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久々の生徒会は相変わらずで

 一晩、ぐっすり眠って大分疲れがとれた一同。

 だが、ゆっくりする時間は無いらしい。

 朝早くから呼び出されたのだ。

 何故だか教材がそこら中に散らばった生徒会室に。

 呼び出した副会長に詰め寄るアヤメ。


「つまり?」

「あの……レイピアから手をどけてくれないかしら?」

「つまり?」

「……教材が配り終わってないので、手伝って下さい」

「何故、終わってないのかしら?」

「送られてきた荷物や、新入生の教室の準備、各種書類の整理で、ね? 生徒会と風紀委員だけだと、人手不足で」


 何で、生徒会と風紀委員しか働いてないんだよ!


「教員はどうしたんでしょう?」

「国の対応、途絶えた支援金の代わりの用意……と、旅行で……」

「ちょっと、職員室……いや、校長室に殴り込んで来ますね」

「え?」

「お話し合いに行きますね」

「あ、はい」


 物騒な言葉は聞かなかった事にしよう。

 うん、それが良い!

 颯爽と出て行った〈レジェンド〉一同の後ろ姿を、何も言わずに見送る生徒会と風紀委員一同。

 密かに黒い笑みを浮かべるヴァルカンとゼファは、見なかった事にしよう。









「校長、入るわよ」

「……」

「良いみたいね」


ドガシャン!


「アヤメ君、良いとは言ってないぞぃ」

「聞いてないもの」


 扉の内側に詰まれた椅子ごとアヤメとツバサがはねのけて入ると、びっくりした顔で固まる校長が居た。

 当然だろう。

 校長の後ろに椅子が転がっている。

 つまり、飛んでいったようだ。


「さて、閉じこもると言う事は、こうなる理由も分かっているみたいね」

「何の事じゃ?」

「分からないなら、分かるまでお話し合いしましょうか?」

「分かっているぞぃ! 仕事の事じゃな! 直ぐ教員を呼ぶから、お話し合いは勘弁して欲しいなぁ……」


 校長は、首筋に添えられたレイピアに視線をちらちらとやりながら、引きつった顔で説得を試みる。


「ほう? 職員室に人が居なかったのだがなぁ?」


 更に、背後に回ったツバサが、背中側から心臓に狙いを定めて、右手で持ったナイフを固定する。

 冷や汗を流す校長。

 一同は、一応職員室にも寄ってから来たのだ。

 抜かりは無い。


「何処へ行ったのやら?」

「まだ、旅行先です……」

「随分、余裕だな?」

「いやー、どうせ生徒会の仕事が終わらないなら、授業を始めるのを延期しようと言う事になったんじゃ」

「手伝うつまりは?」

「無いのぉ……ほら、皆疲れておるじゃろうて、休日にしようと言う親切心じゃ」

「……」


 何の為に、冒険者達があれだけ急いで無理をしたんだよ!

 最初から言えよ!


「なら、最初に言いなさい」

「今、考えたであろう?」

「……申し訳ありません」


 アヤメとツバサの迫力に、随分小さくなった校長が必死で謝る。

 入り口を塞ぐジン、ラング、ムウは無言で校長を睨む。

 しばらく沈黙が場を支配する。


「3日やる。生徒会に押し付けた仕事をそのまま返してやるから、さっさと片付けるが良い」

「ツバサ君、全てかの?」

「安心しろ。心優しい生徒会の皆と風紀委員一同が、仕分けだけはしてくれた」

「ありがたや……」

「屍のようになった者達に感謝しろ」


 少人数でやれる事は全てやった彼らに、感謝の念を覚える校長。

 〈レジェンド〉一同は、生徒会室へと報告に戻って行く。

 素早く魔法で教員に連絡する校長。

 自業自得である。








「助かったわ」

「ようやく寝れる……」

「もう駄目っす!」


 副会長が礼を言い、会長が安堵の溜め息を漏らし、チャカがぶっ倒れる。

 他のメンバーは、その場で沈没したまま動かない。

 風紀委員なんて、廊下で寝ている。

 お疲れ様です……。


「私達も休むわね」

「帰って来たばかりだし~」

「ええ、お疲れ様」


 副会長の許可が下り、そそくさと自室に戻る一同。

 忘れているかもしれないが、〈レジェンド〉一同も長旅の後である。

 しかも、各国を巡り、何故だか王族とのやり取りを行い、ぶっ通しで走り抜いた後である。

 披露で倒れてもおかしくない。

 ここまで持ったのが凄い。









◇◇◇◇◇


「いやー怖かったのぉ」


 思わず我が身を抱き締める校長。

 そこへ、2人の男女が遠慮がちに声を掛けながら入室する。


「凄い事に……なっていますね」

「自業自得だがな」


 1人はシスターの姿をした女性で、布で隠されて髪色は分からないが、おっとりとした感じの女性で、たれ目の水色の瞳が印象的である。見た目は、20後半位。

 もう1人は、30代位の、いかにも騎士らしい男性で、短く整えられた黒い髪で、右目は深い青色、左目を黒い眼帯が覆う。


「シスターに……誰じゃ?」

「ナイトだ」


 シスターとナイト。

 校長の義理の妹とその夫で、2人も名前はとうの昔に捨てている。

 偽名はどこにでも潜入出来るように、簡単に決めたものだ。

 主に、諜報活動を担当している。

 実年齢は、シスターが50前半、ナイトが50後半である。

 2人も魔力量が多いので、見た目と実年齢が合わない事で、諜報活動におおいに役立っている。


「シスターに傷は付いてないだろうな?」

「付けねーよ! 愛する妻に傷なんか!」

「兄さん、過保護過ぎます」


 とにかく過保護な兄と、とにかく兄と合わない夫の間でおろおろするシスター。


「兄さん、〈ニーファ〉の事ですが」

「なんじゃ?」

「潜入捜査しましたが、間違いありませんね。世界樹です」

「ふむ。……はて? 手紙を送ったのは、魔女じゃった筈だが」

「今は、ぎっくり腰で動けません」

「あのなあ、あの人もう97だぜ?」

「忘れとった」


 校長が〈ニーファ〉の調査を頼んだのは魔女だったが、歳のせいで動けなかったようで、急遽シスターとナイトが仕事に向かったらしい。

 魔女は、校長の師匠みたいな存在で、昔お世話になった人だ。

 こちらも名前は捨てており、通称を魔女と名乗っている。


「忘れんなよ……」

「伝言を預かりました。『老いぼれにまだ頼る気が馬鹿弟子。寝る時は気を付ける事だな』だそうです」

「わしゃあ、まだ死にとうない……」

「「まだ生きるですか?」」


 天に祈る校長を、呆れながら見詰めるシスターとナイト。

 いやはや、しぶとい師弟だ。


「話進めるぞ。直接見るのは無理だったが資料室には潜り込めた。ほとんど消されちまってるが、国が出きる前から、今回の騒動に致まで、枯れた事が無いみたいだ。だが、世界樹の魔力が弱まっている」

「弱まっている?」

「世界樹から提供される魔力が減って、土地の魔力も減った影響で、少しずつ精霊が減っています」

「精霊は魔力が多い所を好むのかのぅ?」

「そうですね。あと、清らかな場所を好みます」

「減った精霊はどこに?」

「そこまでは分かりません」


 シスターは精霊を見る事が出来るが、あくまでもぼんやりと見えるだけなので、詳細は分からない。

 それでも減った事が分かるのだから、相当数を減らしたのだろう。


「世界樹だと分かったのは良いが……」


 バランスを保つ役割の精霊が減れば、様々な問題が世界を襲う。

 悪魔がどうこうと言っている時点で、もう後戻り出来ないのだが。

 頭を抱える校長。


「……他には? 入り口とか」

「全く分かりません」


 世界樹を調べたのは、エルフが住むと言われる所に世界樹があると、古い伝承があったからだ。

 校長が探しているのは、世界樹ではなくエルフの里である。

 しかし、そう簡単には見つからない。


「そうか。あーもう少しじゃのに」

「あの、誰に聞いたのですか? エルフが古代魔法で作った空間に居るなんて」

「儂が、預言者の魂の後継者だと知っておるな? まあ、この時代の預言者ではないのだがな」

「聞いてます」

「前に聞いた」

「あの伝説にある、預言者が助けを求めた存在は?」

「「神族」」

「に、聞いたんじゃ」

「「……え!?」」


 適切な反応ありがとう。

 耳を疑って固まるシスターとナイト。


「ボケたか?」

「兄さん、病院に行きましょう?」

「酷いのぉ。さっきの2人が神族なんじゃがのぅ」

「なる程、女神か」

「……女神様ですか」


 なんだか納得してしまったナイトと、何故だかうっとりとするシスター。


「私、もう一度調査に向かいます」

「シスター?」

「私、頑張ります」


 なにやらスイッチが入ったらしい。


「ナイト……」

「ああ……任せとけ」


 こういう時、意外と息が合う校長とナイト。

 シスターの暴走は危ないのだ。

 やるとなったら、やり過ぎるまでやるのがシスターである。

 昔、諜報活動に張り切ったシスターが、尋問をしていた筈が、血の池地獄を作り出した事がある。

 見た目とは裏腹に、校長の知り合いの中では一番怖いのがシスターだ。

 それ以後、暴走気味のシスターを止めるのはナイトの仕事となっている。

 ナイトは、実は意外と面倒見が良い。

 人とは、見た目では分からないものである……。


「うふ♪誉めて下さるかしら~♪」


 そう言いながら飛び出して行くシスターを、慌てて追い掛けるナイト。


「あれに振り回されるのは、儂は御免じゃなあ……」


 校長に振り回されるも嫌です。









◇◇◇◇◇


(誉めて下さるかしら?)


 シスターは学園を飛び出して、〈ニーファ〉に向けてひた走る。

 後ろにナイトが居る事に気付きながら、スピードを緩める気は無さそうだ。

 その目は獲物を見つけた猛獣のように、爛々と輝いている。


(女でも……)


 シスターは幼少の時、実の親から酷い扱いを受けていた。

 両親は、男の子が欲しかったようで、女であるシスターを責め続けた。

 唯一、誉めて貰えるのは、両親の役にたった時だけ。

 時には身を売り、時には過酷な環境で仕事をこなし、時には怪我をする事すらも、喜ばれ誉められた。相手から貰える、僅かな手当金が手には入るから。

 そんなシスターを見つけた校長の母が、多額の額を払って引き取ってからは、そんな事は無くなったが、幼い頃からの癖は消えなかった。

 自己犠牲の精神、強く地位のある女性への憧れ。


(同じにするなんて失礼よね)


 そして、誉められたいという、幼い頃からの願い。


(あの方達は特別……私なんて)


 自分に対する評価の低さも、全く変わっていない。

 ナイトに会ってからは、認めてくれる存在に会ってからは、大分良い方向に向かってはいたが、改善はされていなかった。

 校長の家族と触れ合ってからは、少しだけ自分を大切にしようとしたが、大切にしきれなかった。

 シスターは、自分でもどうして焦っているのか、分からない。

 ただ、何かが足りないとだけ、漠然とした感覚を覚えていた。


「焦るなよ」

「ナイト」

「大丈夫だ」


 ナイトは、何がとは言わない。

 それでも、シスターは嬉しくて、少し肩の力を抜いた。


「はい……」

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