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乙女ゲームのモブAに転生しましたが攻略対象に攻略されそうです

作者: らすく

「君が好きだ。結婚して欲しい」


 特別でもなんでもないごく普通の昼下がり、ちょっと普通じゃ無い高校1年生の教室で、かなり普通じゃ無い私が相当に普通じゃ無い先輩からいきなりプロポーズをされました。


「ごめんなさい」


 私は突然の事に動揺していたのでしょう、取り敢えず断りました。


「なっ……何故だ、僕の何がいけないんだ」


 先輩の名は鬼龍院(きりゅういん)(つかさ)。高校2年生。

 鬼龍院財閥の御曹司で頭脳明晰、運動神経抜群。更に生徒会長で取り巻き多数。顔も良ければ性格良し、スタイルだってそこらのモデルより整っています。

 少なくとも、私のようなごく普通の娘が話しかけられるような立場の人間ではありません。

 あ、言い忘れました。私転生者です。

 ここは前世の私が好きだった「君の為のソナタ」と言う乙女ゲーによく似た世界です。

 因みに私の役どころはヒロインの同級生Aだったはずです。物語に絡むのは、修学旅行でヒロインと一緒に不良に絡まれるワンカットがあるだけでした。

 勿論、先輩は攻略対象の一人で私に告白するシーンなんてありません。しかもこんな昼休みの教室でなど、プライドの高い先輩がするはず無いのです。

 ともかく答えないといけませんね。


「場所」


 何故、告白どころかプロポーズを受けることになったのかは後に語るとして、取り敢えず彼が頭脳明晰と言うのは嘘ですね。


「場所など関係ない。僕はこの溢れる想いを君に伝えたかったんだ」


 今も周囲から好奇の視線と射殺すような視線がビシバシと刺さってきます。こうなる事ぐらい、少し考えれば分かるでしょうに……


「いえ、TPOを考えましょうよ」


 まずいですねこれは…… 後でクラスからハブられる可能性が高くなってきました。ヒロインなんて歯ぎしりしてこちらをみています。

 あぁ、あぁ、あんな鬼面のような形相をして、せっかくの可愛い顔が台無しです。


「だが、やっと見つけた僕の女神なんだ。もう二度と離れたく無い」


 だからTPOを考えてくださいと…… 周りに笑われているじゃありませんか。


「いえ、私普通の女子高生ですから」


 なんとか解放していただけない物でしょうか。


「大丈夫。僕だってごく普通の健全な男子高生だ。だから結婚してくれ」


 勢い良く両手を握りしめられました。男性の握力で思いっきり握りしめられると痛いのですが……


「いえ、ごく普通の男子高生はいきなり教室に押しかけた上、衆人環視の中でプロポーズしませんから」

「じゃ、仕方ない。結婚を前提に付き合ってくれ」

「意味同じですからっ!? そもそもなんで結婚をつけるんですか」

「婚約者でなければ他の男が手を出すじゃ無いかっ!!」

「……」


 あながち頭脳明晰は嘘でなかったようですね。衆人環視の中での告白は、他の男子への牽制も含まれていたのです。ただ、目は節穴のようですが……


「大丈夫です。誰も私のような地味な女に興味など持ちませんから。それに鬼龍院さんも、あちらの本田(ほんだ)明日香(あすか)さんのように綺麗な人の方がお似合いですよ」


 あまり恨まれるのも後が怖いので、それとなく本田さん(ヒロイン)をお勧めしておきます。

 本田さんも私の意図を汲んだのか、すまし顔に戻って教科書に目を落としました。真面目な自分を演出しているのでしょうか? さすがにあざとらしいです。

 あ、勿論良い意味でですよ?


「やだよ、あんな顔だけストーカー」

「ちょっ!?」


 鬼龍院さんはバッサリと切り捨てました。本田さんもバッチリ聞いていたみたいで、悲鳴を上げるとお顔が鬼面どころか仁王になってます。痛い…… 視線が痛い……

 確かに同性から見ればあざとい性格で敬遠したいタイプの方ですが、男性からすれば守りたくなる可愛いタイプだと思ったのですが……


「どうやって知ってるのか、俺の行く先に必ず現れてさも親しげに話しかけてくる。

 しかも俺の過去まで何故か知ってやがる。あんなの怖ぇよっ」


 本田さん…… 貴方も転生者だったんですね。しかも何をしてるんですか?

 攻略どころか怯えさせてしまって……


「それに自分を地味な女なんて卑下してるが、そんなことは無い。お前は十分に魅力的な女だ。

 俺が知っているだけで3人はお前の事を慕っている。だからこそ焦っているんだ。どうか俺とっ----」「鬼龍院さん。流石にそれはルール違反です」


 鬼龍院さんの言葉に割り込んだのは、同じクラスで攻略対象の一人、北千住(きたせんじゅ)(あかね)君です。鬼龍院さんと同等のグループ企業である、北千住グループの御曹司で、学園で唯一鬼龍院さんと対等に話のできる人。

 昔ちょっとした人助けを行い、名前を告げずに立ち去ったはずなのですが、何故か正体がばれていた為に時々言葉を交わす程度の間柄とはなったのですが……助け舟を出してくださったのでしょうか?


「茜、最初に口説いて良いのは俺だったはずだ。邪魔するんじゃ無い」

「いいえ、鬼龍院さんはすでに断られている身、次は私の番ですよ」


 ええと……今、なんと言いました?


「ルールを決めたはずです。彼女の気持ちを尊重し、断られたとしても家の力を振りかざす真似はしない。

 口説く期間は2ヶ月。ただし、告白を断られた場合は次の者に速やかに順番を譲渡する。

 全員が断わられる、もしくは期間が終了した際は2巡目に突入する。

 最後に誰が口説けても恨みっこ無し。で、貴方も了承したと思いますが?」

「ぐっ……」

「と言うわけで交代です。良いですね?」

「だがっ、僕はまだ初日で」「鬼龍院さん?」


 北千住君がワイヤーフレームのメガネに手をかけると、フチがキラリと光ります。

 ……思い出しました、確か北千住君は某アニメにあやかり"ソナタの腹黒メガネ"と一部の人が呼んで居たのを。


「生徒会長ともあろうお方が、自分で言った発言の責任も取れないのですか?」

「それはっ……」

「そもそも生徒の模範であろう貴方が、下級生の教室にいきなり入り込んで、公衆の面前で好いた女性を辱める。

 そのような体たらくで模範と言えるのですか?」


 あぁ、流石に可哀想になってきました。いつでも自信満々の俺様キャラであるはずの鬼龍院さんが、私に振られた挙句、親しい間柄とはいえ後輩にボコボコにされる。

 ですが、ここで私が助け船を出すのはお門違いですね。こんな時こそ本田さんがフォローしてくださると良いのですが……

 ……無理そうですね。2人のやり取りを目をキラキラにして眺めています。鼻息も荒く、とても見せられる顔ではありませんね。


「言い返すことはありますか? 有りませんよね?」

「……ありません。ごめんなさい調子に乗りすぎました」


 とうとう鬼龍院さんのキャラが崩壊しそうです。北千住君の笑みがドス黒く染まってます。流石に後に遺恨が残りそうなので声をかけましょう。


「鬼龍院さん、プロポーズを受けることは出来ませんが、いつまでも良い友達と言うことで如何でしょうか?」


 なるべく優しくフォローします。


「なっ!?」

「フッ」


 あら? 鬼龍院さんが絶望の表情で呻きました。北千住君が妙に勝ち誇った笑みです。何か間違ったでしょうか?


「すみません、失礼しました」


 鬼龍院さんが重い足取りで教室から出て行きました。大丈夫でしょうか。

 北千住君は笑顔で鬼龍院さんに手を振ると、そのまま私の方を見ました。


「それでは、今日から貴方を口説かせていただきますので宜しくお願いしますね」

 

 と言って満面の笑みを浮かべました。

 同時に私に対する周りの視線が痛い…… すっごく痛いのです……

 後2人と言うことは、若気の至りで昔色々あった残りの攻略対象でしょう。

 これから先、私は一体どうすれば良いのでしょうか?


「私と付き合ってくれれば丸く収まりますよ?」


 心を読まないでください。そして絶っ対に嫌っ!!


「ふふっ、これは落とし甲斐がありそうだ」


 楽しくありませんっ!! そして本田さん、なぜ荒縄を持って鬼龍院さんの後を追うのですか? 何故か不安な要素しか思い浮かびません。

少々、他投稿作品の息抜きに何か連載作品のプロットでもと書き上げてみました。

他にも2作品投稿している為、どの作品を連載用に書き直しした方がいいか意見をいただければと思っています。

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[一言] 鬼龍院さんが『思い』足取りで教室から出て行きました。 重い、の間違い。
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