作る」と言ったのは前者、ザックが「手が出ない」言ったのは後者の方だ。

 ザックとディルは嬉しそうに礼を言った。



「やった。助かるぜ。」

「ありがとう。これ生姜と黄色草。」

「早い方が効き目もいいからね。かまわないよ。」



「…あのうっ。」



 3人はそこでようやくもう一人の人物がいることに気がついた。


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