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~復讐~

サブタイの取ってつけた感が半端じゃない件。

 痛々しいほどの沈黙。きっと形容するならば、そんな言葉だと思う。

 誰もが口を開くことなく、『死神』という名を呟いたナギお姉ちゃんの方へと注意を向けたまま、動かない。

 わたしの肌の上に、まるで見えない小さな針が無数に突き刺さっているみたいに、チクチクと痛い。お腹の中に重い何かが沈みこんだみたいに、呼吸をするのが苦しかった。

 どうして? と訊かれたなら……それは、ナギお姉ちゃんがとっても怖い顔をしているからだとしか言えない。

 あの森の中で、エールケニッヒと対峙したとき……真っ白な人の話を耳にしたときと同じ、修羅の形相。

 黒い瞳からは温かさが消え、代わってどこまでも冷たく凍てついた深い闇だけがそこにある。人間のものとは思えぬほどの怒りと憎しみを露わにした、鬼の顔を……お姉ちゃんはまた浮かべていた。


「……お前さん、気は確かか?」


 そんな静寂を破ったのは、ナギお姉ちゃんの正気を疑う店主さんの問いかけ。

 でもそれは、さっきまでの喧嘩腰で挑発的な口調ではなく、ナギお姉ちゃんの言葉の真意を問う真剣なものだった。

 それに対してナギお姉ちゃんは何も応えることなく、無言で佇んだまま。

 まるでそれは、『嘘偽りではない』と、態度から言外に伝えているかのよう。店主さんもそのように受け取ったのか悩むように腕組みし、他の客やティアお姉ちゃん、……馬車で一緒になったお兄ちゃんも、口を閉ざして成り行きを見守っている。

 みんながそうして固まってしまうのもわかる。ナギお姉ちゃんが行方を捜す人……それは、この世界では知らない人こそ少ない、とっても有名な人だったから。

 お伽噺のような、伝説のような存在として。


 『死神』。神出鬼没にして、この世で最悪の災厄。

 それは数百年前から語り継がれてきた一人の人間……月ごとに百の命を捧げることを条件に、全ての苦痛から持ち主を解放するという妖刀『景美(かげよし)』を持つと言われる者のあだ名だった。

 時に傭兵として幾つもの戦場に出没し、敵味方区別なく多くの者達を殺し。

 時に民間に紛れ、ひっそりと命を奪う。

 現れれば殺戮の限りを尽し、全てが終われば嵐のように去っていく、まさに〝死神〟の名に相応しい所業の数々を遂げた人。

その正体は男とも女とも言われているけれど、真っ白な服装と真っ白な髪。そして、『景美(かげよし)』らしき刀を携えているという情報のみ。

 ……そういう理由と、そんな出鱈目な話を信じる人というのもなかなかいるはずもなく……誰かが悪戯で語った架空の人物だろうなんてことも言われている。

 ナギお姉ちゃんが行方を問うた人物。それは、いるかどうかもわからない、伝説の存在なのだ。

 普通の人がこんなことを口にしたならば、誰だって一笑して冷やかすか、馬鹿にするなと憤るかどちらかの反応を示すに違いない。実際、ナギお姉ちゃんが『死神』の情報を求めた最初の時は、乾いた笑い声が一部であがったものだった。

 でもそれも、一瞬で消えた。

 それを問うナギお姉ちゃんの声が。顔が。表情が。目が。

 全てが、恐ろしかったから。


「……何が目的だ?」

「答える必要はない。時間を無駄にしたくないんだ、そっちの要件をさっさと言え」


 店主から投げかけられた第二の質問を、ナギお姉ちゃんはバッサリ斬り捨てる。

 これ以上何も言うつもりはないという意思が今のお姉ちゃんの態度から見えており、それからは沈黙をしたまま口を開こうともしない。

 そんなナギお姉ちゃんが気に入らないのか店主さんは鼻を鳴らす。が、どうにもこれ以上は聞くことなどできないと諦めたのか、店の掲示板に貼られた依頼書を一枚取ると、それをペンとともにお姉ちゃんに手渡した。

 ナギお姉ちゃんは紙面にかかれた依頼内容を一瞥する。


「……討伐対象……〝ドラゴン〟?」


 ボソリと呟いた、ナギお姉ちゃんの疑問の声。

 それを聴衆が耳にした途端、その場にいた全員が色めき立つ。


「「ド、ドラゴン!?」」


 ものの見事に、わたしとティアお姉ちゃんの驚愕の叫びが重なる。

 わたし達が驚いてしまうのも至極当然のこと。ドラゴンとは『肉を持つ存在』の中でも最上位に君臨する魔物の王。一般人はおろか、訓練された一流の騎士であっても一匹を退治するのは困難を極めると言われている存在だった。

 山のように大きく、強靭な肉体。無尽蔵とすら思えるほどの、膨大な魔力(マナ)。数百、数千の年月を生き抜いて培われた、賢者の如き知恵と知識。

 様々な要素こそあれ、しかし何よりもドラゴンを強者たらしめているのは……その身体に内包する、『精霊』の力だ。

 どのような経緯を経てそうなったかは定かではないが、ドラゴンはその体内に『精霊』を宿しているのだ。水龍ならば水の精霊、炎龍ならば火の精霊、土龍ならば地の精霊……それらを身の内側に持つ彼らは、己が魔力(マナ)を喰らわせることで精霊と契約し、人間よりも遥かに優れた魔術を行使することが出来る。

 『肉を持つ者』でありながら、『肉を持たぬ者』たちが操る魔術を行使し、その圧倒的な火力で以て敵を圧倒する巨獣……それがドラゴンだ。


「ちょっと、何よそれ!? いくらなんでも、依頼の内容がメチャクチャじゃない!」


 ティアお姉ちゃんは批判の声を上げる。

 お姉ちゃんの言う通り、これは人ひとりの情報……たとえそれが伝説級の人物であっても、理不尽なほどに法外な要求だ。

 魔導騎士であるナギお姉ちゃんが対峙したとしても、たった一人で挑んで勝ち目のある存在であるとは到底思えない。それは、当の本人であるナギお姉ちゃん自身もよく理解をしているはずだ。

 だというのに。お姉ちゃんはそんなことなどまるで気にも留めていないかのように、ただ依頼内容の紙面を繰り返し読んでいる。


「お姉ちゃん! こんなの受けちゃダメだよ、死んじゃうよ!」


 わたしはナギお姉ちゃんに、依頼を受けることを制止しようと呼びかける。

 するとお姉ちゃんはわたしの方へ振り向くと、柔らかな笑みを浮かべて応えた。


「大丈夫だよシャオ。今回のこの仕事、厳密に言うならばドラゴンの討伐じゃない」

「え?」


 ナギお姉ちゃんが口にした内容に、わたしは無意識に戸惑いの言葉を漏らした。

 〝ドラゴン〟が討伐対象なのに……討伐が、仕事じゃない?

 お姉ちゃんの言葉を理解することが出来ず、わたしの頭の中は疑問符が羅列して思考は混乱を極めた。

 それはティアお姉ちゃんも同じだったようで、彼女もわたしの隣で首をひねっている。


「それどういうこと? 討伐依頼なのに、討伐が目的じゃないの?」

「んー……まぁ、百聞は一見に如かず、かな」


 ナギお姉ちゃんはそう呟くと、手に持っていた書類をティアお姉ちゃんに渡す。受け取ったティアお姉ちゃんは書類に目を通すと、文面に書かれた内容を音読し始めた。


「『ここ最近、街道を通ってこの街へと戻っている最中に〝龍の祠〟でドラゴンらしき鳴き声が聞こえた。かつて祠に封印されたドラゴンが目覚めたのではないかと不安でたまらない。至急祠を詮索し、もしも解放されていたならば打ち倒してほしい』……なにこれ? 〝龍の祠〟?」


 どこか場所の名前らしきものを反復するティアお姉ちゃん。

 店主の人はその疑問に答えるように口を開く。


「昔、一匹の炎龍を閉じ込めたって言われてる祠のことさ。首都に繋がる街道の途中、そこから少し離れたところにあるんだが……さすがに封印されてるっつってもドラゴンがいるなんて場所に、好き好んで入っていくヤツがいるはずもねぇ」


 そんな死にたがりがいるわけでもねぇしな、と可笑しげに笑いながら店主さんは言葉を続ける。


「ところが、そっから最近ドラゴンみてぇな鳴き声が時々聞こえてくるんだと。調べようにも、もしもホントに封印が解放されてたなら確実にそいつは殺されちまう。そういうわけで誰も真相を掴むことが出来ないでいるのさ」

「そんなことなら、それこそ独の国の騎士に頼みこめばいいじゃない。ドラゴンなんて緊急事態、国が黙ってるはずが……」


 奇妙だと感じたティアお姉ちゃんが、店主さんに疑問を投げかけた。

 確かに、封印されたはずのドラゴンが解放されただなんて一大事、国が黙っているはずがない。申請こそすれば、すぐにでも国の騎士がこっちへとやってきてくれるはずだ。

 だけど、そんなティアお姉ちゃんの言葉をあざ笑うように店主さんは鼻で笑う。


「国の騎士だと? テメェの命が一番大事なヤツらがどうしてこんなところにまでわざわざドラゴン退治に来てくれるって言うのさ。それにこんなこと、国が許可なんぞ出すはずがねぇ」

「国が許可しない? どうして?」


 ますます納得がいかないように、ティアお姉ちゃんは首をかしげるばかり。わたしも店主さんがどうしてそんな風に断言するのかわからなくて唸る。

 店主さんはそんなわたし達を見てため息をつくと、口を開いて話し始める。


「この街は首都から離れてる上に、特産品なんかもありはしない。ただ旅人がやってくるのを迎える施設と、物資の流通経路になるだけ。付近にあるのはこれといったものも取れない森のみ……守ったって得になることは何もないわけだ。もしドラゴンが復活したなんて知られれば、国は迷うことなく俺たちを見捨てるさ」

「でもこの場所、国境付近じゃない! 他国に狙われでもしたら、そこから侵略されて……」

「なら聞こうかお嬢さん。他国の奴らはどうしてこんなところを狙う? さっきも言ったが資源もない場所、しかも近くにはドラゴンがいるときたもんだ。奪うにしては旨みも何もない。むしろ、ドラゴンがいるせいで他国は下手に手出しが出来ないのさ。兵隊たちの犠牲を出して不満を買うより、とっとと斬り捨てて放置した方がよっぽどマシと思えるがね」

「……そんな……」


 店主さんの口から告げられたこと。それは独の国民でありながら国を信じない、邪推とも言えるような思考ではあるけれど……残酷なことに、合理的なものでもあった。

 絶望したようにティアお姉ちゃんは顔を青ざめ、絶句する。


「そういうこった。解決したい問題ではあったが、手だてが何もなかったんだ。このままじゃいずれ、俺たちは見捨てられる……そんなときに、ありがたいことにこの仏の騎士様はやってきてくれたみたいだがな」


 そう言いながら、チラと店主さんはナギお姉ちゃんを見ると、侮辱するように口角を吊り上げる。

 すると、酒場にいた全員の視線がナギお姉ちゃんに集まった。ある人はこの依頼を受けて解決してくれることを切望するような、ある人は店主さんと同じく受けるはずがないと侮蔑するような目線をそれぞれ送る。

 注目を一気に受けるナギお姉ちゃんは特に何の反応も示さない。決断するべく目を閉じて瞑想し、微塵もその場から動くことはなかった。

 やがて、決意したように目を開くと、


「……期限はいつまでだ?」


 肯定の意を暗に示す言葉を、放った。

 その瞬間、静寂に包まれていたはずの周囲は一気に沸き立ち、全員が口々に騒ぎ立てる。


「まぁ、明確に指示することはできないがすぐにでも実行してほしいところだな。いずれは噂が広まって、国に知られちまう。そうなったらお終いだからな」

「わかった。すぐにでも行こう」

「ちょ、ちょっとナギ!? あんた何言ってるの!?」


 その言葉を聞いたティアお姉ちゃんは、慌てた様子でナギお姉ちゃんに語りかける。

 言葉をかけられた本人は振り向くと、青い瞳と黒い瞳が視線を合わせた。


「自分の言ってることくらい理解してるさ。この依頼は運が良ければただの調査、悪ければ『ドラゴン退治』……そういうことだろう?」

「そうだけど、そうだけど、そうだけど! ああもうなんでそんなに落ち着いてるのよ、ムカつくわねぇっ!」


 焦燥するティアお姉ちゃんとは対照的に、ナギお姉ちゃんは冷静なままで返答する。

 わたしは、ナギお姉ちゃんがどうしてそこまで平静を保ったままでいられるのかわからなかった。ナギお姉ちゃんの凄さはこの目で見ているが、今回挑む相手はエールケニッヒなんかとはワケが違う。

 それくらい、彼女ほどの実力者なら重々理解しているはずなのに。


「――ようやく見つけた手がかりだ。これくらいのことで立ち止まってしまったら、二度と辿りつけない……何をしてでも私は目的を果たす、それだけだ」

「『これくらい』ってなに!? サムライにとってドラゴン退治なんて日常茶飯事なの!? 目的があるとしても、少しは命を大事に……って何サインしてるわけ!?」

「店主。これで大丈夫か?」

「ああいいぜ。せいぜい朗報を楽しみにしとくよ、仏の騎士様」


 悲鳴のような怒声をあげて制止しようとするティアお姉ちゃん。でもナギお姉ちゃんはそんなことなど何も聞こえていないように無視し、もらったペンで依頼書にサインをしてしまった。

 書面に記入されたサインを見てニヤリと笑うと、店主さんは手渡された書類を受け取ろうとする。


「~~~~~~~~~~~っ、ナギ貸して!!」


 見かねたティアお姉ちゃんは何を思ったのか立ち上がると、店主さんに今そこで手渡されようとしていた書類とペンをナギお姉ちゃんの手からふんだくる。

 何事かと茫然とするナギお姉ちゃんだったけれど――ティアお姉ちゃんが、ナギお姉ちゃんのサインの下に自分も名前を記入しているのを見た途端、目を見開いて叫んだ。


「なにしてるティア! そんなことしたらお前――」

「ええいうるさいわね、綺麗に字が書けないじゃない! ハイ店主、私もこの討伐依頼参加するからよろしく!」


 文句を言いながらも乱雑に自分の名前を書き殴り、ティアお姉ちゃんは店主さんの目の中に突っ込むような勢いで、彼の眼前に依頼書を突きだす。

 受け取った店主さんは呆気に取られて棒立ちし、ナギお姉ちゃんも何をしているのかわからないというように混乱した様子を見せる。そんな二人をよそに、ティアお姉ちゃんは頭を抱えてカウンターに突っ伏した。


「あーもうやっちゃった! ドラゴンなんて遠くから見ることも嫌だったのに! どうしてくれんのよナギ、これであたし死んじゃったらあんたのせいだからね!?」

「いやいやいや、行動と言動が矛盾だらけでメチャクチャだぞ!? というかなんでサインしたんだ、こんな依頼をティアが受ける必要なんて何もなかったのに! 今からでも遅くない、すぐ降りろ!!」

「嫌よ、そんなの知ったこっちゃないわ! あんた見てて危なっかしいし放っておけない、怪我したら私が治すから! もういいわ、付いてってやるわよ、とことん付いてってドラゴンでもなんでも退治してやるわー!」


 鼻息を荒げながら、やけくそとしか言いようのない言い分を叩きつけ捲し立てるティアお姉ちゃん。観衆はもちろん、今までその冷静な表情を崩すことがなかったナギお姉ちゃんすら唖然として彼女を見ている。

 が、すぐにナギお姉ちゃんはハッとして――多分、考え直すように呼びかけようとしたんだと思う――何かをティアお姉ちゃんに言おうとした。

 けれど、言葉が口から出る寸前に、ティアお姉ちゃんは叫んだ。


「嫌なのよ! 誰かが死んだことを聞くのも、見るのも! もうたくさん!!」


 最後の最後に吐き出された、ティアお姉ちゃんの本音。

 その声は、今まで聞いたどの言葉よりも苦痛に満ちた、悲痛なものだった。

 その気迫に誰も口を挟むことが出来ず、涙目になったティアお姉ちゃんをただ見つめることしか出来なかった。

 息を荒げ、言いたいことを全て言い切ったティアお姉ちゃんは再び席に座ると他のみんなから目を逸らす。


「……しっかり守ってよ、サムライなんでしょ。やるべきことは最後までやり通してもらうからね」


 ふてくされたように、ボソリと呟かれた一言。

 それを聞いたナギお姉ちゃんは目を伏せると呆れたように嘆息し、その言葉に応える。


「……サムライじゃないってのに……全く」


 もう言っても無駄だと悟ったのか、ナギお姉ちゃんはティアお姉ちゃんに思い止まるよう説得することはなかった。

 誰もが予想だにしていなかった展開についていけず、二人以外の時間が止まったように酒場は静まりかえる。

 静寂が辺りを包み込んだその時。それは、またまた予想外な人物が口を開くことで破られた。


「おい、店主」


 ティアお姉ちゃんの隣から響いた、低い男の人の声。

 それを耳にした全員が、聞こえてきた方へと視線を移した。

 沈黙を破る声をあげた主。それは、ティアお姉ちゃんの隣に座った、橙色の髪の男の人だった。

 取引の時からずっと口を閉ざしたままだった彼が言葉を発したことが意外だったのか、店主さん、ナギお姉ちゃん、ティアお姉ちゃんは目を見開いて彼を見つめる。


「……依頼料の代わりに情報を貰うという契約……それはあんたとナギの間だけにあるものと考えていいんだな?」

「……まぁ……そうなる、な……」


 男の人が投げかけた質問に、店主は言いにくそうに肯定の言葉を返す。

 それを聞いた途端、男の人はカウンターの向こう側に――もっと言えば、店主さんが持っている書類に右手を伸ばす。


「じゃあ成功すれば、ナギを除く承諾者は報酬がもらえるということでいいな。俺も参加する、その紙とペン寄越せ」

「あー! 何よあんた、今の今まで何もしゃべらなかったくせにこういう時だけ参加するってわけ!? ずるいわよ!!」


 会話の内容を耳にすると、ティアお姉ちゃんは憤怒して男の人に怒鳴りかかる。

 でも、男の人は怯むどころかむしろ不機嫌そうな顔をして振り向き、お姉ちゃんと向き合う。


「こっちだって路銀は必要なんだよ、当然だろうが。それともなんだ、お前はいらないってのか、報酬」

「何言ってんの、ふんだくるに決まってるでしょ! こんなことタダ同然でやってたまるもんですか!」

「じゃあいいだろ。相手はドラゴンだ、一人でも手勢がいりゃ助かるんじゃねぇのか」

「ムキィィィィッ! 腹立つ、言ってること正しいっちゃ正しいけどあんた腹立つわ! じゃあ名前教えなさいよ、あんた『どうせすぐ別れるから~』とか言っといて黙ったままなんて許さないわよ!」

「ゼクス。じゃあこれでお互い了承得たってっことでいいな。足手まといになるなら切るからな、せいぜい頑張れ」

「あんたってヤツはァァァァァァァァァああああああああああああ!!」


 怒声とともに掴みかかろうとするティアお姉ちゃん。

 男の人……ゼクスお兄ちゃんはそんなお姉ちゃんを片手で抑えると、もう片方の手で受け取った書類に自分の名前を記入していく。

 結果として、道中で知り合っただけの三人……ナギ、ティア、ゼクスの三人が、〝龍の祠〟の調査に身を乗り出すこととなった。

 ……一人よりかはマシかもしれないけれど。ホントに大丈夫かな。

 すぐ近くで喧嘩を繰り広げるティアお姉ちゃんとゼクスお兄ちゃんを横目に、わたしは隣のナギお姉ちゃんと一緒にため息をついたのだった。


かてぃー様よりナギ、シャオ、ティアの下絵をいただきました。

下絵とは到底思えないクオリティと思うのは私だけ……?↓


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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