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第一話 八年後

 

 

 【邪神が為した人間の団結】  著者・アレクサンディア

 


 『――500年前、邪神が魔物を従え、大陸に襲来した。

 悪しき邪神は北方諸国を次々と飲み込み、最大の勢力を誇る帝国と激戦を繰り広げた。


 ――『邪神討つべし』。

 当時十六国に別れていがみ合っていた大陸中の国々。

 それらは一致団結して邪神へ立ち向かった。


 最大勢力である帝国の死は、すなわち大陸の死。

 ひいては人間支配の基盤が根本から崩壊する。

 それぞれの国が惜しむこと無く、手持ちの魔法師と兵士を動員した。


 ――その時に先陣を切って戦った、四人の魔法師。

 彼女たちを『大陸の四賢』と言う。

 真っ先に名乗りを上げた四賢は、魔物を蹴散らし邪神へと迫った。


 次々と倒れていく両陣営の兵達。

 しかし、大陸の四賢と大陸の全兵士が種族を超えて戦い、

 最後には邪神を封印することに成功した。


 とは言え、その代償は大きかった。

 魔物との決戦で疲弊した国々。

 それらが分裂と統合を繰り返したのだ。


 ――その際、大陸の四賢の中で唯一の人間であった魔法師が、

 大陸西部に強力な国を建国した。

 その人物こそが今の王国の創始者である。


 戦局はその後数百年を経て変わっていき、

 今の王国帝国の二強の形になった。


 ――他の大陸の四賢は終戦後、

 自分の目的のために祖国へ帰った。

 その中でも至高の魔法師であるアレクサンディア。

 つまり我輩は才色兼備で有名であり、華麗な姿は人を魅了した。

 いや、もちろん今でもしているのじゃが。


 現にこの本を書いた時にも、

 共同研究者から羨望の眼差しと俗物的な視線を浴びたわけじゃけぇ。

 魔法の研究で大成すると辛いのじゃな。

 我輩が大陸の四賢の生き残りじゃと知ったら、

 奴らはどんな反応をするんじゃろうか。


 悩みが尽きない毎日。

 どうして皆は我輩を放っておいてくれないのじゃ。

 我輩はただ、静かに暮らしたいだけじゃというのに。


 例えあの決戦から数百年の時が経とうと、

 我輩が圧倒的にして頂点な高位魔法師兼研究者であることは明らか。

 というのも。

 これはかつて帝国にふらりと寄った時の話なのじゃが――』

 





 本を閉じた。


 良い朝だ。

 こう天気がいいと、つい心に余裕ができてしまう。

 そう、もし俺が地雷に満ちた教養書を読むことになってしまっても、

 こうしてゴミ箱にぶち込むくらいで済ませてあげられるのだ。


 この書物、どこから道を踏み外したんだろう。

 序盤はめちゃくちゃ分かりやすく大陸の歴史が書いてあったのに。

 途中から筆者の自慢物語になってやがる。

 しかも後半部は、どこか懐かしい方言チックな書き方だ。


 足元に這いつくばる男たちの上に、

 今しがた読むのを諦めた本を落とす。

 折れた剣を握っている男が、潰れたカエルのような声を出した。


 領地の大量獲得から八年。

 せっかく地盤が固まりつつある土地に、

 孤児たちを密輸入しようとしてくれた悪徳商人。

 足元に転がっているのはそういう連中だ。


 たとえ需要があったとしても、

 この領内で好き勝手な真似はさせない。

 家でまったり執務をこなすシャディベルガに代わって、俺が根本から叩き潰してやる。


 脱輪した馬車の中から、わらわらと子供が出てくる。

 怯えたような目だ。

 どうせ、どこかの辺境からか、身寄りのない孤児をかき集めたんだろう。

 その後、資産家に労働力として売り払うために。


 幼い子供たちは、集団の中に一人立つ俺を不安そうな目で見てくる。

 俺は彼らに優しく微笑みかけた。

 これでとりあえず安心してくれるかな。

 一人立ち向かっている俺に対し、敵は複数人。

 悪徳商人たちは下卑た笑みを投げかけてくる。


「何だテメエは。武器も持たずに、正義の味方のマネごとか」

「俺を知らないのか?」

「知るわけ無いだろう。貧相な顔をしたガキが。

 そこをどけ、今なら半殺しで済ませてやる」


 なるほど、荒事には慣れているようだ。

 商人だからといって、無力とは限らないということか。

 確かにそうだよな。

 俺の知り合いにも、傭兵上がりの商人がいたりするし。


「そうか、残念だ。

 でもな、一つだけ反省しろよ」


 そう言って、俺は指を振り上げた。

 身体の中から魔力が込み上がってくる。

 そのまま剣を持って固まっている男たちへ――

 一直線に手を付き出した。


「領主とその親族の顔と名前くらい、この道を通る時に調べとけ」


 腕先に膨大な魔力が集まる。

 洗練された魔力を見て、男連中の一人が血相を変えた。


「お、思い出した。こいつ、確か――」


 言い切る時間も惜しいのか。

 奴は剣を捨てて逃げ出そうとし、背を向ける。

 仲間を見捨てて逃げるつもりか。

 感心しないな。


 奴が脱兎のごとく逃走しようとする。

 だが、その瞬間に俺の魔法が発動した。


「喰らえ――『クロスブラスト』」


 膨張した魔力の発露。

 簡易化された詠唱を受けて、

 男たちの足元に火焔が発生した。


 一気に燃え広がる炎。

 それは武器を構えていた男たちを、問答無用で焼いていく。


「ぎ、ぎゃあああああああああ!

 に、逃げろ、逃げるんだお前ら!」

「そ、そんなこと言ったって四方八方が炎で――」


 阿鼻叫喚状態の男たち。

 これで連中と子供を引き離せたな。

 強攻策で取り押さえようとしたら、

 子供を人質に取ってくるかも知れん。


 さすがに領内で死なれたら寝覚めが悪い。

 シャディベルガが保ってきた治安の良さを、台無しにしてしまう。

 火の壁に囲まれた子どもたちは、絶句とともに涙を浮かべていた。


 このままだと焼け死んでしまう。

 そう思ったのだろう。

 俺は彼らの姿を一瞥すると、追加で魔法を詠唱した。


「邪炎を滅ぼす浄き水。

 我が御手より湧き出でよ――『アンチフレア・ウォーター』」


 消火に特化した水魔法。

 エドガーが使っているのを見て、

 後にウォーキンスに教えてもらったものだ。


 あまり得意な属性でない上に、連続した魔法使用。

 脳内に少し鋭い痛みが走った。

 直接内臓を揺さぶられたような感覚。


 背筋が震える。

 しかし、この程度では怯みもしない。

 問題なく魔法は発動した。


 泡が湧き立つ水が、広範囲に及ぶ火を押しとどめる。

 それらは炎を包み込み、ちょうど子供付近の火種をかき消した。


 ついでに、男たちを囲む炎の壁を一部消火しておいた。

 いきなり現れた活路に、男たちが歓喜の声を上げる。


「バカがッ、範囲を間違えやがったな。逃げるぞお前ら!」

「で、でもそっちは――」


 すぐさま連中の一人が足を止める。

 しかし、もう遅い。


 唯一開いた道は、俺へと一直線に続いていた。

 俺の顔を見て、男たちの顔がひきつる。

 誘導するための罠だと気づいたようだ。


「くそ、舐めやがって!」


 男たちが一斉に剣を構える。

 俺も魔力を練るために半眼状態になった。

 あと少しで激突しようかという時――


 連中の足元に影が出来た。

 奴らは呆けたように空を見上げる。

 その瞬間、一人の肩にクレイモアが突き刺さった。


 鎧を一撃のもとに砕き去られると、

 男は絶叫しながらのたうち回った。

 高い炎の障壁を、

 両手剣を持ったまま飛び越えて来た乱入者。

 その人物を見て、残った4人の男が激高する。


「何だテメエは!」

「名乗るほどの者ではありません。

 しかし人は私をこう呼びます。

 ハイパー使用人、ウォーキンスとっ!」


 そう。

 いきなり飛び込んできたのは、ウォーキンスだった。

 彼女はクレイモアを振り回しながら、可愛く微笑んでいる。


 天使のような微笑みに、握られた血塗れの大剣。

 場違いな雰囲気を一人だけ醸し出しているな。

 さすがディン家の使用人なだけある。


 しかし、男たちの反応は薄かった。

 奴らは無言で頷いている。

 そして何かの結論に達したようだ。

 悪徳商人たちは、ウォーキンスに向かって一気呵成に飛びかかった。


「こいつから片付けろ! ふざけやがって!」

「ふ、ふざけてないですよ。

 現に、こうして治安維持活動に邁進していますから」


 ウォーキンスが言った瞬間、

 男の一人がうめき声を上げた。

 足を両手剣で掬われ、体勢を崩す。


 それに乗じて、

 ウォーキンスが一気にクレイモアで一閃を放った。

 剣の腹で男を捉え、そのまま周囲の男をまとめて薙ぎ払う。


 男の一人が剣で防ごうとした。

 しかし吹っ飛んできた味方の巻き添えを食い、

 ドミノ式に彼方へ吹き飛んでいく。


 超高速で繰り出した横薙ぎで、

 男4人をまとめて炎の外へ弾きだしてしまった。

 なんという強引な退治法だろうか。


 バルサンを焚きながら、

 火炎放射器で暴れるのに匹敵する所業だ。


 痛烈な一撃を食らった連中は、

 苦しそうに地面を転がっている。

 その時、ちょうど背後から大勢の声が聞こえてきた。


「こっちだ!」

「レジス様とウォーキンス殿が先行して片付けたみたいだな。

 不甲斐ない、我らがもう少し早く到着していれば」

「早く運べ。手当が必要な罪人もいるだろう」


 口々に指示が飛び交う。

 ディン家の私兵がようやく来たようだ。

 数十人の兵士が、男たちを光の速さで連行していく。


 余った兵士は、

 子どもたちを保護して詰所に連れて行く。


 大破した馬車さえ一瞬で撤去する兵たち。

 なんという手際の良さだ。

 しかもここ数年で、私兵の数が十倍以上に増えている。


 それでも手が足りない状況みたいだけどな。

 でも、非常事態に動いてくれる兵が大勢いるのは良いことだ。


 ディン家の屋敷から少し離れた平原。

 あっという間に、ここから人が消えてしまった。


 俺とウォーキンスは、

 無駄に広がった炎を丁寧に消していく。

 その際、ウォーキンスが少し不機嫌そうな顔を見せた。


「お一人で賊に立ち向かうのは、流石に無茶ですよ。

 相手が気の抜けた山賊や商人でない可能性もあるのです」

「この場合、敵の強さは関係ないだろ。

 ディン領が人身売買の温床になってる――

 なんて虚報が広まったりしたら、親父の髪がまた薄くなるぞ」

「……そういうことを言いたいのではないのですが」


 ジト目で俺を責めてくるウォーキンス。

 いや、分かってるけどな。

 純粋に心配してくれているんだろう。


「大丈夫だよ。

 幼児期の俺ならともかく、

 今ならそこら辺のチンピラに負ける気はしない」

「確かに、そうですね。

 特に基礎魔力の値は、年を経るごとに異常な成長を見せています」

「よっぽどの魔法を連発しない限り、息切れは起こさなくなったしな」


 例外はメテオブレイカーだな。

 あれは問答無用で全魔力を吸い取られる。

 睡眠中の寝言なんかで発動してしまった日には最悪だろうな。


 全身がプレスされたみたいな鈍痛が走るし。

 しかも早く一撃を発散しないと、確実に気絶してしまう。

 下手に家の床を殴りつけたら、

 地下への道が直通で作られることだろう。


 絶対気をつけよう。

 そもそも寝言で発動できるほど、詠唱は甘くないけどな。


「レジス様は、本日で十五歳ですよね」

「そうだな。その件で親父に呼ばれてたんだけど……。

 密輸人騒ぎで抜け出して来ちゃったな」

「それはいけませんね。一刻も早くシャディベルガ様の元へ」

「だな」


 シャディベルガを放置プレイしておくのも中々楽しそうだけど。

 この領地を凄まじく発展させた領主に、

 そんなことを強いるのは失礼すぎるな。


 俺は草原の中央に立ち、ぐるりと辺りを見渡す。


「……しかし、変わったな」

「はい。領民の皆様からは感謝の声一色ですよ」


 そう。

 シャディベルガはこの八年で、目覚ましい内政能力を発揮した。

 それはもう、手放しで褒められるくらいに。


 独裁最高や。

 俺の手助けなんていらんかったんや。

 そう言いたくなるくらいの勢いで、この領地は発展を遂げた。


 ホルゴス家から頂いた大量の金。

 それらで領内を整備。

 職に困っていた冒険者や元職人、

 そして傭兵たちを雇ってあちこちに派遣した。


 その際、シャディベルガの行動に度肝を抜かれた。

 なんと彼は兵の一兵卒に至るまで、

 ほぼ全ての人達と面接をしていたのだ。


 一人一人。時間をかけて。

 そのマゾすぎる行動に、当時俺はドン引きだったな。

 あの時のシャディベルガはいつ寝てたんだってくらい働いてた。

 無職歴の長い俺には耳が痛すぎる話だ。


 金山銀山にはシャディベルガの雇った鉱夫が入り乱れ、

 ゴールドラッシュ状態だったな。

 目の死んでいた男たちが、

 金を見た瞬間ヨダレを垂らしながらツルハシを振り回していた。

 人間、ここまで変わるんだな。

 そう思わざるを得ないほどの豹変ぶりだった。


 それらを売り払って得た金は、

 全て内政につぎ込んでいた。

 主に身分差が発生しないように。


 色々と内部に手を回した結果。

 この領地は王国内でも一位二位を争うくらい、

 高い治安を誇るようになった。


 あと、金の使い道は他にもあった。

 シャディベルガの提案の結果できたものを、遠くに発見する。


「……あの研究所も、何か独特の雰囲気を放つようになったな」

「研究者には変人さんが多いですから」


 お前が言うかウォーキンス。

 しかし、言っていることは否定出来ない。


 シャディベルガは大量の金を投じて、掘り尽くした鉱山付近に研究所を建設した。

 設備から備品まで、全てこの領内の金で揃えたのだ。


 そして始まった研究促進キャンペーン。

 ロクな施設もない辺境で食い詰めていた魔法師や研究者たちが、

 我先にと押し寄せた。


 研究成果を報告する義務を負う代わりに、

 住み込みで働けて給与も出る。

 俺ですら垂涎モノの条件だ。


 こうして辺境のみならず、

 王都からも何人か研究者が流れてきた。

 それこそがシャディベルガの狙いだったみたいで。

 彼は昨日に届いた手紙を見て、ガッツポーズをしていた。


 どうやら、探し人と接触が取れたらしい。

 手厚い保障をした結果、

 ディン家の研究業界へのパイプがかなり太くなったのもグッドだ。


 研究成果を一部国に提出しているので、

 魔法書の編纂を担う大臣からも好評のようである。

 次に魔法書を改定することがあったら、

 ディン家の開発した魔法技術が取り入れられるかも知れないな。


 そうなったら、微弱ながら追加で金が安定して入ってくるらしい。

 長い目で見たら、この事業は確実に得なものだ。

 俺が頷いていると、遠くで爆音が轟いた。


 安っぽい炸裂音が、ここまで聞こえてくる。

 音源を見てみると、研究所の一角から煙が上がっていた。


「またか。昨日も爆発してなかったか?」

「爆発と研究は、きっと密接な関係にあるのでしょうね……」


 真剣な表情になるウォーキンス。

 無駄すぎる熟考だ。

 確実に関係ないと思うけどな。

 優秀な科学者が研究所を爆発させるなんて話、聞いたことも無い。


 ていうか、修理費もディン家が出すんだっけ。

 そして、今年に入って修理すること早五回。

 おかしいな。

 黒字になるか雲行きが怪しくなってきたぞ。

 他に真の目的があるから、別に赤字でもいいんだけどな。


 領地も拡大し、他の事業も着々と進行中。

 そろそろ功績的に、

 上の爵位が貰えてもおかしくないのだけど。


 どうやら国の上層部が頑として首を縦に振らないらしい。

 傭兵崩れの男が興した家だからな。

 俺たちを敵対視している貴族に加え、

 多くの貴族がディン家の評価には後ろ向きだ。


 特にホルゴス家を完全に打ち破ってしまったので、

 俺の家は上層部の大多数の貴族から邪険にされている。

 没落した家の復興には、まだまだ時間がかかりそうだ。


 ――そうそう、お隣の場所。

 つまりホルゴス家の領地だが。



「……なんか、川の向こうは寂れてるな」

「悪名は高かったにしても、

 敏腕だったドゥルフ卿が引退してしまいましたからね。

 その上ディン領が住みやすい土地になったので、

 人口流出が相次いで……今は見る影もないです」


 ふむ。

 言う通り、川の向こうにあった村落が軒並みなくなっている。

 確かあの辺りの連中の多くが、

 王都とディン領に逃げ込んだんだよな。


 ホルゴス家がいちゃもんをつけてきたらどうしよう。

 なんてことを心配したりもしたのだが、

 連中は二度と俺達と関わりたくないようで。

 挑発行為も一切してこなくなった。

 今となっては完全に牙の折れた獣だ。


 辺りをぐるりと見渡し、視線が元の位置に戻る。

 すると自然、ウォーキンスの姿が目に入った。


 俺の身体は成長し、確実に大人に近づいているというのに。

 彼女の見た目は、俺が赤子の頃と全く変わらない。

 銀色の髪に黒と白を基調とした給仕服。


 とても二十歳を迎えているようには見えない容貌。

 エドガーと並んだら、確実に年下に見られそうだ。

 俺が彼女の顔を見つめていると、ウォーキンスが首をかしげた。


「どうしました?」

「いや、何でもない。

 お前、見た目変わらないなって」

「気のせいですよ。私も確実に歳を重ねています」


 そう見えないから言ってるんだけどな。

 いつ訊いてもマトモに答えてくれない。

 まあ、仕方ないか。

 でも、後数年もすれば、

 俺がウォーキンスより大人びて見えてしまうのか。


「……レジス様、急ぎの用なのでは?」


 俺がウォーキンスを眺めて思い悩んでいると、

 彼女がピッと指を立てて訊いてきた。

 おお、そうだったな。

 忘れるところだった。


「そうだったな。じゃあ、行ってくる」


 あんまり待たせてもなんだしな。

 急いでシャディベルガの元に行ってやろう。

 しかし、ウォーキンスの素振りが気になった。


「どうした? お前も帰らないのか」

「私はもう少し風を浴びて行きます。お先にどうぞ」

「そ、そうか」


 風を浴びたい気分、か。

 中学二年生時の俺みたいなことを言うな。

 だけど、彼女が言ったらサマになるのはなんでだろうな。


 無邪気に手を振ってくるウォーキンス。

 彼女の声を背に受けながら、俺は屋敷に戻ったのだった。

 

 

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[一言] ウォーキンスが四賢の一人なのかな?
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