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おばあちゃんは冒険者  作者: ファタル
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ギルド長の到着

 そんな感じで情報を探っていると、入口がにわかに騒がしくなった。

 アルタイトから目を離さずに意識だけは入口に向ける。



「みんな、お疲れ様~。大変だったね?」



 入って来たのは珍しくエルフの白いローブをまとったギルド長、オーレンだった。

 今回の依頼をしてきた本人である。



 貴族が絡んでいるとわかってすぐに連絡を取っていたが、こんなに早く、しかもオーレン自身が来るとは思っていなかった。

 ギルド長はそうそう街を空けることは出来ないため、先に代行の者が来ると思っていたのだ。



「オーレン。ずいぶん早いね?」

「そりゃ、侯爵クラスの貴族が絡んでちゃねえ。他の子じゃあ、何かあった時対処できないでしょ?しかもビルケム領だし。」

「ああ。そうだね。確かに。」



 オーレンがつぶやいたセリフにジェーンは納得し、当時の騒ぎを思い出して遠い目をした。

 ジェーン達にとって、ビルケム領は関わるとやっかいな土地だった。



 ジェーンとオーレンは、暴れまわっていた当時のブライアン・ビルケム侯爵子息を捕獲するために領地中を駆け巡ったが、これがまた非常に苦労したのだ。



 ビルケム領は豊かな森を持つせいか、昔からモンスターの出現が多い土地だった。

 それも、強い毒性を持つモンスターが多く、それに比例するように森では貴重な薬草が良くとれた。



 毒持ちのモンスターなど、普通ならなるべく避けるべき相手であるのに対し、脳筋バカなブライアンは魔物と聞くと突進していくため、ジェーンたちはそれらと片っ端から戦うハメになったのだ。



 しかも、ブライアンはそこで無駄に有能さを発揮し、わざわざレベルの高いモンスターを調査して探し当てて向かっていくため、何度か死にかける事態になった。

 助かったのはパーティーの半分がレベルの高い魔法使いで、交代で浄化や毒消しを使えた上に、ジェーンという薬師がいたからである。



 不幸中の幸いと言えば、ようやく捕まえたブライアンはモンスターの毒で死にかけていたものの、生き残ってからは大人しくなったことだ。

 それからは領地の様子や薬草について正しい知識を叩き込みながら躾をし直したが、自身が死にかけたからか素直に従うようになっていた。



 オーレンがビルケム領だから自分が来たのは、領地のことを把握している上に毒消しと浄化の両方を使える魔法使いであったからだ。

 ジェーンも出来るが、エルフのオーレンとは魔力が圧倒的に違う。いてくれればこれ程心強いことはない。



 さらに関わってるのが侯爵家となれば、ギルド長で面識もあるオーレンが来る方が事態の収拾はつけ易いだろう。

 しかも、ビルケム領に関しては王家も懇意にしている土地だ。下手は打てない。



 何せお忍びで来ていた当時の皇太子が、ブライアンを躾けていたオーレンに一目ぼれした「思い出」の土地だ。

 そのせいか知らないが、ビルケム領の港には王族がちょくちょくお忍びで来るようになっている。



「躾け係」なんて大仰な任命書が作られたのもこの関係であるが、面倒なものに関わったというのがジェーン達の感想だった。

 ビルケム領はジェーン達にとっての鬼門である。



 現に面倒なものを引き当ててしまった。

 アルタイトを見ながらため息をつく。



「これ~?今回の首謀者は?」

「黒幕はハンサム伯爵だってさ。見事に引っかかってくれたよ。」



 アルタイトから視線を外さず、これまでの話を説明していく。

 ルッケン山の麓の話をすると、「あー。あそこね。」とオーレンも予想がついたようだった。



「君もねー。いいように使われちゃったよねえ。調べてきたけど、アルタイト君だっけ?君、もう貴族籍から名前抜かれてるね。辺境伯ゆかりっていっても庶子みたいだし?最初から使い捨てにする気だったんじゃないかな。」



 オーレンがアルタイトを見ながら誰も知らない情報をすらすらと話す。

 ギョッとした顔をしている所からして、アルタイトには寝耳に水だったようだ。



 貴族がずっと貴族でいられるのは正妻の子だけだ。

 庶子は貴族籍にいれるだけで家の戸籍には入れない分どうとでも出来るのだが、どうやら彼は知らなかったようだ。



「ま、でなきゃ、こんな無茶なことさせないだろうね。」

「ホントにねー。やってくれたよ。お隣だって薬草が足りない土地なのに、奪い合いになってどうするんだか。」

「おや。そうなのかい?」



 薬草が足りないという情報にジェーンは反応した。

 隣接する領地の情報くらいは商人を介して知っているが、その隣となるとさすがに入ってこない。



「開墾を推し進めたせいで森や林が減ってしまってね。その分モンスターも減ったみたいだけど。」

「それで隣の薬を奪えってなるかい?」

「案外そうかなって。土ごと転移させたんでしょう?」



 オーレンの予想が正しいなら、侯爵子息に目をつけたのも納得できる話だ。

 ただ、そのルートを追って、森と同じ土か調べてとなると、膨大な時間と手間がかかるだろう。



 その手続きを取るにしてもアルタイトの証言が必要だが、事情を知ってる彼を相手が生かしておくとは考えにくい。

 貴族籍から抜かれてるならもともと始末されることになっていたのだろうし、今夜にでも襲撃が予想される。



「ってわけで、暴れても良い所ってある?」



 オーレンも同じ予想をしたのか、自警団のリーダーっぽいおっさんに襲撃に備えられる場所を聞いていた。

 …キラキラしい笑顔は余計であったが。





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