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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
18/31

決着

 お互いの様子を伺うことが数秒続き、先に動いたのはオーレンだった。

 杖を地面に突きつけたと思ったら、影たちがうずくまった。



 地面から何やら蠢くものが這い出していることから、オーレンお得意の植物魔法だろうとジェーンは当りを付ける。

 抜け出そうと暴れているが、そう簡単にはいかない。あれは一種のモンスターである。



 オーレンが改良して魔力をエサに動かせるようにしてあるが、本来は捕まえた獲物が弱るまで絡みついて食べるという獰猛な種である。

 ちょっとやそっとで抜けられるものではなかった。



「…終わりかね?」

「だと、いいね。」



 動かなくなっていく影を見つめながらジェーンとオーレンは確かめるようにつぶやく。

 様子を見に近づいたらドカンっなんてこともある。ことは慎重を要した。



 完全に動かなくなった所で、オーレンが様子を見に近づいて行く。

 その瞬間、ジェーンはアルタイトごと吹き飛ばされていた。



「っ。ジェーンっ。」

「ふ。はははっ。これで我らの役目は果たした。」



 焦るオーレンの声と目的を達成したと確信した影の声が聞こえる。

 そこまで認識すると、ジェーンは杖を一振りして壁を蹴りつけた。



 そのまま跳ね返るように飛び、一回転して着地する。

 ジェーンに首根っこを引っつかまれたアルタイトがその後に続いて顔から着地した。



「何!?っがはあ。」

「だいじょーぶ?…ぽいねえ。」



 驚いた影が声を出すとオーレンがすかさず杖で気絶させてスリープをかける。

 念のため、すでに倒れている連中にもスリープをかけてから、オーレンはジェーンの元に戻った。



「びっくりしたよ。どうやったの?」

「結界をたわませて壁とぶつけたんだよ。後は、そのまま結界が反発するのに逆らわずに飛んだだけさ。」

「…飛んだだけさって。ジェーンそんな小技どこで覚えたの?」

「年の功さね。基本がわかってたら、後は使いかた次第さ。」



 ジェーンの無事を確かめたオーレンはホッとしながら、すぐそばで気絶しているアルタイトを見る。

 こちらも顔面と胸の打撲があるくらいで、大事には至っていなかった。



「さて、若いのを呼んで片付けさせるかね。」

「向こうは無事かな?」

「そうみたいだね。ライトがついたままだ。」



 念のため、盗賊たちの方にも口封じの手先がいった時のことを考えて、イージスに「ライト」の魔法で明かりをつけてもらい、戦闘になったら一度消すよう頼んでおいた。

 むろん、ランプの明かりはそのままにしてあるので、魔法のライトを消しても視界に困ることはない。



 ようは警報の代わりである。

 これくらい近ければ魔力の主が誰なのか何処にいるのかわかるので、イージスの魔力が消えたらそれが襲撃された合図になるのだ。



 今回は運よく本命のアルタイト狙いでこっちに来てくれたが、向こうにも戦力を裂かれていたらやっかいなことになるところだった。

 こちらは守る者が多い分、多人数で来られると不利になっただろう。



 まあ、影たちを寄越した黒幕も、ギルド長クラスの魔法使いが待ち構えているとは思いもしなかっただろうが。

 あの影たちの動きなら、自警団にいる連中は全滅していた。本来なら十分な戦力だったのだ。



「ホント。僕が来て良かったよ。今、暗殺者の相手したことある子って、皆出はらってるから…。」

「皆?そんなこと…ああ。王都の武闘大会だね?」

「そう。だから、各地が手薄になってるんだよねえ。」



 オーレンの言葉にジェーンが反応する。

 数年に一度、王都で開かれる武闘大会は国内外を問わず強者が集まる大規模なものだ。



 賞金は優勝者が金貨100枚。3位までは金貨50枚の大金だ。

 平民なら無茶をしなければ一生遊んで暮らしていける額である。



 そのため、一攫千金を狙う冒険者もかなりの数が王都に集まる。

 遠い場所からくる出場者は数か月前から王都、もしくは王都近くの街に集まり、試合に備える。



 ジェーンが以前ギルドの酒場で絡まれたのもこの手合いだ。

 移動、宿泊は自腹であるため、物価の高い王都では長居出来ない。



 だから、王都に近い場所で稼いで路銀をためておくのである。

 そして、そういう連中は受付ぎりぎりになって旅立つ。



 自腹で路銀を使うという意味では、地元の冒険者も同じことだった。

 そのため、以来の取り合いにもなり、大会前後は人手が増えるがもめ事も増える。



 その上、すぐに依頼をこなす人手が足りなくなるので、武闘大会の時期は王都に近いギルドの悩みになっていた。



「イージスは残ったんだね?」

「あの子、こないだ武器をやられちゃってねえ。武器を新調したもんだから、王都まで行くお金がなかったんだと思うよ。今回の依頼は前払いだろう?だから引き受けてくれたんだ。よし。もういないね。」



 そこまで話すと、お互い魔法を使った辺りの様子の確認もし終わっていて、何事もないと判断したオーレンが立ち上がる。



「成る程ね。…追加料金はもちろんあるんだろうね?」

「もちろん。これは不足の事態だからね。ギルドから出すよ。」



 そこにすかさずジェーンがきっちり依頼料の追加を請求する。

 予想していたのか、オーレンもすかさず答えた。いいコンビである。

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