俺のアパートに金髪美女が来た件
俺はドアののぞき穴から外を見た…が、何も見えない。当たり前だ。この豪雨の中、小さなのぞき窓から外を見るのは不可能だ。
俺はおそるおそる、声をかけてみることにした。
「どちら様ですか?」
普通の声でしゃべったつもりが、大きな声が出ない。俺は間違いなく、風邪をひき始めている。まずい。早く眠らなければ、マズイ。今の俺には病院に行く金はもとより、薬局で葛根湯を買う金もない。
ドンドンドン!
引き続きドアをたたく音がする。声が小さすぎて聞こえなかったのだろうか。
「どちら様ですか!」
俺は半分ヤケクソになって叫んだ。喉が痛い。
「開けて!」
…鈴のような声が聴こえた。誰だ?大家さんの声ではない。大家さんの声は何というか、今にも和●アキ子の「古い日記」とかを歌いだしそうな感じの声なのだ。
大家さんでないなら、完全に心当たりがない。
「開けて!お願い!部屋が寒いの!泊めて!」
また鈴のような声がする。
俺はおそるおそるドアを開けた。十センチくらいのドアの隙間から俺は外を覗き――そこにはなんと、見たことのない、金髪の女の子が立っていた。
身長は靴箱の上に乗っている俺の目線よりも少し低いくらい、まっすぐな前髪も、まっすぐに下ろした髪も、根元から完璧に金髪で、それが雨に濡れてキラキラと水を垂らしている。顔も首も、この世の人とは思えないくらい、白い。
キャッチのお兄さんや陸上選手が試合前によく着ているような、真っ黒で大きなダウンを着ているのが似合わない。明らかに体格に会っていない。ダブダブだ。
俺と目が合った。
まつ毛が長い!目が青い!
いや、少し緑がかってもいる。
前髪からまつ毛に透明な雨水が落ちて、乗った。
まるで宝石だ――。
「何見てるの?入れてよ。」
俺は言われて初めて、彼女に見とれていることに気がついた。
「あっ。はい。」
俺の思考は真っ白になり、気が付くと、俺は完全に浸水した玄関に自らの足を突っ込みながら、靴箱の上を器用に渡って俺の部屋に入っていく金髪の少女に見とれていた。