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第十一話 何を望んだ

 


 少年が生まれたのは、帝国北部にある都市だった。

 そこは辺境ながら宝石の名産地であり、

 帝国の大貴族がこぞって買いに来るため大きく賑わっていた。


 都市の収益も非常に多く、商人たちにとって住みよい街が密集していた。

 そして、都市で一番大きい商家――その跡継ぎとして、少年は生まれたのだ。


 都市最大の宝石商・デュラニール家当主の息子。

 唯一の子供ということもあり、両親の手で大切に育てられた。


 デュラニール家は誠実さを第一に商売に取り組んでおり、他の商人からの信頼も厚かった。

 長い歴史の中で着実に繁栄してきた一族だったのだ。


 例に漏れず商売に真摯な父母。

 そんな両親を見て、少年は商人としての基礎を学んだ。

 そして商売の楽しさに気づき、純粋さを培いながら成長していった。


 金銭を稼ぐことへの達成感。

 宝石を買っていく人達の幸せな笑顔。

 成長して店を任されるようになった少年は、仕事が楽しくて仕方がなかった。

 商人として大成しようと願うようになるのも、そう遅くはなかった。


『いつか宝石で、この街を帝国一の大都市にしたい』


 一族や他商人と協力して商売に取り組む毎日。

 自然と郷土愛も湧いてきた。

 出荷に同行して帝都へ行った際には、数日で故郷の都市が恋しくなったほどだ。


 少年はやがて一人前となり、

 いよいよデュラニール家の家督を継ぐ日が近づいてきた。

 しかし、その時――異変が起き始めたのだ。


 まずは身近な変化から。

 宝石を買いに来る富裕層の客が少なくなり、在庫が余るようになった。

 そして、都市の中を歩く客が明らかに減ったのだ。


 さらに異変は続き、商家として最大の危機にさらされることになった。

 得意客であった大貴族が、宝石を買わなくなってしまったのだ。


 少年の父母は慌てて値下げを持ちかけた。

 しかしそれでも、貴族は購入しようとしなかった。

 どのような心変わりがあったのか食い下がると、貴族は残酷に言ってのけた。


「こんな濁った石などいらん。もっと良い物が、もっと安い値で入る時代だ」


 その一言で、少年の父母は気づいた。

 客層の宝石の仕入れ先が、変わってしまったのだと。


 調べたところ、隣の連合国から似たような材質の宝石が流入しており、

 大多数の客がそちらを買っていることが分かった。

 ドワーフ鉱山から安価で上等な原石を買い漁り、連合国で加工して売り出しているのだ。


 連合国の技術で作られた宝石は、帝国のものより色が美しく、それでいて安価だった。

 値で選ぶ旅客のみならず、質で選ぶ貴族の需要まで満たしていたのだ。

 その勢いは凄まじく、短期間で帝国産の宝石を市場から駆逐してしまった。



 少年の愛する宝石都市の命運が――完全に尽きた瞬間だった。



 次々と潰れていく商家たち。

 活気を失った都市は荒廃を極めていた。

 そんな中、デュラニール家は最後まで抵抗しようとした。


 他の産業に精力的に手を伸ばしたが、注力虚しくことごとく失敗。

 しょせんは宝石で栄えていた辺境の街。

 宝石に価値がなくなれば、旅人も貴族も見向きもしない。


 デュラニール家は地元貴族への納税が滞り、

 商家取り潰しの処置を受けることになった。

 最後まで頑張っていた最大商家が潰れたことにより、街は最後の輝きを失った。


 帝室に連なる地元の大貴族は、寂れた宝石都市に見切りをつけた。

 兵など最低限の維持機能すら撤退させ、都市の統治を事実上放棄した。


 絶望の渦に絡み取られた少年は、何とか父母を助けようとした。

 しかし、彼の母は街に現れた乞食に襲われて死亡。

 商家が潰れ心神耗弱していた父は、妻の突然の死が引き金になり、床に臥せった。

 そして無念の涙を流しながら、心労で息を引き取ってしまった。



 まだ若い一人の少年を残して――




 ――なぜだ。


 両親の死を目の当たりにして、少年は最初にそう思った。

 自分たちが何か悪いことをしただろうか。


 取り柄であった商売を奪われ、故郷すらも潰され、

 身寄りすら失くしてしまうようなことを、何かしただろうか。

 思い描いていた未来が、黒く塗りつぶされていくのを少年は感じた。


 それは少年の無垢で純粋な胸に、ぽっかりと穴を開けてしまった。

 無慈悲な喪失がじくじくと心を痛めつける。

 そして次第に、開いた穴を埋めるように、激しい怒りが湧き上がってきた。


 連合国がいなければ、幸せでいられた。

 奪われることなどなかった。

 父母と一緒に、商家を続けていくことができた――


 恨むべきは、連合国。

 たとえ何年、何十年かかろうと、両親の仇を取る。

 自分の望んだ世界を潰した責任を、連合国に取らせる。

 そして在るべき故郷の姿を取り戻す。


 この時、少年の心にドロドロとした熱い激情が芽生えたのだ。


 少年は捨て身の勢いで地元の大貴族に請願した。

 帝国中枢への道を示してくれと。

 門前払いを受けるかと思われたが、大貴族は渋りながらも推薦状を書いてくれた。


 かつてよく利用した商家の息子ということで、情けを掛けてくれたのかもしれない。

 推薦状を受け取ると、荒廃した故郷に別れを告げ、少年は帝都に出立。

 帝都に入るや否や、推薦状を叩きつけ宮廷官に志願した。


 だが帝室の反応は芳しくなく、宮廷内に入ることはできなかった。

 いくら帝室関係者の推薦とはいえ、

 素性の知れない輩を入廷させたくはなかったのだろう。


 夢が潰えたかと思われたが、帝室は事情を汲んで、

 ある重要機関への配属を手配してくれた。

 そこは埋伏部院と呼ばれる、敵対国への破壊工作を得意とした諜報機関だった。


 そこで幹部直属の尖兵として、少年は動くことになった。

 この時、帝国は資金が潤沢な連合国を併合する計画を立て始めていた。

 数十年掛けて内部に毒を送り込み、時期を見て帝国に従属させ、植民地にする。


 もし成功すれば、少年に褒美をやると帝室は約束した。

 荒廃した少年の故郷の復興に国を挙げて取り組み、都市の長に少年を据えるというもの。

 この条件を聞いて、決意が明確に固まった。


 少年は誰よりも早く、その任務に志願したのだ。

 秘密裏に帝国から支援を受け、連合国を牛耳る”商王”になるという険しき道。

 しかし、少年は執念でそれを可能にした。


 連合国の西部都市で新たに商家を興し、商売を開始。

 持ち前の才覚と執念で、着実に力をつけていった。

 奇しくもその都市は、連合国産の宝石で財を成す商家が商王を担っていた。


 言うなれば、故郷を間接的に潰した主犯なのだ。

 少年は帝国援助のもと、あらゆる手を使って成り上がり、商王を凌ぐ勢力を持ち始めた。

 そしてついに連合国への上納金が都市の商王を上回り、

 新たな商王として君臨することに成功した。


 多くの金と権限を手に入れた少年は、宝石商人らへの報復を開始。

 徹底的に宝石と生産技術を買い占め、その産業を独占した。

 通りがかった行商人から、不思議な眼を買い取ったのもこの時のことである。


 人や物に掛けられた魔法を、無効化することができる魔眼。

 これを手に入れてからは、魔法で取り繕われた贋作の宝石を見破れるようになった。

 この眼を使い、世に出回る怪しい宝石を正確に鑑定し、

 高値で売りさばいていく宝石鑑定業も開始。


 宝石という商売に固執する彼の姿を見て、

 多くの人が少年を”宝石狂い”と呼ぶようになった。


 しかし、産業独占の効果は絶大。

 都市の宝石商人たちを次々に蹴落とし、

 その影響は近隣都市の商王にまで及んだ。


 宝石商を収益の要にしていた周囲の商王は次々と凋落した。

 そして、少年は次の手に打って出た。

 商王になれそうでなれない中堅の商人たちに、帝国への忠誠を条件に資金を援助。


 同時に、既存の商王に対する合法的な妨害を敢行。

 こうして帝国に近しい商王を次々に乱立させた。

 ここに、少年を頂点とした派閥――親帝国派が完成したのだった。


 しかし、そこまで到達した時、少年は思った。


 自分は、これ以上のことをする必要があるのだろうか、と。

 考えてみれば簡単な話である。

 連合国を帝国の属国にできれば、故郷の街を元に戻すことができる。


 だが、己の行き着く先はしょせん辺境都市の支配者。

 連合国を攻略した時、帝室は外様である自分を、

 重要な位置に就けることはしないだろう。


 つまり、連合国の商王として皮を被り、

 大都市を統治する今の自分こそが、商人としての最高地位なのだ。

 自分の望んだこととはいえ、目に見える下り坂を進むことは躊躇われた。


 このまま留まっていれば、不自由のない一生を送ることができる。

 これ以上進むのは、自分の手で自分の地位を引きずり下ろすことに他ならないのだ。

 獣のように獰猛な復讐心は、この辺りで鎮めるべきなのかもしれない。


 少年の胸の底に、そんな思いが湧いてきたのだ。

 しかしその時、遠い昔の記憶が揺り動かされた。


 邪念なく商売に取り組むことができた、幼き頃の自分。

 厳しくも優しい、家族思いな両親の姿。

 そして、それを闇の深淵に引きずり込んだ連合国。

 自分を辛く寂しい孤独へ叩き落とし、故郷を荒廃へと追い込んだ商王たち。


 それらが遠き記憶として、頭の中を駆け巡った。

 その時――少年は思った。


 純粋な帝国の人間でもなく、

 連合国の商人にもなりきれない自分は、一体何者なのか。


 怒りを忘れ、両親の仇を取れないのなら、

 自分は何のために存在しているのか。

 悲しみを忘れ、懐かしき故郷を元に戻せないのなら、

 自分は一体何のためにここまできたのか。


 易しに甘んじて折れるために、苦界に耐えてきたわけではない。

 だから、少年は改めて決意したのだ。


 自分は、商王ではない。

 ましてや、大層な帝国の重鎮でもない。


 自分ゼピルがあるべき姿。

 自分デュラニールがあらねばならない本当の姿。



 そして、己の望んだ、真に進むべき道は――





「――”復讐者”。

 私は、連合国への復讐者でなければならぬのだ」





    ◆◆◆




 そう締めくくって、ゼピルは口を閉じた。

 語られた彼の過去は、連合国への恨みに満ちていた。

 膠着状態の中で、吐き出されたゼピルの怨念。


 しかし、ここでヘラベリオがため息を吐く。


「……それで、不幸自慢はそれで終わりか? 馬鹿馬鹿しいのぉ」


 ヘラベリオの辟易に、ゼピルは眉をひそめる。

 一言で切って捨てられたのが苛立たしいのだろう。

 だが、ヘラベリオはなおもゼピルに言い放つ。


「しょせん、お前は商人に向いてなかったのじゃよ」


 帝国の援助を受けていたとはいえ、一代で商王まで上り詰めたゼピル。

 そんな彼に対し、ヘラベリオは不適格の烙印を押した。

 重みのある声で、商人の在り方を告げていく。


「商人の本質は適者生存。

 成功した輩は幸福で腹を満たし、失敗した輩は飢えで命を落とす。

 それくらい、幼き頃でも分かっておったじゃろう」


 鋭い視線とともに放たれた問い掛け。

 しかし、この問いに対しゼピルは無言。

 無表情を保っているが、効いてないわけではないようだ。


 拳を握りしめながら、ヘラベリオの言葉を正面から受け止めていく。


「失敗して他を逆恨みする輩は、商人には向いておらん。破滅して当たり前じゃ」

「……分かっている。分かっていたとも」


 ここでゼピルが声を挟んだ。

 責め立ててきたヘラベリオに、慄然とした口調で答える。


「言っただろう。私は商王ではない。

 商人にすらなりきれぬ――ただの復讐者であると」


 その言葉は重厚で、強い決意がありありと込められていた。

 商王ゼピルの答えを受けて、商王ヘラベリオは肩をすくめた。

 そして決別した反逆者に向かって、問答のように意向を尋ねる。


「――ゼピルよ、儂らを殺してどこへ向かう」

「無論。私の生まれた故郷へ」


 続けてヘラベリオは尋ねる。


「――ゼピルよ、そこで何を為す」

「自明なり。商人として財を成すまで」


 ヘラベリオの問いに、ゼピルは真っ向から即答する。

 早く鋭い返答は覚悟の表れ。

 これを受けて、ヘラベリオは深々と頷いた。

 そして最後に、気迫のこもった問いを投げかけた。


「――ゼピルよ、お前は何を望んだ」

「…………」


 ここで、初めてゼピルが沈黙した。

 ヘラベリオの質疑は、彼の心中を見抜いたものだったらしい。


 ”望む”ではなく”望んだ”。

 それはつまり、既に叶えたい望みは、遠く離れてしまったということ。

 今やっていることは近道のようで、実は真の望みから遠ざかる行為。


 ヘラベリオは暗にそう言いたいのだろう。

 その言葉を受けて黙考するゼピルの瞳は、遠い過去を見ているかのようだった。

 だが、しばらくの沈黙の後、ゼピルは宣告した。


「――あの輝かしき日々を、取り戻すこと」


 その一言で、察することができた。


 ゼピルが本心で望んでいたのは、復讐の遂行ではない。

 幼い頃には確かにあった、父母や故郷との触れ合い。

 そしてそれらとの再会だったことを。


 しかしもはや、その願いは叶わない。

 叶わないからこそ、恨みが募った。

 連合国を、商王を憎んだのだ。


 ゼピルは小さく息を吐くと、強い口調で告げてきた。


「――そのためには、貴様らを始末せねばならん」


 それが、ゼピルの出した最後の結論。

 彼の本心を聞いて、ヘラベリオは首を横に振った。


「分かっていたが……説得は無理じゃな」


 ああ。

 ゼピルの本懐が達成されるには、商王が皆殺しになる必要がある。

 だが、そんなことをさせる訳にはいかない。

 もはや戦いは、避けられないのだ。


「さらばだ、我が仇たちよ。

 この騎士たちは、我が妄執の表れと知れ――」


 そう言うと、ゼピルは片手を上げた。

 それに応じて、彼の両脇に立つ騎士、

 そして円卓を取り囲む竜騎士らが身構える。


 多くの商王が身を震わせた刹那。

 ゼピルは決戦の触れを下した。


「――やれ」


 この瞬間、竜騎士たちが動き出した。

 だが、バドや俺が前に進み出て壁となる。

 さらに俺は、円卓の椅子を蹴り飛ばして間合いを確保。


 その隙に商王たちへ指示を飛ばした。


「円卓の中に固まれッ!

 絶対に外には出ないでくれ!」


 俺の一言を受けて、商王たちは慌てて円卓の中央に密集した。

 これで守りやすくなった。

 しかし、一網打尽にされるリスクが上がったのも事実。


 ここで俺は、隣のウォーキンスに指示を出す。


「ゼピルとその周辺の騎士は俺が相手をする。

 ウォーキンスは商王の護衛に徹してくれ!」


 すると、ウォーキンスは困惑した顔になる。

 そして俺を慮る声を発してきた。


「しかし、そうなるとレジス様の安全が……」

「俺は大丈夫だ。商王には指一本、絶対に触れさせないでくれ――頼む」


 強い口調で頼み込んだ。

 ウォーキンスなら、気づいてくれるはずだ。

 この戦いが、敵を殲滅すれば良いものではないことに――


 ゼピルの狙いを崩し、商王を守り切ることが勝利条件。

 総攻撃で敵を壊滅に追い込んでも、商王が死んでしまえば意味がない。


 心証が悪くなるのみならず、連合国そのものの勢いが削がれてしまう。

 弱ってしまえば、帝国の餌食になることは必至。

 それだけは――確実に阻止せねばならない。


 俺の頼みに対し、ウォーキンスはコクリと頷いた。


「……承知しました。ご武運を、レジス様」

「ああ、ウォーキンスも気をつけて」


 そう言って、ウォーキンスは大広間の中央――円卓の中に飛び込んでいった。

 これで、商王狙いの竜騎士は防げるはず。


 一番の戦力であるウォーキンスを、盾役として配置。

 被害なしで切り抜けるには、これが最善の策。

 十八人の同時防衛など、本来であれば無茶に等しい。


 だが、彼女なら。

 ウォーキンスなら、この役割を完璧にこなしてくれるはずだ。

 ここで、バドが不本意そうにため息を吐いた。


「じゃあ、俺様とテメェでこいつらを相手にするってわけだ。

 ったく……しんどいぜ、この数は」


 一部は奇襲でウォーキンスの方に行くだろうが、

 ほとんどの竜騎士は正面の障害である俺達に突っ込んでくるだろう。

 一番仕事が多い役回りであることは事実だ。


 しかし、ここで俺は首を横に振った。


「いや、ここは俺一人が相手にする。

 バドは包囲を突破して、各商王の私兵を連れてきてくれ」

「――はぁ!? 正気かテメェ!」


 バドが驚愕の声を出す。

 俺は内心の緊張が顔に出ないよう、気をつけて返答した。


「正気も正気、大正気だ。

 まあ、リスクは俺と同じくらい高いだろうけど――無理か?」

「誰に言ってやがんだ。

 俺のいねえ間に死んだらぶっ殺すからな」


 そう言って、バドは短刀で己の肩口を斬り裂いた。

 そして出口を塞ぐ竜騎士の方に突っ込んでいく。


「オラオラオラオラッ!

 どきやがれ腐れトカゲ共がッ!」


 反差別主義者にはとても聞かせられない言葉を叫びながら、血をまき散らしていく。

 床に飛び散った血がジュウジュウと音を立てて湯気を出す。

 どうやら強酸性の性質にいじっているらしい。


「――触るなッ、溶けるぞ」

「――落ち着いて追えッ! 外に逃すなッ!」


 強行突破を図るバドを、竜騎士たちが追撃する。

 あの反応を見るに、外に連絡されるのを怖がっているようだな。

 恐らくゼピルの私兵が、商館周りを封鎖しているのだろう。


 外との連携を断ちたい連中としては、バドの存在は嫌で仕方ないはず。

 竜騎士の一部が向こうに散ってくれたのはありがたい。

 注意がバドに向いたのを見て、俺は入口付近の竜騎士に火玉を放出した。


「――『ガンファイア』ッ!」


 今までのガンファイアとは一味違う。

 同時に三つの炎玉を投擲した。

 魔力消費も大きく制御が難しいが、効果はてきめん。


 直撃を食らった竜騎士たちは大きくよろめいた。


「お前たちの相手は俺だ」


 そして正面の竜騎士たちが、俺に鋭い視線を向けてきた。

 ターゲットが切り替わったのは嬉しい。

 でも、ちょっと数が多すぎるな。


 しかし、ここを突破させる訳にはいかない。

 俺は強がりの笑みを浮かべた。


「ゼピルを含めて、全員牢にぶち込んでやるよ」


 言い切るや否や、竜騎士が一気に突撃してきた。

 奇襲に及んだ竜騎士を、ウォーキンスが凝縮した爆発で追い払う。

 さすがはウォーキンス。


 向こうは彼女に任せるとして、

 俺は目の前の敵を蹴散らすだけだ。


「――行くぞッ!」



 気合を入れた俺の魔法発動を狼煙に、

 商王議に決着をつける戦いの幕が――切って落とされた。



 

次話→3/14

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