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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
19/31

王都に出発

 ****************



 翌朝、捕まえてた盗賊たちと暗殺者たちを連れてキリクの村を出発した。

 ビルケム侯爵が王都に報告に行くことを即座に決めたからだ。暗殺者が来る可能性を考えて避難してもらっていたが、その時には決めていたらしい。



「どうせ、武闘大会で王都に向かわなくてはいけませんから、丁度いいですよ。」



 のんきな声で言っていたが、ジェーンは侯爵が内心ひどく怒っていることを感じていた。

 息子をそそのかされ、領内を荒らされ、薬草を奪われたのだ。怒るには十分な話だった。



 侯爵には今回のことで敵対する勢力の家々が見えてきたらしい。

 アルタイトを雇ったのも位の高い家を経由しての紹介だったからだが、それも含めてひっそりと調査を進めるそうだ。



 証言者としてアルタイトがいる。

 彼も自分を狙った暗殺者を目の当たりにして、証言する気になったらしい。



 すでに貴族籍ではないとは言っても、貴族として生活していた以上、顔は知られている。

 その彼の証言なら確かなものだった。



 ただ、敵も黙って見逃さないだろう。

 そこでジェーンが護衛に就くことになった。



「…ほんとに良いのか?俺、捕まらねえ?」

「大丈夫だよ。本人がいいって言ってるんだ。どんとかまえな。」

「そんな度胸ねえよ…。」



 ホロが情けない顔で御者台に座ったジェーンに話しかける。

 見送りに来たボーンも気の毒そうに見ていた。



 それもそのはずで、侯爵をギグルシュカの街まで運ぶ馬車はホロのものだ。

 屋根はあるし薬が痛まないようクッションやら敷き詰めてあるが、貴族様が乗るものではない。



 さらには、侯爵もアルタイトも今はボーンに借りた平民の服に着替えている。

 貴族ならありえないことだ。アルタイトは不服そうだったが、侯爵は楽しそうである。



 提案したのはジェーンだが、侯爵は喜々として賛成した。

 侯爵の場合は面白がっているのもあるだろうが、一番はお互い時間が無いということをよくわかっているからだった。



 放った暗殺者が帰らないとなれば、敵は次の手を打ってくるだろう。

 証拠となる盗賊たちやアルタイト、暗殺者連中だって始末したいはずだ。



 すぐにでも追手がくる。

 その前に王都のしかるべき所へアルタイト達を引き渡さなくてはならなかった。



 だから、ジェーンは提案した。

 急ぐ上に、敵のいる王都に向かうのだ。誰が乗っているのか丸わかりの家紋入りの馬車など使ってはいられない、と。



 もちろん、こんな方法が取れるのも、ビルケム侯爵がジェーンに散々鍛えられたからだが。

 侯爵が乗ってきた馬車は空っぽのまま先に館に戻った。



 もちろん囮だ。ボーンたちに協力してもらって、派手派手しく出発してもらった。

 御者はエルミンだし、彼が乗っていれば侯爵も乗っていると思われるだろう。



 侯爵子息はしばらくキリク村で預かってもらうことになった。

 侯爵不在の今、味方ばかりとはかぎらない屋敷に戻すのは危険だからだ。



 厄介ごとを引き受けることに村長のボーンは難色を示したが、ビルケム侯爵に頭を下げられ、これまでの迷惑料と森の改善のための資金を約束されると、さすがに引き受けた。



 また、侯爵からの「普通の村人の生活をさせて欲しい。」というお願いにはジェーンも口添えをした。

 今回のことで、ビルケム領はこの先10年は薬草の取引が交易に加わってくる。



 侯爵子息にも当然薬草の知識があった方がいいからだが、ジェーンはこれから王都にいかなくてはいけない。

 躾直しにかなり間が空いてしまう。そこで、どうせ身を隠すなら村長宅の薬屋を手伝わせることにしたのだ。



 これにはボーンの妹のラシュカが強く賛成した。

「これから薬を交易で手に入れてもらうなら、御子息にも薬の知識はあった方がいいよ。学校では教わらないでしょう?」



 とラシュカが言うと、レベッカも賛成した。



「そうね。先生も忙しいし、侯爵様もこうおっしゃってるんだし、手伝ってもらいましょう。人手はいつも足りないんだから。」



 家の女二人に言われて、ボーンは頷くしかなかった。

 子息は、侯爵から村人たちに侯爵や友人と同じだけの敬意を払うよう言い含められ、ジェーンから自分で考える前に村人に聞くことと、言われたことには全部従うようにと釘を刺された。



 素直に頷いていた様子からして大丈夫だろう。

 念のため、染粉で髪色は変えさせたので、遠目にはわからないだろう。



 また、暗殺者たちは拷問しても真実を吐くかわからなかったので、ギルドのそういう連中を捕まえておくための施設のある場所まで運ぶことになり、この辺りでは王都の施設が近いので、ビルケム侯爵一向とは別で王都に向かうことになった。



 その護衛兼見張りにはオーレンとイージスがつくことになった。

 実力もそうだが、王都行きの冒険者一向に見せるかけるためだ。



 この王都行きはビルケム侯爵から正式な依頼として受けることになったため、イージスは喜んでいた。

 王都についたら、武闘大会に登録するようだ。



「さあ。さっさと出発するよっ。」

「はあ…。何でこうなったんだか。」



 ジェーンの発破にホロはため息をつきながら手綱を取った。

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