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俺のアパートの雨漏りが激しい件

島根県出身、22歳、元大学生、現無職。


東京での就職活動に失敗し、大学卒業後、見事無職となった主人公は

一念発起して小説家を目指すことに!


引っ越した先は山手線沿線池袋駅から徒歩15分、家賃一万五千円の激安アパート【もやし荘】。


落ち着いて執筆活動に専念するはずが、もやし荘の住人はおかしな人々ばかりでさあ大変!俺の小説が出来上がる日は来るのか!?

 俺は今日、雨漏りと闘っていた。


 闘う、という日本語は間違っているかもしれない。6畳しかない玄関周辺は既に雨漏りによってびしょびしょになっており、畳貼りの床も心なしか、しっとりしてきている。領土拡大と言う観点からすると、俺は既に負けていた。

 俺はせめて、寝床を確保するべく、最後の砦であるちゃぶ台の上を片付けているのだった。いわばこれは戦略的撤退、まずは机の上に出しっぱなしの食べた後のカップ麺のゴミを片付けることが今宵の夜営確立への第一歩となるのだ。


 雨が天井を強く打っている音がする。そう、このマンション、マンションというか、アパート、アパートというか二階建ての長屋のような、今にも壁の木材がペロリンと一枚はがれそうなこのボロ家【もやし荘】は、山手線池袋駅から徒歩一五分の好立地にありながら家賃が一万五千円なのだ。

 一万五千円…!同じ広さ、同じ立地でこれ以上安い家はこのTOKYOコンクリートジャングルには存在しない!

 そう、この雨音は俺が金のために捨てた自由へのレクイエム!闘え俺!闘え!


 俺は冬の寒さで凍えそうになりながら、カップ麺の入れ物の中に入ってしまった水を玄関に捨て、空になったカップ麺の容器をビニールに入れた。この家の一階に住んでいる、いつも柔和な大家さんはゴミと家賃のことになると恐ろしい顔をするのを俺は知っている。俺はビニールをきちんと靴箱の上の方におくと、ちゃぶ台の上に布団を出した。

 

 ドラマで見るよりは少し大きめのちゃぶ台。上下ははみ出すが、半分に折れば布団を置ける。丸まればこの上で寝れる!今夜もここでいける!天才だ!


 ドンドンドン!


 その時ものすごい勢いで誰かがドアをたたくのが聞こえた。もやし荘にドアベルはない。それにしても強く叩きすぎじゃないか?

 俺は昨日の自分の行いを反省してみた。


 昨日も俺は家にいた。コンビニで昼飯と漫画雑誌を買い、今日はリサイクルゴミの日だから、今月の漫画雑誌を全部束ねて廊下に…。


 俺ははっとした。もしかして、豪雨の日は、リサイクルゴミを出してはならないという暗黙のルールがあったのかもしれない。確かに、束ねた雑誌もエロ本も、みな雨に打たれてべちょべちょの状態になるのは想像に難くない。こんな簡単なことを思い至らなかったなんて…!あの大家さんを怒らせるなんて…!

 俺は何て愚かなんだ!


 俺は水没した部分を踏まないように、靴箱に足をかけ、ドアののぞき窓からそっと外を覗き見た。

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